AIの活躍分野は宇宙にまで拡がる NASA火星探査ドローンにAI組み込みへ

 AIの活躍が見込まれている分野は、医療、介護、製造業、流通、不動産、アパレル、インフラ、行政……とじつに幅広いが、そこに宇宙事業が加わることになりそうだ。

 「IEEEスペクトラム」によると、NASAのゴダード惑星環境研究所のシステムエンジニア、エリック・アイ・ライネス氏率いる研究グループが、火星探査ロケットや土星の衛星タイタンを探査する同社のドローン「ドラゴンフライ」に組み込むAIを開発中であるという。

 欧州宇宙機関はロシア企業、ロスコスモスと共同で、火星探査計画「エクソマーズ」を進めており、2022年には2度目となる「ロザリンド・フランクリン」の打ち上げが予定されている。NASAは「エクソマーズ」に合流し、火星における生物の発見を助けるAIを提供するという。

 ちなみに、「ロザリンド・フランクリン」の第1回目の打ち上げが実施されたのは2016年だ。深さ2メートルの地点まで掘り進めた結果、太陽の紫外線により死滅した生命体の残骸が発見された。この時点において、「火星では今も尚、生命体が暮らしている」という結論には繋がらなかった。

 ライネス氏らは元々、モンモリナイトと呼ばれる火星の土壌の主要成分について研究している研究グループである。質量分析法によるモンモリナイトの分析をテーマとしており、特定の質量においてピークに達する理由を探ることに重きを置いてきた。彼らが開発中のAIは質量分析法から意味のあるパターンを抽出する役目を担っており、研究補助ツールとしての有用性が期待されている。

 ライネス氏らは、6月下旬に開催された地球化学のオンラインカンファレンスにてAIを披露。

 火星への打ち上げを前に、「エクソマーズはサンプルから生じる質量分析法を解釈するために設計された、AIアルゴリズムの有効性を検証するのに絶好の機会である」とコメントしている。(参考:https://spectrum.ieee.org/tech-talk/aerospace/robotic-exploration/ai-seeks-et-machine-learning-life-solar-system

 もし火星での実験が成功に終わった場合、次は太陽系で最大の木星を周回する第2衛星「エウロパ」での試練が待ち侘びている。宇宙探査ロケットによる生物学的調査を自動化するうえで不可避である。

 これまでのところ、宇宙生物学的視点での発見に成功した者はいない。1961年、ガガーリンは人類初の宇宙飛行を試み、「地球は青かった」という歴史的名言を残した。もしAIにより火星における生物の存在が証明されれば、ガガーリンに次ぐ大発見となることは間違いない。

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