ゲームエンジン「Unreal Engine」で2Dアニメ制作? プレビュー中にも描ける「Odyssey(仮称)」開発中

ゲームエンジンでアニメ制作の裏側

2Dと3DCGのリアルタイム制作を1つに 小さなスタートアップ企業の大きな挑戦

キューブの面を揃える動画より(手は2D、キューブは3DCG)。動画を再生しながらキューブの表面にテクスチャーとして貼り付けた静止画やアニメーションにも、リアルタイムで描画を追加できる(Praxinos提供)。

 開発中のソフトはコードネームとして「Odyssey(オデッセイ)」と名付けた。Odysseyの画期的な利点は、3DCGのリアルタイム環境を活用してアニメーション制作をすることが可能なところにある。Unreal Engineのリアルタイム3DCGレンダリングの技術を最大限に活用しながら、従来の2Dアニメーション作家が才能を自由に発揮できるという。ここ数年、アニメーション制作では2Dと3DCGの技術をハイブリッドして制作する環境が求められており、業界のニーズにマッチしたものであるといえる。

 Odysseyは従来通りの2Dアニメーション制作に対応したインターフェースを持っているだけでなく、Unreal Engineの強力な諸機能を活用することで、3DCGエンジニアやアーティストが、3DCGのオブジェクトや背景を作成したり、ライティング効果、バーチャルカメラによる構図移動、継続的にレンダリングされた特殊効果(煙、炎、雲)なども可能である。

背景やクマのアニメーションをループ再生しながら、リアルタイムにクマの動きやカメラアングルなどを修正できる(Praxinos提供)。

 

 Odysseyの製品版のリリースは2年後の2022年を予定しているが、すでに昨年、その前身となる「ILIAD(イリヤッド=インテリジェント・レイヤード・イメージング・アーキテクチャー・フォー・ドローイングの頭文字)」をリリースしている。こちらはUnreal Engine用の描画プラグインで、テクスチャーの編集とデジタルブラシの作成機能が1つのインターフェースにまとめられている。

 先にILIADを開発したのは、もともとUnreal Engineにはピクセルを管理する機能がなく、ワコムなどの液晶ペンタブレットによる入力にも対応していなかったからだった。そのため、まず1から描画スペース、ブラシのデザイン、レイヤー構造などの開発に着手し、描画機能を持ったソフトウェアを作り上げる必要があった。

 

2Dゲーム用としてスプライトやタイルの制作も可能(Praxinos提供)。

 ILIADのUnreal Engineでの活用方法としては、3DCGオブジェクトのUVマップ(ディフューズ、スペキュラー、ノーマルなど)の編集を通して、様々なタイプのテクスチャー(錆、メーク、傷、模様など)を利用したフォリッジ(ランダム配置)作成が挙げられる。またレトロ風ゲームの開発に際してスプライト(動画レイヤーの一種)やタイルの制作にも利用できるため、今風のゲームだけでなく他のクリエイティブな業界にも広く浸透することが期待される。

 現在ILIADはベータ版だが、昨年の12月からUnreal Engineのマーケットプレイスで無料ダウンロードが可能になっている。PraxinosでもUnreal Engineの環境に関しては、まだまだ勉強中であるため、ILIADの使い心地や機能上の要望など、多くのユーザーからのフィードバックを今後の開発につなげたいと考えているそうだ。

 なおPraxinosのチームと直接ディスカッションを希望する場合は、チャットアプリのDiscordを使ってメッセージを送ることができる。ゆくゆくはOdysseyにも反映されることになるはずなので、興味があれば質問してみてほしい(日本人のスタッフもいるので日本語でも可能)。

■真狩祐志
東京国際アニメフェア2010シンポジウム「個人発アニメーションの15年史/相互越境による新たな視点」(企画)、「平成30年史 激変!アニメーション環境」(著述)など。

Unreal Engine
Praxinos
アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2020

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