インタビュー連載『ゲーム実況のふるさと』
ゲーム実況者・茸(たけ)が語る“魅力しかないゲーム実況” 「観てほしい以上に、動画を作ってほしい」
人気ゲーム実況者の原点を探る、インタビュー連載「ゲーム実況のふるさと」。今回は、ゲーム実況でキャリアをスタートさせ、いまはタレント・イベントMCとしても活躍中の茸(たけ)のインタビューをお届けする。整ったルックスと明るいキャラクターを持つ彼がなぜ、ゲーム実況というカルチャーに飛び込んだのか。学生時代のエピソードから、動画投稿を始めた経緯、ゲーム実況の面白さ、常に活動の場としてきたniconico(ニコニコ動画)に感じる魅力まで、語り尽くしてもらった。(編集部)
【記事の最後に、茸(たけ)さんのサイン入りチェキのプレゼントあり】
■これまでのゲーム実況者インタビュー
加藤純一×もこう「ゲーム実況中なら死んでもいい」
倭寇(わこう)×えふやん「企画は思い浮かんだ瞬間がピーク」
セピア「ゲーム実況は“思いの共有“」
テラゾー「ゲーム実況は“人間観察”好きがハマるコンテンツ」
「何か目立つのがいいな。よし、脱ごう!」
ーーまずはあらためて、ゲーム実況を始めたきっかけから教えてください。
茸(たけ):学生時代、“全校生徒の前でしゃべれるから”という理由で生徒会に入ったり、もともと目立ちたがり屋だったんです(笑)。常に、何か目立てる楽しいことはないかなと探していて。同時にゲームもすごく好きで、学校から家が近かったので、昼休みに友だちとゲームをしに帰って、チャイムがなるまでに戻ってくる、みたいなこともしていましたね。
そんななかで、ボルゾイ企画さんの動画を見て、「ゲームをしながらしゃべってる! 何だこれは!?」って衝撃を受けたんです。もともと僕も、家でゲームをしながら「痛て!」とか言っちゃうタイプだったので、「これって恥ずかしいことじゃなくて、面白いことなんだ」ということを知って。それで自分もやってみたいと思ったのがきっかけですね。
ーー思い立ってからは早かったですか?
茸(たけ):そうですね。ただ、当時は“ゲーム実況”という言葉もいまほど一般的ではなくて、動画制作のための機材をまとめてくれているサイトもなかったので、準備は探り探りでした。
ーー2011年3月、『サルゲッチュ3』の実況動画が初投稿でしたが、大ブレイクしたマインクラフト実況『【Minecraft】もう俺、村人でいいや【実況】』を始め、幅広いタイトルの動画がアップされています。ゲームはどんなふうに選ぶんですか?
茸(たけ):ちょっと特殊な選び方かもしれなくて、僕は動画のタイトルから考えたりするんですよ。それに合わせて、「あ、こんなゲームがあるんだ」って発見したり。「◯◯でいいや」は何を当てはめてもちょっと卑屈な感じが面白いので、いろいろ考えましたね。マインクラフトはもともと友だちとやっていたこともあって、ちょっと動画にしてみようと。キャラクターのスキンが変えられるので、「何か目立つのがいいな。よし、脱ごう!」って(笑)。現実世界では怒られますけど、ゲームのなかでは自由なので、スッポンポンのキャラクターでスタートして、この動画が皆さんに楽しんでもらえて。
ーーマインクラフトは本当に多くの動画がありますし、そのなかでヒットを飛ばすのは、当時も難しかったと思います。「これはいける!」という自信や手応えはありましたか?
茸(たけ):全然なかったですね。パート1の動画をアップして、バイトに行ったんですよ。疲れて帰ってきて、「どれくらい観てもらえてるかな」ってチェックしてみたら、6~7万再生くらいまで伸びていて、ドッキリか何かの掲示板にさらされたか、と思いました(笑)。
ーー当時、ゲーム実況動画で初日に6~7万再生というのは、かなりの数字ですね。
茸(たけ):本当に何が起こったのかと。でも、コメントを読むと、みんな楽しんでくれていて。当時は実家に住んでいたんですけど、インターネットのこともゲームのことも全然知らない両親に、「ゲーム実況ってものがあって、マインクラフトっていうゲームをやって、動画が伸びたんだよ!」って、まくし立てるように喜び伝えたら、「ふぅん、すごいじゃん(棒)」というリアクションでしたね。そんな両親も、いまは公式放送も観ていて、たまにLINEで「あんた、MCをやっているときのあの言い回しは、私は好きじゃない」なんて、深夜にチクっと言われることがあります(笑)。
ーーダメ出しをされるようになったと(笑)。更新頻度もとても高くて、次々と楽しい動画が届いたという記憶があります。
茸(たけ):パート1がそれだけ観てもらえたので、間を空けたらマズイなと思って。そうやってパート2、パート3とアップしていくうちに、固定で観てくださる方が増えていきました。とにかく、まさに青天の霹靂でした。
ーー最初に大きな注目を集めるのもすごいことですが、その人気を維持したり、さらに広げたり、という段階ではまた別の苦労がありそうです。
茸(たけ):そうなんですよね。最初は「これだけの人数が観てくれる」と思うと、プレッシャーもありました。そこで縮こまるというより、僕は緊張感を楽しめるタイプだったみたいで、それが幸いでしたね。急に伸びた人って、そこから気を引き締めて丁寧になっていくか、逆にハッチャケるかのどちらかだと思うんですけど、僕は後者のタイプで、視聴者さんのリアクションを予測して、「どうせこんなコメントしてるんだろ、お前ら!」なんて言ってしまったり(笑)。ーーそこに「なぜバレたし」なんてコメントがついたり。確かに、茸さんは視聴者とのコミュニケーションを楽しむ実況者だ、という印象があります。否定的なコメントも寛容に受け入れているというか。
茸(たけ):マイナスのコメントも、ひとつの意見だよなって思うんです。特にニコ動だと、「こいつツマンネ」というコメントに対して、みんなが「こういうところが面白いじゃん」って意見を書き込んでくれたりして。そこで言い合いになると、“荒れている”と見ることもできますけど、僕は視聴者のみなさんが動画の楽しみ方を見出してくれている途中なのかな、と思うんですよね。本格的に荒れたら荒れたで、「いやあ、今日もコメントが荒れていますけども」って、動画の中で言っちゃいますし(笑)。
ーーさて、マイクラの動画が伸びて、毎パートのようにニコ動のランキングに入っていましたが、茸さんは伸びたシリーズにこだわらず、さまざまな作品をプレイしていますね。
茸(たけ):そうですね。僕のなかでは、ただ大好きなゲームのうちの一つの作品で、それを動画にしたら伸びた、という感じで。他にも面白いゲームはたくさんあるので、伸びたマイクラでやっていこう、というのは考えていませんでした。
ーー茸さんはそこから、ゲーム実況動画だけでなく、顔出しをして、イベントにMCとして出演する機会も増えていきました。これも、学生時代からの“目立ってやろう精神”によるものですか?
茸(たけ):やっぱりそれが大きいですね(笑)。直接的なきっかけとしては、ゲーム実況者同士で集まって飲みに行こう、というタイミングがあったんです。僕はお酒も好きなので結構飲んではしゃいでいたんですけど、そこにドワンゴのスタッフさんがいらっしゃって、「君、面白いね。今度こういう生放送があるから、出てみない?」という感じで誘っていただいて。それで『龍が如く4』発売前と後の公式放送に出させていただくことになったんです。そこで、面白がってもらえればとスーツ姿にオールバックで、サングラスをかけて参加して(笑)。いまは長時間の生放送だと各実況者の出番が決まっていたりしますけど、当時はゆるかったので、オープニングからエンティングまで、どこか出られるタイミングはないかと隙を伺っていましたね。
ーー当時はそもそも顔出ししている実況者が少なかったですね。
茸(たけ):そうですね、みんなマスクをしていたり。身バレとか、日常生活に影響が出ることを心配してのことだと思うんですけど、僕は最初から何のマイナスもないと思っていて。実際、顔出ししたことで日常生活で困ったことはありませんし、顔出ししていれば、罰ゲームでちゃんとリアクションもできるので、結果として目立ててよかったですね。公式放送に参加させていただいたのは、いまにつながる大きな一歩だったと思います。4回目くらいの公式放送で、初めてMCも担当させてもらって。
ーー顔出しで放送を回す役割といえば、ガッチマンさんやドグマ風見さんなど、それまでは茸さんより年上の実況者が多かったですよね。
茸(たけ):公式放送の出演者全体を見ても、一回り年上だったり、ベテランの方が多かったです。そのなかでのびのびやらせてもらって、もともと視聴者さんとのやりとりが好きだったこともあって、いいコミュニケーションができて。そこから、ちょくちょくMCのオファーをいただくようになりました。
ーー本人からは言いづらいことだと思いますが、「イケメンなのに思い切ったことをする」というギャップも魅力だと思います。
茸(たけ):イケメンというのは恐縮ですけど、そういうリアクションをいただくこともありました。例えば、マイクラのぶっ通し生放送のときに、自分が使っているスキン(全裸)と同じ格好で行こうと思って、肌色の全身タイツに赤い靴下で参加したんですよね(笑)。そのときに「こんな顔でこんなことをするのか」って。罰ゲームを受けるのも好きですし、体を張りたいタイプなんです。もともと、特にニコニコ動画では、ゲーム実況者ってお笑い芸人さんに近いポジションだと思っていて、動画というネタを作り込む漫才師のような人もいれば、僕みたいに表に出て大騒ぎする、ひな壇芸人のような人もいるというか。
ーーなるほど。そのなかで、自分がおいしいところを持っていきたい、というより、とにかく視聴者を楽しませたい、というサービス精神が伝わってきます。
茸(たけ):そうですね。ファンの方とはなるべく交流の機会を持ちたいと思っていますし、「こういう写真を撮らせてもらいたい」みたいな要望があれば、全部OKです(笑)。