収益は大幅減、顧客は遠のくばかり……世界最大ゲーム販売店『GameStop』従業員の嘆き

世界最大ゲーム店『GameStop』従業員の嘆き

 ゲームも映画もデジタルで楽しむ時代になりました。我が家では今でも映画のBlu-rayやDVDを買っていますが、資料的な意味合いが強く、普段はストリーミングで楽しんでいますし、ゲームもポータブルやスマホゲームばかりになってしまいました。これでは業界が傾く……、そう言われて久しいですが、具体的にどんな状況になっているのでしょうか。

 今日は、Polygonに掲載された「Gamestopの従業員たちの嘆き」をお届けします。

 GameStopといえば、テキサス州に本社を置く世界最大のゲーム販売店。消費者がデジタルでゲームを購入するようになったため、収益の大幅減に喘いでいることで知られています。そのため、スタッフを減らしたりと対策を講じているようですが、それでも回復には遠く、残っている従業員は日々減少していく顧客数に不安を抱えているそうです。

構造の破綻と不信感

 PolygonはGameStopの従業員を対象に電話とメールで匿名インタビューを行いました。あるアシスタントマネージャーはこう話しています。「会社は半狂乱になっていて、不信感だらけです。それは送られてくるメッセージから伝わってきます。構造は破綻していて、目茶苦茶です」

 また、長年の小売経験を持つ元ストアマネージャーはこう話します。「今年は1000店舗くらい閉めるのではないでしょうか。ゲームの小売市場は死にかけていて、コスト削減は免れません」

 別のマネージャーはこう付け加えます。「自分の店舗は堅実な販売実績で知られていますが、顧客の数は過去二年間で大幅に低下しています。サンクスギビングやブラックフライデー、話題のゲームがリリースされるタイミングでは客数が増えますが、それを除く日々の販売計画は無い状態です」

 それもそのはず。今、GameStopの株は投資アナリストから「価値が低い」と見られています。また最近になって、主要な投資家のひとつが、800万ドルもの債務をデフォルトしたのも会社を悩ませている理由のひとつ。

 上級管理職の人たちは、問題の本質に向き合って解決策を模索するのではなく、コストを削減して業績不振の店舗を閉鎖することで対応しようとしている上に、株主を安心させるために、2020年の新たなコンソール発売が収益をもたらしてくれるだろうといった保証もない上部だけの説明をする始末。新しいハードが売り出されたところで、消費者行動の変化を止められるわけもないので、従業員は会社の方針に不信感を抱いているそうなのです。

崩壊した収益高の中古ゲーム取引システム

 従来、GameStopは中古ゲームの取引で収益の大部分を得てきました。顧客が持ち込んだ中古ゲームを、新しいゲームの購入に当てることのできるストアクレジットと交換し、引き取った中古ゲームを高いマージンをとって売っていたのです。しかし、このシステムもデジタル購入が一般的になると破綻しました。それに、eBayやFacebook Marketplaceといった直接販売の方が中古品の価格が優れているため、顧客は必然的にそっちに流れてしまったのです。

代わりに生まれたハード買取システム

 Polygonによると、今、GameStopはソフトよりも中古のコンソールやスマホ、タブレットなどを買取り、綺麗にして海外のディストリビューターに販売することに力を注いでいるそうです。当然ですが、従業員はこの状況に心を痛めています。というのも、今やGameStopは存続維持のために顧客にハードを売ってくれないかと必死に説得するような会社になってしまったらしいのです。マネージャー達の声をいくつか紹介しましょう。

「状況は劇的に変化しました。自分の地区マネージャーはiPhoneやタブレットの取引や、(余分な在庫を抱えるリスクの少ない)予約注文を薦めています。もうゲームや顧客を気にする人はいません。とても残念です」

「ゲームを求めてやってきた顧客を捕まえて、どんなスマホを使っているのか、キャリアはどこか、メモリ量はどれくらいあるのかと尋ねるんです。そんなことしたくありません」

 ゲームを見にきているのに、従業員がひっきりなしにスマホのスペックについて聞いてきたら、あなたはどう感じるでしょうか。非常に居心地が悪いでしょう。従業員もその状況を理解していて、可能ならやりたく無いと思っています。しかし、ノルマが課せられており、そのノルマを達成できずにいると最終的には職を失うので必死にならざるをえないのだそうです。

「会社が定めたノルマを達成できなかったら、警告書を書かれるのです。顧客はスマホやタブレットのことを聞かれて困惑しています。会社は顧客を困らせているんです。先日シニアマネージャーが自分のところにやってきましたが、彼はノルマに近づこうとするだけでは十分ではなく、達成できなければ失敗なのだと言いました」

 また、別のマネージャーは、今後の様々なサービスに利用するため、従業員は1日で顧客10人の連絡先を入手しなければならないことも明かしています。元々ゲームが好きで、顧客とゲームの話で盛り上がり、丁寧なサービスを提供したいと常日頃から考えている従業員達は、上からの重圧的なノルマが原因で、顧客に不快な思いをさせてしまっていることに悩んでいます。当然ですが、従業員のローテーションも早くなります。しかし、今でも1日に10通は履歴書が届くため、上級管理者は人の入れ替わりが早いことなど問題視していないといいます。必然的に新人トレーニングに時間はかけられず、サービスのクオリティは当然下がります。

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