Maison book girlのワンマンにおいて重要視する概念は? 空間演出ユニットhuezの『Solitude HOTEL』作り方解説(後編)

ブクガワンマン、裏側徹底解説(後編)

担保された安心を破っていく演出

ーー早足ですが、ここまで「Solitude HOTEL」についてお聞きしてきました。としくにさんは過去にこの連載で「日本のライブは空間ではなく、タレントを見るために機能していることが多い」とおっしゃっています。「Solitude HOTEL」においては「セットリストを脚本として捉えて可視化する」というアプローチを取りつつ、空間の説得力を強めたいという意図を感じました。

としくに:そうですね。Maison book girlに関しては、おそらくメンバーの4人以外にもいろんな部品がブクガを構成していて、「Solitude HOTEL」ではそれぞれのパーツを集めてMaison book girlという形を見せているんだと思います。舞台が真っ暗でもメンバーは踊るし、そもそも舞台にメンバーが居ないシーンもある。個々のタレントの意思よりもMaison book girlを成立させることが重要で、それにメンバーも自覚的だと思う。だからいい意味でタレント性の薄いライブが行われているように思います。

YAVAO:「タレントを見せるだけ」で場を持たせようとするライブが多いなとは思っていて。そういうライブにはタレントの面白さ、タレントのコンテンツ性がライブ中に消費されちゃうリスクがある。対してライブにタレント性がもはや消えちゃうぐらいの演出が入ると、その後改めてタレント性が立ち上がってくる。そういうメリハリの面白さを提案したいです。

としくに:タレントと演出の競争みたいな。もちろん演出も、僕らがバッキバキにやり過ぎるとテクノロジーライブみたいになってしまうのでこれもまた違うんですよね。例えば「流体のOHPを背景に語られるポエトリーリーディング」が正解なのだとしたら、そこで演出が立ちすぎても引きすぎてもいけない。タレント性をむやみに消費しても埋没させてもいけない、そういうバランスを考えながら演出を入れていく。

YAVAO:「Solitude HOTEL」には毎回強いストーリーがあるので、メンバーのタレント性で見せる方向性とは違う、ストーリーを主軸にした演出を意識しています。

としくに:もちろんタレント性を見せる演出も入れますが、「一般的なワンマンライブ」と比べたら少ない。というより、僕の中では本当に「ホテル」を作って見せている感じなんです。ブクガのメンバーもプロデューサーのサクライさんも我々も、全員同じ立場で、「Solitude HOTEL」を表現しています。

ーー4F~7Fまでの中でhuezの役割がどんどん明確化して、同時に請け負う部分が増えていきましたね。

としくに:「見たことないものを見せたい」という意識がメンバーやサクライさんにあって。煙がバーッて出てくるとか、気づいたら舞台から人が消えているとか、真っ暗な中で歌うとか。人って見たことないものを見るとびっくりするので、僕的には手品とかホラーに近い見せ方だなと思っています。

YAVAO:としくにさんは「ホラー」っていう言葉で表現するんだね。俺は「お客さんに余裕を与えない」っていうテーマを持っていて。エンターテイメントを楽しむお客さんの中には、ある程度「虚構が担保されている」というか、「嘘の世界なんですよ」っていう前提があって、そういう気配が最近、より強くなっているように思います。でも、その担保されている安心を破っていく、安心を壊していくことで「作家性」を見せていけるんじゃないかと。お客さんに余裕を与えない姿勢というか、それを気に入ってくれるお客さんももちろんいて、そういう人が次も見に来てくれるんだろうなと思って。

としくに:同じ意識だと思うよ。ホラーもそうなんだけど、要は「いつ驚かされるか分からない」から面白い。僕がいつかやりたいのは、見ている場所とかで体験の内容が変わるライブ。みんな同じライブを見にきたのに、捉えているものが違う、みたいな。

ーー次回の話も少しだけ。年明けの2020年1月5日、LINE CUBE SHIBUYAで「Solitude HOTEL ∞F」が開催されます。今回もhuezさんが演出に入っています……よね?

としくに:もう百も承知でしょう。

YAVAO:まだ明確なストーリーとか世界観をもらっているわけではないですが、現段階でできる準備をしながら感度を上げています。あとは、ライブ演出に関係ありそうなあれこれに手を伸ばして、映像作家さんとかいろいろチェックしたりしていますね。

としくに:僕はやりたい仕掛けがあるので、それの準備だけ頭の中に入れておく、みたいなフェイズです。予想されるテーマに関連した技術を探したり、武器探しみたいなことをやってます。「yume」のときも「夢」に関連する何かネタ探しをしてました。6Fの頃ぐらいからはその1つ次の公演のことも考えるようになって、「7F、8Fってどんな感じになりますかね?」って聞いたんですよ。そしたらコショージさんとサクライさんは「8って横に倒したら無限(∞)になりますよね」ってその時点で言ってて。8はなんかすごそうだな、やべえ!スケジュール空けとこう!みたいな心構えはできていた。

YAVAO:4Fがかなり挑戦的なライブになったこともあるからね。それの2倍の8Fっていうのもある。

としくに:そういう本人からこぼれるキーワードを拾っておくというのも結構重要なんです。こないだとかもサクライさんと話していて、「逆に9Fはいらないかな」って。「逆」ってなんだよ!っていう(笑)。

YAVAO:違った形で9Fを作るってことかもしれないね。まだ何もわからないですけど。

としくに:どんな形でもアウトプットできる方々なので、次回以降も面白い物を見せてくれると思います。この間のAmazon購入者限定公演とかは演出にサクライさんが入ってなくて、コショージさんと僕らで一緒に作る公演でした。あとダンスにもステージの体の動きに関わる方が増えて、本人たちのパフォーマンスもどんどん向上している。次回は身体性もバキバキ使った公演になるだろうなと思っています。

(取材・文=白石倖介/画像提供=huez)

〈huez紹介〉

■としくに
ステージディレクター・演出家。渋都市株式会社代表取締役市長。演劇領域での舞台監督や、メディアパフォーマンスの「インターネットおじさん」などの活動を経て、2016年に渋都市株式会社を設立し、代表取締役に就任。「笑い」と「ホラー」をテーマとして、既存の枠組みを越えた映像・空間演出のディレクションを手掛ける。

■ YAVAO / 小池将樹
VJ・LJ・ステージエンジニア。「身体的感覚の混乱」をキーワードに、デジタルデバイスやゲームシステムの企画・制作をおこなう。2011年にhuezを立ち上げた人物でもあり、現在は、huezのライブ演出の中心人物として、レーザーやLEDなどの特殊照明のプランニングおよびエンジニアリングを担当している。

■YAMAGE
テクニカルディレクター・オペレーター。2015年よりアーティストユニット・huezおよび渋都市株式会社に所属し、レーザーデザインおよびオペレーションを主軸に活動。「目に見える音」を表現し楽曲の世界観を拡張したレーザープログラミングと精密なオペレーションを得意とする。

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