恋愛リアリティーショー、恋愛ドラマよりもなぜ人気? “熱狂”の作り方を軸に考える
体感的に恋愛ドラマの存在感が落ちているという“時代の気分”は否めない。今年筆者は、1990年代に一斉を風靡したドラマ脚本家にインタビューする機会があったのだが、「1990年代よりも恋愛のプライオリティが下がっている」といった見解を持っていた。
“若者の恋愛離れ”が話題になることもあるが(実際にそうなのかは不明だが)、その一方でネット配信の恋愛リアリティ番組は続々と作られている。AbemaTVの大ヒット番組『オオカミ』シリーズに出演したタレントは、SNSのフォロワーが瞬時に増えるというし、かつてドラマが担っていた「若手俳優・タレントの登竜門」という役割も果たしているように思う。海外にもファンが多いというNetflixの『テラスハウス』や、シーズン3の大番狂わせが良くも悪くも話題となったAmazon Prime Video『バチェラー・ジャパン』は新しいエピソードが更新されると、Twitterのトレンドに出演者名が頻繁にあがるなど、熱心なファンがついていることが伺える。
単純比較はできないが、周囲をみわたしていても、とくに若年層は地上波恋愛ドラマよりも、恋愛リアリティ番組、あるいはYouTubeのカップルチャンネルを熱心に見ているという実感はたしかにある。この実感はどこから来るのか。
ネット配信番組がほとんどのため、自由な時間に視聴できるというアドバンテージはあるものの、決め手に欠ける。思うに、恋愛リアリティ番組は、SNSと抜群に相性がいい。フィクションであるドラマと違い、虚実が曖昧であるので、「映し出されていることだけがすべてで事実」と捉える視聴者も少なくない。また、出演者本人たちがSNSアカウントを持っているケースも多く、番組に関連した視聴者の投稿に対して直接「イイネ」をつけてくれることもある。その現実との距離の近さから、出演者に対して強い感情を抱きやすく、「自分だったらこうするのに」と気軽に感想を言い合えたりするのもポイントだろう。そういった熱狂が可視化されることで、その分、「恋愛リアリティ番組の方が盛り上がっている」と感じるのではないだろうか。
そう考えると、今年話題となったドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』『あなたの番です』も、内容はもとより、ネット上においての“熱狂”の作り方が上手かった。“恋愛ドラマ”復権の鍵は、そこにあるのかもしれない。
■藤谷千明
ライター。81年生。ヴィジュアル系バンドを中心に執筆。最近はyoutubeや恋愛リアリティ番組なども。共著に「すべての道はV系へ通ず。」(市川哲史氏との共著・シンコーミュージック)。Twitter