小島秀夫監督×三浦大知が語り合う、『DEATH STRANDING』で感じた“喜びの繋がり”
11月14日、TBSラジオで放送中の『アフター6ジャンクション』と『プレイステーション presents ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ』が連動し、特別企画「『DEATH STRANDING』発売記念! 小島秀夫がゲームに託した新たな希望とは? 特集 feat.小島秀夫&三浦大知」が放送された。
11月8日に発売した、小島秀夫氏率いるコジマプロダクションの新作、PlayStation®4用ソフトウェア『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』についての同特集では、同作をプレイしたパーソナリティの宇多丸(RHYMESTER)と宇内梨沙(TBSアナウンサー)が、小島監督を質問責めに。同氏も大好きな映画についての話からスタートし、「棒」と「縄」の話(※)、物流とインフラ、ゲームに潜ませた小ネタ、「いいね!」の数に一喜一憂し、国道をもはや「棒」的な方法でせっせと作る宇多丸の努力など、トークがどんどんグルーヴしていく90分間だった。
そんなトークは「TBSラジオクラウド」でそれぞれお楽しみいただくとして、リアルサウンドテックでは放送直後の小島監督と三浦大知を直撃。激動の90分を振り返りつつ、2人の関係性や三浦のアツい“小島監督愛”が炸裂する様子を楽しんでほしい。(編集部)
※安部公房『なわ』からの引用。人類は最初四つ足で、二足歩行になって最初に作った道具は嫌なものを遠ざける「棒」で、次に好きなものを繋ぎとめる「縄」を発明。この2つの概念を基本とし、今の世界がある、という考え方。
〈参考〉
TBSラジオクラウド『アフター6ジャンクション』
TBSラジオクラウド『プレイステーション presents ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ』
三浦「後ろを振り返った時に色んな人の思いが散らばっているのがわかる」
ーー『アフター6ジャンクション』『マイゲーム・マイライフ』では、小島監督作品の魅力について宇多丸さん、宇内さん、三浦さんが語っていましたが、改めて、三浦さんが考える『DEATH STRANDING』ならではの魅力とは?
三浦:一番最初に小島さんが掲げたキーワードである“繋がる”に全て集約すると思うんですよ。「棒」じゃなくて「縄」のゲーム、で、色んな人と繋がって。嬉しいこととか喜びって伝染するし、膨らんでいくんだなと感じましたね。自分が嬉しいと思ったことに、同時に誰かが喜んでいるのかもしれないと感じることなんて、なかなかないじゃないですか。でも、『DEATH STRANDING』では誰かが建ててくれた建造物の場所が良かったりして「最高!」「ここに発電機置いてくれて助かる、ありがとう!」と思ったり、その建造物に「いいね!」がめちゃくちゃついていたりして。喜びをみんなで共有しているんだなと思うと、自分も誰かを喜ばせたいと思うし、人に優しくされるから優しくしたくなるんです。こんなにも優しさや思いやりや喜びが間接的に繋がって倍増していくんだよ、というメッセージを、ストーリーやUIなどのゲームデザインに落とし込んでるのがすばらしいんですよ!
小島:この話、スタッフに聞かせたい(笑)。
三浦:こんな話で良ければ一生します!(笑)
ーー(笑)。僕もプレイしてみて、まさに人の善意を信頼して作られていて「優しくなれる」ゲームだなと思いました。大げさではなく、世界が平和になるゲームというか。
小島:現代の社会はフェイクニュースも含めて、情報だけは繋がってるんですよ。ただ、情報じゃない、その裏に発信している人の気持ちはなかなか繋がらないじゃないですか。だからこそ、その情報を遮断することで、思いやることができて、そこから見えてくるものがあるんじゃないか、と考えた上で作ったゲームなんです。
ーー三浦さんは小島さんから“ネタバレしない程度に”少しずつお話を聞いていたということですが、作品の本質についても、あらかじめ聞いていたのでしょうか。
三浦:今の段階で世に出ているヒントみたいなものを、先行して見せていただいた、という感じです。
小島:ストーリーは絶対に言わないようにしました。
三浦:こういうシステムでこういう部分があるんだ、こういうマップになっているんだ、くらいですね。
ーーでは、実際にプレイしてみて良い意味で予想を裏切られたポイントは?
三浦:まず最初に「見たことないものを作ったんだ」と思いました。小島監督自体はずっとそれをやってきた方ですが、改めて「全く自分たちの想像つかないものを作っているな」と。だから、ヒントをいくつもいただくうちに「これがどう繋がっていくんだ?」と不思議に感じつつ、楽しみにしていました。プレイするまで全容が見えなかったのは”オンラインシステム”ですね。
小島:それは見せる段階で出来てなかっただけかも(笑)。
三浦:「ここにこういうものがあって、こうやって繋がる」みたいな話は聞いてたんですけど、自分が配送して、カイラル通信が繋がっていないエリアを繋げて、後ろを振り返った時に色んな人の思いが散らばっているのがわかる瞬間を体感したからこそ、「ああ、監督の言ってたことはこれだったんだ」「だからこういうシステムを作ったのか」と理解できましたし、感動と同時に喜びのようなものが湧き上がりました。
ーーやってみて、繋がらないとわからないところは確かにあるかもしれません。
小島:ゲームとして、一番良いのはそれだと思うんですよ。人のプレイを見ていてもわからないけど、やってみたらめちゃくちゃ面白いという……売りにくいかもしれませんけど(笑)。『東京ゲームショウ』のステージで前もって来場者に体感いただく際も、「どうやったら伝わるかな」って悩みましたから。ゲームって本来やって楽しいもので、自転車だって、人が乗っているのを見てもなんのこっちゃわからないですけど、自分が乗って初めてその便利さとかすごさがわかるじゃないですか。
ーーとはいえ、2BRO.との対談でも話していたように、ゲームを“実況する”という文化があることを前提にしたデザインもされていたわけですよね。
小島:僕らがゲームを作って、プレイヤー同士が繋がって、それを中継している人と見ている人が繋がって、見ている人同士も繋がって……というのは、テクノロジーによって生まれた新しい幸せの一つだと思いますし、それを存分に味わっていただくのは良いことだなと。やったことのある人とやっていない人が会話して繋がってくれたら嬉しいですし、『DEATH STRANDING』に興味を持ってもらえるとありがたいなと。
ーー放送では“国道男”宇多丸さんからの質問責めがあって、それに誠実に答える小島監督と、サポートする宇内さん、それを幸せそうに眺める三浦さん、という構図になっていました。
三浦:宇多丸さんはまだまだ聞きたいことがあったと思いますよ(笑)。
ーー放送内で聞きたかったけど聞けなかったことなどあれば、この機会にぜひ。
三浦:今、自分がやってるプレイのことを小島さんと話し合いたいんですけど、ネタバレになるかもしれないので、別の角度から話したいことがあります。
小島:どうぞどうぞ。
三浦:ありがたいことに繋がらせていただいて、食事もご一緒させていただいたりするなかで、本当に言葉が足りないですけど、小島さんの頭の中って、アイデアがものすごいんですよ。これから小島さんが作っていく未来は、さらにすごいことになると興奮していて。先にそれを隣で感じさせていただいているという喜びがあるんです。
小島:考えていることって、すぐ人に言いたくなるんですよ。
三浦:例え、これがゲームに直接繋がることではなくても、小島さんの考えていることとか、「こういうの面白いよね」とシェアしてくれるポイントとかが、ピースになってすべてに繋がっていくんだろうなと楽しみで。