VAZ渡辺広輝氏に聞く、『Mel』&『MelTV』成功要因と新たなビジョン
「今後のカギはクロスメディア、クロスプラットフォーム展開」
ーーYouTuber事務所としてではなく、あくまでSNSやプラットフォームを活用した新時代のインフルエンサーをマネジメントする事務所として、様々なSNSのプレイヤーが所属しているのもVAZの特徴といえます。「経済圏を広げる」ということは、上の世代を狙うこともあるのでしょうか?
渡辺:将来的には『ageha』にとっての『姉ageha』のようなチャンネルを作ってもいいのかな、と思っています。ファンも一緒に卒業してしまわないように、複数のチャンネルでストーリー性を作っていければと。
ーー経済圏を広げていくなかで、年齢層を幅広くフォローアップする以外に考えていることは?
渡辺:YouTubeの再生回数をしっかり増やしていくことが第一なのですが、それ以外だとYouTubeチャンネルのメディアグロースにも興味があります。僕は個人としては雑誌も作りたいですし、オリジナルコスメも作りたいですし、ファッションショーもやりたいですし、ライブコマースにも興味があって。そういうクロスメディア、クロスプラットフォーム展開が、今後のカギになるのではと考えています。
ーーライブコマースは所属クリエイターさんのラインナップを見ていても、すごく大きなものになりそうですね。
渡辺:中国やアメリカでは、インフルエンサーのオリジナルブランドなどがすごく発達しているのですが、それは年齢層の問題が大きいと思うんです。20代後半以降のYouTuberファンが多いかどうかの違いが生んだ経済圏というか。たとえば、最近よりECを強化する方向にシフトしているInstagramは、日本でも20代が多く使っているSNSということもあり、大きく伸びるような気がしていて。なので、YouTubeファンの年齢層拡大にも期待しつつ、ECに適した他のプラットフォームのファン獲得も、しっかり準備していかなければと思っています。
ーースターを作っていく、生み出していくのはメディアとして大きな存在意義の一つだと思いますが、どんな点に注力していますか。
渡辺:現状だと引き続きTikTokを通した発掘・採用に力を入れています。あとは、正直やってみないと分からないというところもすごく大きくて。また、声をかける上で気をつけているのは、「YouTubeをやりたい」「〇〇をやりたい」という思いをいかに強く持っているかということ。YouTubeを始めるハードルは意外に高いので、そこをこちらで支援して整えたりしています。そうした可能性と熱量を秘めたクリエイターたちと、トライアルを一緒にしていくことが、今後もスターを生んでいくきっかけになるのではないかと考えています。
ーー素養があるけれど、ノウハウがないために表に出てこられなかったような人も、世の中には少なくないかもしれません。
渡辺:そうですね。あと、僕の中で判断基準になっているのは、SNS上で謙虚、正直などの人としての魅力が出ていたり、努力をし続けた跡があるかということなんです。すごく細かいのですが、毎日動画を出してるかどうか、複数のメディアをコントロールできているかといった点にも注目しています。そういう努力のできる人は、他のメディアでも支援さえすれば伸びていくと思っているので。
ーーでは、今この瞬間も次の世代を見据えて種を撒き続けているんですね。
渡辺:はい。スカウティングは僕のみが担当しているので、そこは常に気にしています。
ーーこれだけの規模になってもお一人でスカウトしているのには驚きました。
渡辺:とはいえ、チャンネルの制作支援をしているメンバーは増やしていますし、企画や制作、編集ができるスタッフも多くなってきました。
ーー競争の激しい分野だと思いますが、他サービス、他メディアとの差別化も含めて、今後の展望も聞かせてください。
渡辺:女性向けYouTubeチャンネルは、立ち上げ当初こそ少なかったものの、いまはかなりの後発メディアが登場して、参入障壁が高くなってきました。『MelTV』はまだ先行者利益を得ることができているんですが、そのぶん一つの武器を研ぎ澄ました後発メディアに対抗するために、各分野のトップランナーたちとコラボしていく必要性があると思っています。それが一つのブランディングになったり、長く続けたことで生まれた価値になっていくでしょうから。
最終的には、クライアントがYouTubeに直接出稿するのではなくて、『Mel』に託していただいて、それをYouTube以外のメディアも使って上質なクロスコンテンツを作ることができるようになれば、次のステップに進んだといえるのかもしれませんね。
(取材・文・撮影=中村拓海)