反復横跳びしながら「アイデンティティ」熱唱も 『サカナクションのNFパンチ』なぜ人気コンテンツに?
サカナクションによる番組『サカナクションのNFパンチ』(以下、『NFパンチ』)が3月28日の2時間生放送で最終回を迎えた。 SPACE SHOWER TVのほか、YouTubeでも配信されファンの間で好評を博していた同番組。ファンだけが楽しめるものだと思われがちであるが、実は何の前提知識がなくても面白い。というか、YouTubeの専用チャンネルに上がっているアーカイブ動画を見ていると、どんどん次の動画を漁りたくなるスルメコンテンツだ。
まずは知らない人のために、『NFパンチ』について説明していきたい。『NFパンチ』とは、サカナクションが音楽と音楽にまつわる新しい世界へいざなう番組。バンドのフロントマン・山口一郎の「今のメディアは音楽のわかりやすい部分しか伝えていない。音楽のもっと深い部分を伝えないと」という思いによって立ち上げられ(参照)、彼自身が趣向を凝らした企画を考案し、展開されている。ちなみに「NF」とは、“サカナクションに関わるクリエイター・アーティストと共に音楽に関わる音楽以外の新しいカタチを提案するプロジェクト”のことであり、彼らがオーガナイズする複合イベント(クラブイベント)「NF」のことである。
番組の企画内容は、実に様々。ファッションスナップから写真の人物がどのアーティストのファンなのかを当てるゲストによる対戦形式の「NF将棋」、変装した山口がミュージシャンのメッカ・下北沢で弾き語りライブをする「絶対バレない男」、クラブに行ったことのない男女2人がNFを体験するというドキュメンタリー「はじめてのクラブ」、“フェス多過ぎ問題”をはじめとした昨今の音楽シーンにおける諸問題に鋭く切り込む「音楽のススメ」など、バラエティに富んでいる。
これらの企画、とにかく一つひとつから伝わる熱量がすごい。たとえば、「はじめてのクラブ」では、山口自らクラブに行ってみたい応募者を面接したうえで実際に体験する男女を2人に絞り、山口が考案した「クラブ10カ条」を座学形式で直接指導。それだけでなく、SMAPやAKB48の振付も担当する振付ユニット・振付稼業air:manによるダンスの実践講座を、選ばれた男女2人と共に体験。そしてその男女2人が「NF」に初参加するとなると、山口がわざわざフォローに入るという至れり尽くせりっぷりなのだ。
他にも、「NF将棋」では妻夫木聡や川谷絵音といった大物ゲストを呼び、「職業のススメ」ではレコード会社社員を集めてコアなトークセッションを繰り広げる。また、山口は、ほとんどの企画で司会者顔負けの軽妙洒脱なMCスキルで場を盛り上げているなど、見どころは数えきれない。