大橋彩香の声で「かえるのうた」も聴ける 『8beat Story♪』空乃かなで AIと会話してみた

 2016年5月ローンチのスマホ向けアイドルリズムゲーム『8beat Story♪』。同作では、2031年の世界を舞台に、アンドロイドとの“ライブバトル”が繰り広げられる。『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』をはじめ、近年に大きな盛り上がりを見せる同ゲームシーンのなかでも、『8beat Story♪』は今年に入り新たな試みに挑戦した。それが、2月15日にリリースされた新機能「空乃かなで AIトーク」である。

 同機能は、AI会話機能を通じて、作品に登場するアンドロイド少女・空乃かなで(CV:大橋彩香)とのやりとりが楽しめるというものだ。彼女はユーザーの入力した言葉を認識した後、自身の保有データより最適と思われるパターンで回答。そのリアクションは、大橋によるフルボイス仕様となっている。そんな「空乃かなで AIトーク」は、AI問い合わせ応答システムの開発及び運用を行なう木村情報技術株式会社、ならびに株式会社クロノスの共同開発により実装。スマホ向けアイドル音楽ゲームに対して、AI技術を導入した初の事例となった。また、ユーザーからの質問を随時学習するほか、彼らが各回答に対して正誤のフィードバックを送信することで、その精度も絶えず向上していく。本稿では、同機能の初期精度を確認しつつ、純粋に空乃かなでとの意思疎通を楽しんでみたい。

 はじめに、彼女のプロフィールについて質問してみよう。画面下部の入力フォームに「お名前を教えてください」と打ち込むと、「『空乃かなで』なのである! 空いっぱいに歌を届けられますようにという、素敵な意味が込もった名前なのだ!」との返答が。あわせて、趣味を尋ねてみると「かなでの趣味は、うーん……? 音楽は好きだけど、趣味なのか?」と答えてくれた。

 続けて、ごく平凡なやりとりも行なってみる。彼女に空腹の旨を伝えたところ、「楽しんでたくさんやれば、きっとどんなことでも上手になるのである!」と、ここで初めて会話に齟齬が発生。これに対して、画面右部にある誤答ボタンを押したところ、彼女は焦りの表情を見せ始めた。どうやら、このフィードバックは彼女の喜怒哀楽とも連動しているらしい。

 そこから「今日はいい天気ですね」と入力すると、「うむ。晴れた空を見ると心がウキウキするのである!」と、心温まる反応に。今度は正解ボタンをクリックすると、彼女も満面の笑みを見せてくれる。さらに、歌声を聞かせるように頼むと、彼女は鼻歌で「かえるのうた」を披露。アーティストとしても活躍する大橋の歌声なだけあって、自然と心踊らされてしまう。

 ここからは、少し難易度を上げた質問に。まずは「英語で話してみて」と伝えてみた。日本語以外での回答は不可能だろうと予想していたところ、「えいご……かなでが知っている英語はAFROJACKくらいのものなのだ…」と、大きく意表を突いた回答が。Afrojackは、三代目 J SOUL BROTHERSらの楽曲を手掛けるオランダ出身のDJ/音楽プロデューサー。なぜ彼女の口から、思いもよらぬワードが飛び出したのか。一抹の謎を抱えたまま、今度は担当声優である大橋に絡めて、大橋のフルネーム、ならびにニックネームである“へごちん”について質問。しかし、「なんのことであるか? わからないのである」と少々悔しい回答に終わった。

 最後に、少々踏み込んだ質問も。スマホアプリともなれば、やはり夢のある回答が見てみたい。満を辞して「正直、彼氏はいますか?」と質問すると、「ふわわ、恋愛なんて、かなでには想像もつかないのである……!その……おぬしは興味があるのか?」と、120点満点の答れを提示してくれた。ありがとう『8beat Story♪』。そんな麗らかな気持ちを携えて、静かにアプリを閉じた。

 一連のやりとりを振り返ると、彼女はユーザーの質問文から、恣意的に一単語を抽出して回答を導き出す傾向があったように思われる。前述した天候についての質問時には、「今日はいい天気です」「今日はいい天気ですか」「今日はいい天気ですか?」の3パターンを用意。しかし、彼女はその全てに「うむ。晴れた空を見ると心がウキウキするのである!」と回答した。ここでは前後の文脈に関わらず、“天気”という言葉に引っ張られたようだ。また、回答検索時には疑問符をはじめ、“~ですか”などの細かな言い回しも考慮されないらしい。実際に「今日は雨ですね」と別の単語を使用したところ、「雨が降っているのか……湿気は精密機械の大敵である……」と、回答が変化したことも記しておこう。

 その精度にはまだまだ改善の余地がありつつも、ユーザーからのフィードバックを重ねることで、その回答も徐々に信頼できるものに近づくことだろう。何より、彼女の豊かな表情と心弾む声色には、どうしても惹かれてしまう。本稿が、空乃かなでとのコミュニケーションを育むきっかけのひとつになれば幸いだ。

(文=青木皓太)

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