急成長中のYouTubeチャンネル「in living.」が提示する“自然体な暮らし”
コンセプトがある(ように見える)暮らし
「今度引っ越しするときは、キッチンは大きめで、色は寒色で統一して……」と夢想しても、家具や家電を買い換えるわけにはいかず、結局同じような部屋になって…という経験はないだろうか。そういった「コンセプトのある生活」を仰ぎ見ながらも中々「自分」という枠組みから抜け出すのが難しいなか、決して無理をせず自分の好きな暮らしを送るin living.の姿にはどうしたって憧れてしまう。
「真似してみたいけどなかなかできない」。YouTube論的な観点からするとこれは、動画視聴数が伸びる典型的なパターンと言えるかもしれない。それは、「やってみた系」の動画から「ドッキリ系」、はたまた「大食い系」まで、私たち視聴者は、自分ができないことに対する興味から動画の再生ボタンを押すことが多いと思うからだ。彼女がコンセプトを明確に定めて生活しているかどうかはわからないが、ミニマルで清潔感があり、 無印良品を好むといったような統一感のある暮らしを実現している姿は、「真似してみたいけどなかなかできない」という私たちの欲を満たしてくれるものである。また、同じような生活を送る人が見ても、それは“共感”として刺さっていることだろう。
作り笑いではなく、例えば祖母からもらったパプリカを見たときにあらわれる、“滲み出るような笑み”が印象的なinliving./ririka。今までにはなかったこの自然体な動画に、私たちは新たなるカルチャーの誕生を見ているのかもしれない。
■原航平
ライター/雑誌編集。1995年生まれ。映画やドラマ、演劇などをむさぼる人生。ブログ/Twitter