「ボカロで覚える」はなぜ人気シリーズに? みきとP書き下ろし楽曲から考察

 そもそも、参考書になぜボーカロイドを使うのか。まずは、ボーカロイド文化を支えている大方の年齢層が中高生であることが挙げられるだろう。それは、歌い手やボカロPのライブに足を運べば一目瞭然だが、「2018年 年代別カラオケ年間ランキング」を見ても明瞭だ(参照)。また、ボカロP本人が同シリーズをSNSで告知もしている。その拡散力や話題性も参考書として起用された理由のひとつかもしれない(日本史の平安時代を担当するピノキオピーも、同シリーズを担当した旨をツイートしている)。

 しかし、「ボカロで覚える」が人気シリーズになったのは、話題性や単なるボカロ人気だけでなく、その内容にある。同シリーズがボカロファン以外からも注目を集める参考書になっているのは、先述したような「耳と目で覚えさせること」や「遊び心ある仕掛け」といった、他の参考書とは違う“特異性”があったからこそだ。

 また、「ボカロで覚える」シリーズの最大のポイントは、“なにをするにも楽しめなければ続かない”ということを意識して、“楽しむ”要素を一杯に詰め込んだ点だろう。勉強に苦手意識を持っている学生が、一心不乱に勉強にだけ集中し続けるのは困難であったとしても、そのなかに楽しいと思えることが付加されるとどうだろうか。“勉強”に対して意気込まずに取り組むことができる。同シリーズは、“楽しむ”を大前提とした参考書なのだ。

 「ボカロで覚える」は重要単語を大まかに覚えることができる参考書だ。MVを視聴し、楽しみながら学習することで、自然と勉強への興味や意欲が湧くことだろう。

■小町 碧音
1991年生まれ。歌い手、邦楽ロックを得意とする音楽メインのフリーライター。高校生の頃から気になったアーティストのライブにはよく足を運んでます。『Real Sound』『BASS ON TOP』『UtaTen』などに寄稿。
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