『Spotify』2018年間ランキングにみる、世界の音楽シーンの変化とは?

 続いて、「海外で最も再生された国内アーティスト」という項目について、柴氏は下記の順位を見ながらこう推察する。

2018年 海外で最も再生された国内アーティスト

1. ONE OK ROCK
2. RADWIMPS
3. Nujabes
4. 坂本龍一
5. BABYMETAL
6. 久石譲
7. Aimer
8. FLOW
9. 米津玄師
10. 小瀬村晶

2018年 海外で最も再生された国内アーティストの楽曲

1. Tokyo Drift (Fast & Furious) / Teriyaki Boyz
2. Stillness Speaks / Yuki Sakura
3. Unravel / TK from 凛として時雨
4. Peace Sign / 米津玄師
5. Best Part Of Us / AmPm
6. 前前前世 - movie ver. / RADWIMPS
7. Inside River, Pt. 2 / 小瀬村晶
8. Asphyxia / Cö shu Nie
9. なんでもないや - movie ver. / RADWIMPS
10. スパークル - movie ver. / RADWIMPS

「海外で再生された国内アーティストがONE OK ROCKである、というのは納得の数字です。現行のポップスのシーンに真っ向から挑んでいるのは彼らだと思いますし、日本人として、というよりはニューヨークに拠点を置くレーベル〈Fueled by Ramen〉の一員として、世界の音楽市場で勝負していることが新曲からも伺えます。個人的に気になるのはNujabesですね。これはSpotifyというプラットフォームの特性だと思うのですが、プレイリストを経由して聴かれることにより、言語に依存しない、音色の気持ち良さや心地よさを持った音楽が世代や国境を超えて聴かれる、という現象が起こっていて、Nujabesや坂本龍一、久石譲はその影響でここまでランキングを上昇させた、という認識です。彼ら以外にも、アーティスト・楽曲ランキングにそれぞれヒーリングミュージックに近い楽曲が入っていることからも明らかでしょう」

 続けて、アニメソングのランクインが多いことについても触れながら、世界における日本の音楽の現状について持論を述べる。

「インドにおけるボリウッドと同じように、日本のアニメもある種の民俗的な大衆文化であり、そこに紐づくアニメソングはアメリカにもイギリスにもアジアにもない独自の音楽性を持っています。世界のランキングと乖離したものであることに憂いを覚えないとは言えませんが、決して悲観するだけのものではないとも考えています」

 最後に、来年以降への期待を込めて、柴氏はこう提言した。

「ただ、楽曲面で10年以上前にリリースされた『Tokyo Drift (Fast & Furious)』が2017年に続いて1位という状況を変える人を待ち望んでいることも事実です。今年はストリーミングへの楽曲解禁を行うアーティストも多い一年でしたから、来年以降はこのランキングを良い意味で狂わせてくれる日本人アーティストが登場してくれることを楽しみにしたいですね」

 状況も好転しつつあると考えられる2019年、国内からこのランキングを変動させるゲームチェンジャーが現れることに期待したい。

(文=中村拓海)

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