『ロックマン11 運命の歯車!!』レビュー:8年越しの再起動を果たしたシリーズの新たなる一歩

創意工夫の面白さとリプレイ性を引き立てる「ダブルギアシステム」

 そして、もう一つに「ダブルギアシステム」。「パワーギア」、「スピードギア」のロックマンの能力を一時的に強化するシステムが導入され、これまでにも増して多彩なアクションが繰り出せるようになっている。

 特に「スピードギア」は発動することで周囲の動きを遅くし、高速で襲い来る敵、攻撃を確実に回避したり、連続ダメージを与えるといった、反射神経が求められる場面への的確な対応を行える、アクションゲーム初心者、苦手なプレイヤーにありがたい存在だ。

 このシステムの関係で、今作では随所でその活用が求められてくる。勿論、あえて使わずに挑むこともできるが、相当な反射神経がないと無傷突破は困難。正直、シリーズの大半をクリアした実力を持つ経験者すら悲鳴をあげるほどだ。

 しかし、それはあくまでも初見時の話だ。経験を重ねると、ギアに頼らない突破が自然と行えるようになっていく、確かな上達を感じられるバランス調整が図られている。

 また、各ギアの使用を強要されることが一切ないのも極めて重要且つ、見事な部分。明らかに使わないとダメに見える場面すら、実はギア未使用で乗り越えられる「解答」が用意されている。

 何より、より華麗で大胆な攻略法を編み出せる、創意工夫の面白さがあるのもこのシステムの魅力だ。始めは効果の分かりやすさから「スピードギア」に頼りがちだ。だが、より強力な攻撃を可能にし、「特殊武器」の効果範囲を広げる「パワーギア」の秘めたる強みに気付けば、そちらを積極的に使っていくようになる。

 中でも特殊武器との組み合わせは効果絶大だ。普通にやるなら一体一体、細々と処理していく敵の群れをまとめて一瞬で片づけられたり、ボスにも倍以上のダメージを与えることができてしまう。

 ロックマンというゲームは、プレイヤーの創意工夫によって自由で多彩な攻略を実践できるのが大きな魅力だ。今作のギアシステムはその魅力を研ぎ澄ませ、これまで以上にプレイヤーの性格が現れる攻略を楽しめるようになっている。

 導入の代償として、シリーズ特有のシンプルさは損なわれたが、結果的にエンディングを迎えた後でも新鮮な気持ちで楽しめるリプレイ性が非常に高くなっており、「何度でも遊べるゲーム」を体現している。それはロックマンというアクションゲームの持つ最大の強みであり、30年の歴史を誇る味だ。そこにフォーカスした内容に今作は完成されているのである。

柔軟な難易度と使い勝手の増した救済機能

 難易度にも注目したい。ロックマンと言えば、難しいアクションゲームの印象が強く、今作もいつも通りに手強い。しかしながら、前作にも実装された難易度選択機能が続投し、プレイヤーの腕に応じた遊び方が楽しめるようになっている。

 特にシリーズ初心者向け「ニューカマー」の調整は素晴らしい。穴に落ちたり、触ると一発でやられてしまうトゲに触れてもやられないという親切設計にしつつ、経験を積んで上達すれば、気持ちよくステージを進めていける可能性を想起させ、再プレイ欲を刺激するバランスになっている。「アドバンスド」以降の難易度になると残機制が設けられるほか、敵配置、ボスの攻撃パターンと速度も変わり、違った手応えを味わうことができる。特に最高難易度「エキスパート」のボスは俊敏な動きで攻めてくるも、回避チャンスがちゃんと設けられた芸術的な調整になっているのが圧巻だ。

 換金アイテム「ネジ」を支払うことで攻略の手助けとなるアイテムを購入できるショップシステムも実装されているに加え、今回はネジが非常に集まりやすく、いわゆる金の力に任して押し切る攻略に完全対応しているのも嬉しい。しかも、全難易度共通。一番難しい「エキスパート」すら、その方法で乗り切れる余地が設けられているのだ。

 何より、これまでにも増してショップが利用しやすくなったことを高く評価したい。このシステムはゲームボーイの『ロックマンワールド4』より導入されたものだが、アイテム購入に消費する換金アイテムが集まりにくく、その恩恵にあずかるのが困難を極めた。『ロックマン7 宿命の対決!』の時は稼ぎポイントの存在もあって使いやすかったが、『ロックマン9』と『ロックマン10』では再び集めにくくなり、救済機能としての使い勝手はイマイチだった。

 今回はどんどん集まっていくので、気兼ねなくその恩恵にあずかれる。この調整は見事で、ようやくショップシステムの魅力が開花した感じだ。なのでもし、なかなかクリアできないと思った時はガンガン活用することを推奨したい。クリアできればよかえろうなのだ。勿論、使わず挑むもよしである。

 ステージも今回、じっくり挑めばクリアまで10分以上かかるなど、ボリュームが増しているが、豊富な仕掛けと敵の配置の的確さもあって、適切なやり応えがある。何より、ここにもギアシステムと特殊武器の使い方次第で、クリア時間を大幅に短縮でき、難易度まで著しく下げられる「解答」が設定されているのが素晴らしい。

 とは言え、いささか密度を濃くしすぎた印象も否めない。今回は8体ボス全てのステージに中ボスが登場するのだが、これが非常に手強い。特殊武器を活用すれば一瞬で倒せる見所もあるのだが、どこかしら中ボスが登場しないステージがあっても良かった。

 また、標準難易度「オリジナルスペック」だと、再開地点と初期の残機数の少なさが逆に精神的負担となる。今作の密度なら標準難易度は再開地点多め、残機数やや多めの「アドバンスド」が適切だったのではないか。この辺は率直に言って、設定ミスを感じてしまう限りだ。

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