『半分、青い。』がものづくりへのきっかけにーー鈴愛と律が発明した“そよ風ファン”のモデル・寺尾玄氏の思い

『半分、青い。』がものづくりへのきっかけに

 鈴愛(永野芽郁)が律(佐藤健)と共に「スパロウリズム」を立ち上げ、“一大発明”に突き進んでいる朝ドラ『半分、青い。』(NHK総合)。鈴愛の発明というのが、“そよ風”を生み出す扇風機だ。モデルとなったのは、株式会社バルミューダが2010年に開発した「GreenFan」。扇風機界に革命を起こした「GreenFan」を皮切りに、バルミューダ社は「当たり前」と思っていた既存の製品に新たな付加価値を加え、次々に“新しい商品”を生み出し人々を驚かせている。

 リアルサウンドでは、『半分、青い。』の扇風機開発部分原案を務めたバルミューダ社長・寺尾玄氏にインタビュー。寺尾氏を突き動かす情熱はどこからやってくるのか、ものづくりとは何か、じっくりと話を聞いた。

「開発部分に関しては、ほぼほぼ私の実体験をそのまま再現」

バルミューダ社長・寺尾玄氏

ーー現在放送中の『半分、青い。』では、鈴愛が律と共に“そよ風ファン”を開発しています。資料等を読むと、「GreenFan」の制作過程をかなり再現されているようですが、どういった経緯で本作の「開発部分原案」として携わるようになったのでしょうか。

寺尾玄(以下、寺尾):脚本の北川悦吏子さんが、糸井重里さんとの対談(『バルミューダのパンが焼けるまで。』)を読んで関心を持って下さったそうなんです。その中でも、「GreenFan」を開発したエピソードを参考にしたいと。私にとっては人生の中で最も楽しい時期のひとつでもあり、その部分だけをご提供するのはどうなのだろうと最初は思いました。でも、ものづくりや事業を始めることの楽しさを多くの方に伝えたいという思いがあったので、『半分、青い。』がそのきっかけになってくれたらこんなうれしいことはないと感じ、ご協力させていただくこととなりました。

ーー羽根の造形から空気の流れまで、劇中では非常に細かく制作の過程が描かれていると感じました。

寺尾:開発のステップは、結局「調査と捜査」なんです。いろんな仮説を立てて試す。脈があると思ったらそこからまたパターンを広げる。そして答えにたどり着く。時間や予算など考えるべきことはありますが、その期間は苦しいというよりも楽しいんです。技術開発の楽しみを、本作を通して感じていただけていたらうれしいですね。

――鈴愛は漫画家を諦め、離婚を経験するなど、人生の中で幾度となく逆境に立たされていましたが、どんな状況でもひたむきに走り続けてきました。鈴愛の人生は波乱万丈ですが、10代後半に海外で放浪の旅をし、9年間の音楽活動を経て、バルミューダを立ち上げたという寺尾さんの半生をお聞きすると、鈴愛のモデルはここにいたのかなと感じました。

寺尾:鈴愛たちが作る“そよ風ファン”開発の部分以外はノータッチなのですが、確かに似ている部分はあるかもしれないですね。開発部分に関しては、ほぼほぼ私の実体験をそのまま再現していただいています。鈴愛が流体力学の本を読み込んでいる描写がありましたが、私もまずは仕組みを学ぶところからスタートしました。鈴愛は通常の扇風機の風も、一度壁にぶつけることによって、まったく違う風になることを気づきますが、これも私がお世話になった春日井製作所でのエピソードのままです。ただ、羽を二重構造にするアイデアをひらめく描写は違いがありました。私は、テレビで放送されていた小学生の30人31脚を見て、流体の現象と重なるものを感じ、内側と外側の2種類の羽根を使用するアイデアを思いつきました。それが『半分、青い。』では、漫画家でもあった鈴愛が花の絵を書いて、その花びらの形をきっかけに二重構造を思いつく。この置き換えは非常にうまいなと思いました。

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