加藤よしきの“ゲームのいけにえ”
“麻薬取締部”題材に、バトル漫画を彷彿とさせる恋愛ゲーム!? 『スタンド マイヒーローズ』の秀逸なシナリオに迫る
もっとも、ドラッグ/犯罪を題材にしつつも、映画で言うところの『ボーダーライン』(2015年)のような悲惨な方向には行かず、メインシナリオの手触りは海外ドラマや、あるいは “強くてカッコいいキャラ”が次々と出てくるせいか、それこそ『嘘喰い』や『グラップラー刃牙』のようなバトル漫画を彷彿とさせる。もちろん、ここまで物騒な部分ばかりを取り上げたが、本当の意味での“メイン”である恋愛ルートもキャラを丁寧に掘り下げていて好印象である。キャラクターごとに重い話から軽い話まで、幅も広くて楽しい。
そして本作のパズルゲームとしての側面も見逃せない。このゲームの中でパズルは「キャラクターとの会話」という位置づけになっている。例えば、あるキャラクターから「お前には協力しない」と言われた直後にパズルゲームが始まり、無事にクリアすると「話を聞いてやろう」となるのだ。なので(脳内補完になるが)「どうだ! 俺の交渉術で、ほだしてやったぞ!」という妙な達成感がある。操作性もよく、何よりシナリオがパズルを遊ぶモチベーションになるので、「やらされている」感やストレスは少ない。
こうした『スタマイ』自体の面白さも注目に値するが、私がこの作品で本当に凄いと思うのは、本作がこれまで辿ってきた道であり、最初に触れたメディアミックスについてである。この作品はシナリオの力で成り上がってきた。本作は元々『ドラッグ王子とマトリ姫』というシナリオ買い切り型のゲームがベースにある。つまり元は完全にシナリオ勝負のゲームなのだ。その『ドラッグ~』を、より広い年齢層に受けるように作り替え、さらにパズル要素を追加してゲーム性を高めたのが『スタマイ』である。
そして、このたび『スタンド マイヒーローズ』としてのTVアニメ化まで決定した。まずシナリオで評価を受けたタイトルであるから、アニメとの相性は悪くないはずだ。個人的にはゲームではなかなか表現し辛いアクションシーンも盛り込んでほしいが、ともかく今は楽しみに待ちたい。シナリオ売り切り型から、完成度の高いパズルゲームとして、そしてTVアニメへ。一歩ずつしっかりと規模を拡大していく、それはまさに正当なメディアミックスの手順だが、先にも書いたように、この道を辿るのは容易ではない。ちなみにYouTubeに上がっている『ドラッグ王子とマトリ姫』の予告動画には、こんなキャッチコピーがついている。「正統派にして異例の恋愛ゲーム」まさにその通りである。
■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。
■『スタンドマイヒーローズ』基本情報
タイトル : スタンドマイヒーローズ 配信日 : 2016年9月
価格 : 基本プレイ無料(ゲーム内課金あり)
公式サイト:https://stand-myheroes.com/
公式Twitter:https://twitter.com/myhero_info
公式YouTube: https://goo.gl/abDN2e
App Store: https://goo.gl/oFkE1f
Google Play: https://play.google.com/store/apps/details?id=com.colyinc.standMyHeroes&hl=ja