『オクトパストラベラー』、懐かしの“ドット絵”はなぜ人々を虜に? ファンタジックな魅力を考察
スマッシュヒットとなった『OCTOPATH TRAVELER』
2018年7月18日に発売されたNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』(SQUARE ENIX)が、完全新規タイトルとしては異例のヒットを飛ばしている。8月初頭には世界累計出荷数とダウンロード販売本数の合計が100万本を突破し、さらに勢いを増しているようだ。
『オクトパストラベラー』は、8人の登場人物から1人を選択して世界を冒険する王道のRPGだ。8人はそれぞれ独自の物語を持っており、その物語量は膨大である。またパーティーメンバー、ジョブ、スキルといったカスタマイズ、世界中のサブクエストやアイテムの探索など、各種やり込み要素も満載だ。
本作で特に印象的なのは、「HD-2D」と呼ばれるそのビジュアルだ。昔ながらのドット絵に3DCGの効果を加えた特殊な手法で描かれているものである。これは昨今の海外製ゲームーー例えば『GOD OF WAR』、『Horizon Zero Dawn』などのようなリアル3D路線と対極の進化である。ドット絵キャラの会話劇でイベントが進行するなど、全編に渡って古き良きRPGの雰囲気が溢れているのがたまらない。
「レトロゲーム」の再発見
インディーゲームの傑作『Undertale』なども含め、ドット絵のゲームが今、人気を集めている背景には、様々な要因が考えられるが、日本においてきっかけの1つとなったのは、2003年に放送が始まったTV番組『ゲームセンターCX』(フジテレビONE)ではないだろうか。同番組は、お笑い芸人・よゐこの有野晋哉が扮する有野課長が、様々なTVゲームに挑戦するゲームバラエティ。当時は最新機種だったPlayStaion 2などのソフトを取り上げつつも、『たけしの挑戦状』など、かつてのファミコンキッズたちを夢中にさせた(あるいは困惑させた)ソフトにも意欲的に取り組んでいたのが印象的だった。この時期は、多くのゲームが“映画のようなビジュアル”を目指し、日進月歩の進化を遂げていたが、『ゲームセンターCX』では逆に古いソフトを取り上げることで、すでにゲームを卒業した大人世代の視聴者を取り込むことにも成功した。この時点で、いわゆる「レトロゲーム」への需要はすでに高まりつつあった可能性がある。
それ以前にも、好事家たちによってレトロゲームの価値は再発見され続け、インターネットが普及した後は、ファミコンやスーパーファミコンの“名作”がオークションで高値で取引されるのも決して珍しい光景ではなくなっていった。さらに、PlayStation 3のようにネットと直接繋がるハードが出てきてからは、かつての人気ゲームが格安で配信されるようになり、いよいよ「レトロゲーム」へのハードルは低くなっていく。Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One、携帯機の3DS、PS Vitaなど、現行のゲームハードはいずれも当たり前にネット接続でソフトをダウンロード購入することができ、任天堂の「バーチャルコンソール」のような、かつてのハードを最新機種の中で再現するエミューレーターも充実している。
そこにきて、『ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピューター』(2016年11月発売)の登場である。現代のテクノロジーで手のひらサイズにまで小さくなったハードには、『スーパーマリオブラザーズ』や『ゼルダの伝説』など、今なおシリーズが続く伝説の名作を30タイトル収録。「かつて愛したゲーム機のミニチュア」として、当時小学生だったファミコンキッズたちの心を掴んだのは想像に難くない。また、当時を知らない若者にとってローテクのドット絵はかえって新鮮で、そのシンプルながら熱中できるシステムに、ゲームの本質的な面白さを見出すケースもあっただろう。
結果として、この『ミニファミコン』は長期に渡り品薄となり、大ヒット商品に。ネット通販で定価の倍額以上をつけられるなど、よくも悪くも大きなニュースとなった。さらに、このヒットを受けて、「ミニ」シリーズは続々と作られることになる。『ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン』『NEO GEO mini』など、往年の名作タイトルを内蔵した小さなハードは軒並みヒットし、今年中には『メガドライブ ミニ』も発売される予定だ。