『サガ スカーレットグレイス 緋色の野望』に見る、ゲームファンを魅了してやまない“サガ・エッセンス”
世界観に深みが増した『緋色の野望』
『緋色の野望』は、オリジナル版の『サガ スカーレットグレイス』の良さを削らずに、ゲームバランスの調整を踏まえて仕様変更を試みた作品だ。自由度の高いフリーシナリオで、プレイヤーの決断を積極的に促し、結果としてストーリーは幾重にも派生していく。進行に関わるイベント群や戦闘はワールドマップ上で発生するため、ダンジョンやフィールドで煩わしいエンカウント戦闘に頭を悩ませることはない。また、ロード時間やキャラクターの移動スピードも変更されており、全体的にゲーム攻略に集中できる環境作りがなされている。
特徴的な追加要素は様々だが、中でも目立つのはキャラクターボイスの実装だろう。オリジナル版にも登場した「ウルピナ」や「レオナルド」をはじめとする主人公たちだけでなく、サブキャラクターにもボイスがつき、イベントシーンが印象深いものとなった。新キャラクターの「カメリア」と「サビット」も加わったことや、サブキャラクター中心の新規イベント収録で、世界観により深みが増したとも言える。戦闘に関しては、オリジナル版では泣く泣く削られた技が追加され、サガシリーズ経験者にも嬉しいシステム改善となったようだ。
マルチプラットフォーム展開も魅力
これまで携帯機のPS vita向けで発売されていた『サガ スカーレットグレイス』だが、冒頭に記したように、『緋色の野望』は据え置きハードやモバイル端末でも遊べるようになった。この場合、各プラットフォーム間でゲーム性の違いが心配されるが、『緋色の野望』では大きな違いは見られない。あるとすればオープニング映像の有無やテクスチャの質感だ。iOS/Android版やNintendo Switch版は画面タップ操作にも対応しており、プラットフォームごとに操作UIもプレイしやすいよう整えられている。外出先でのプレイがメインならスマートフォン、じっくり腰を据えて遊びたいなら据え置きハードで遊ぶと良いだろう。
ゲームバランスの調整やストーリーのボリュームアップ、マルチプラットフォーム展開で間口が広がった『緋色の野望』は、オリジナル版をクリアしたユーザーにもオススメできる。もちろんサガシリーズ未体験のユーザーなら、より新鮮な気持ちで遊べることだろう。硬派なRPGを好むコアなゲームファンだけでなく、普段RPGを遊ばないユーザーも手に取ってもらいたい一本だ。
■龍田優貴
ゲームの尻を追いかけまわすフリーライター。時代やテクノロジーと共に移り変わるゲームカルチャーに目が無い好事家。『アプリゲット』『財経新聞』などで執筆。個人的なオールタイムベストゲームは「ファミコン探偵倶楽部」シリーズ。
Twitter:@yuki_365bit
■サガ スカーレット グレイス 緋色の野望
ジャンル:RPG
対応機種:PlayStation4/Nintendo Switch/Steam/iOS/Android
発売日:2018年8月2日
価格:
PlayStation4/Nintendo Switch/Steam版:5800円+税
Limited BOX【邪神】:18,500円+税