加藤よしきの“ゲームのいけにえ”

1ターンごとにガチャを回しているようなワクワク! 『メギド72』の斬新な戦闘システム

 加えて、これはゲームの内容からはやや逸れるが、開発者の姿勢も好感が持てる。公式サイトではスタッフの発言が読めるが、それによると「とにかく面白いゲームを作る」という気持ちが強かったそうだ。結果として開発に予算をかけすぎて、宣伝が疎かになったらしい(別のインタビューでは半分冗談とも言っているが)。こうした姿勢は今のトレンドとは異なるし、決して器用とは言えないものの、不器用さゆえの愛嬌もある。そして実際、開発陣の「面白いゲームを作る」という部分は達成されているように思う。少なくとも、ゲームの中心である戦闘は個性的であり、1ターンごとにガチャを回しているようなワクワクとドキドキ、臨機応変に状況に対応するゲーム体験は、これまで私が触れたことがなかったものだ。

 斬新なゲームシステムを考えるのは本当に難しい。それは世に出ているゲームを見れば一目瞭然だ。RPGにせよアクションにせよ何にせよ、どのジャンルでも「このジャンルはこういうシステムだよね」という定型が出来ている。あとはその定型に載せる何かを考える、あるいは定型を磨き上げるか、何か一要素加える……そういうアプローチのゲームが非常に多い。1に何かを足す考え方だ。こうした発想の作品は、作る側の難易度も抑えられるし、プレイする側にも「ああ、いつものアレね」と言ったふうに、取っつき易いという利点がある。しかし一方で、どうしても既視感を抱いてしまうものだ。『メギド72』はそうした定型にある程度は従いつつ、一方で0から1を生み出そうという思想がある。私はこうした挑戦的な姿勢にも強い好感を抱いた。まさに意欲作であり、その意欲が実を結んだ良作だと言えるだろう。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

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