『INNOVATION WORLD FESTA』川田十夢インタビュー

AR三兄弟長男 川田十夢が語る、テック×エンタメの未来 「場所や時間からもっと自由になれたら」

「僕が聞きたいのは“イノベーターが世界をどう見ているか”」

ーー『INNOVATION WORLD』には、毎回様々な“イノベーター”の方が登場しています。

川田十夢(以下:川田):僕は普段、AR三兄弟(次男:髙木伸二、三男:弘田月彦)の長男として、プログラミングを使ったネタ作りに取り組んでいます。一言で“イノベーター”といっても、番組には経営者やミュージシャン、編集者など様々なジャンルの第一線で活動している方を毎週迎えていて、とても刺激になりますね。例えば、もともと顔見知りだった川村元気さんは、改めてラジオで話をしたことで距離が縮まり、『文化庁メディア芸術祭』を中国へ輸出したいから協力して欲しいという相談をしてくれました。また、キングコング・西野亮廣さんとは番組がきっかけで、彼がニューヨークで行う個展の準備を手伝うことになったり、と番組とパラレルな仕事に発展することも多いです。

ーーラジオならではの話の深まり方ということでしょうか。

川田:普段、普通に会って話をすると、どんどん内容が専門的になってしまって、話題がお互いの専門領域だけにとどまってしまうこともある。でも、僕らのことを知らないかもしれないリスナーに対して、改めて自分の考えや意見を言葉にすることが良い相乗効果を生んで、新たな仕事に発展しているんだと思います。

ーーこれまでの番組ゲストで印象に残っている方は?

川田:過去に佐野元春さんをお迎えしたことがあったのですが、まさに“イノベーター”でした。AIやVRが急に登場しても動じなくて、むしろ、番組のAIアシスタント・Tommyに「じゃあTommy、Siriによろしくね」なんて冗談を言っていて。佐野さんはアーティストで、普段からテクノロジーに接しているというわけではないですが、歌の中で未来のことを考えている。やはり、新しい曲を作り続けている人というのは、どこかイノベーティブな肌感覚があるんでしょうね。最近だと、音楽プロデューサーの亀田誠治さんやASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんが来てくれたんですが、二人とは連絡先を交換するくらい仲良くなりました。番組自体は短い時間なんですけど、その中でもしっかりと“イノベーター”同士の会話ができているからなんだと思います。

ーー番組ではリスナーに何を伝えようと意識していますか。

川田:“イノベーター”を迎える番組はほかにもありますが、僕が聞きたいのは「イノベーターが世界をどう見ているか」。ジャッキー・チェンの映画を観た後になんとなく強くなった気がするように、僕が“イノベーター”の感覚を引き出して、リスナーがその人と同じような感覚で世界が見えて来たら、すごく豊かになりますよね。見上げるのではなく同じ目線で世界を見て、自分にその視点をインストールすると新たな発見があると思います。

ーー川田さん自身が“イノベーター”として、今後取り組んでみたいことは。

川田:2020年の東京オリンピックに向けて、観客を集められる場所が極端に少ないと思っていて。もちろん新しくできる会場もありますが、発展する可能性のあるエンターテインメントが「場所がない」という理由でその芽が摘まれてしまうのは、とても勿体ない。だから、あらゆるエンターテインメントが場所や時間からもっと自由になれたら良いと考えています。

ーー具体的にはどのようなものを想定していますか?

川田:ARのイノベーションで一番分かりやすいのは『Pokémon GO』で、池の近くにいると水タイプのポケモンが出てきますよね。そういう風に、移動中、車や電車の中に落語家が登場して一席やってくれる、なんてエンターテインメントがあってもいいなと思います。ラジオは周波数を合わせて聴いて、地域を越えることができない土着性があった。もっと“個”に向けた周波数があっても良いなと思っていて。仕事に向かう時、遊びに行く時、デートに行く時、友達と飲みに行く時……気分の変化で、その時必要なものを提供する形のエンターテインメントを作りたいですね。

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