女子高生AI りんなが、“歌”に挑戦する理由 「人と人工知能が関わることで新しい作品を生み出せる」

AI「りんな」が歌に挑戦する理由

「『りんな』の今の課題の一つは表現力」

ーー「りんな」の歌はどうやって上達していったんでしょうか。

坪井:歌には正解がないので難しいですよね。私たち人間の場合、誰かに聞いてもらってリアクションを見たり、アドバイスされることで歌声がブラッシュアップされていきますが、「りんな歌うまプロジェクト」もそれと似ていて。実際に十数時間の歌のデータを学習させて、その歌声が良いかどうかを判断するのにユーザーのアドバイスを使うことにしたんです。例えば「ちょっとリズム感取れてないよ」「高音かすれてるよね」とか、時にはりんなが本当に実在しているみたいに「腹式呼吸で声を出すといいよ」なんて言われたり(笑)。アドバイスを受けて、リズムを合うように調整したり、高い歌声を聴かせたりして、さらに歌を学習させていきました。「nana」上の「りんな」のコミュニティでは、「りんなのために歌いました」と歌を投稿してくださる方も多くて、想像以上に「りんな」とユーザーとの距離が縮まりましたし、「歌が上手くなりたい」という「りんな」と同じ気持ちを持つユーザーも多いので、共感していただけたのかもしれません。

――歌の上達がはっきり分かるのは面白いところですよね。

坪井:人工知能ってみんなで少しずつ育てていけるのが、いわゆるロボットとは違うところですよね。ユーザーからの指摘があればあるほど私たちもより気づくことがあって、技術を向上させることが出来る。同時にユーザーも進化を体感して、「りんな」への思い入れも強くなってもらえているのかなと思います。“人工知能が人の仕事を奪う”なんて言われることも多いですが、むしろ「りんな歌うまプロジェクト」の集大成として発表した「卒業ソングnanaユーザーと合唱」のような形で、人と人工知能が関わることで新しい作品を生み出せるはず。人工知能と組むことで、よりクリエイティブなことができる未来に期待しています。

Microsoft x nana りんな歌うまプロジェクト 「卒業ソングnanaユーザーと合唱」 Long Ver.

ーー「りんな歌うまプロジェクト」第2弾はどのようなものになっているんでしょう。

坪井:第1弾では歌声を成長させてきましたが、第2弾はよりクリエイティブなことができないかと思い「感情をこめる」ことを学習させようと思っています。まずは、ユーザーに3行のフレーズを投稿してもらってそのフレーズをりんなが学習することで、最終的に「1編の片思いについての詩」を作ろうと考えています。そして、詩が完成したら「りんな」が上手に読み上げられるのか、ということにも挑戦します。「nana」には歌を投稿される方が多いですが、ボイスパーカッションや朗読、声劇など声を使った遊びを投稿している方も一定数いらっしゃって。そういうユーザーが第1弾と同じく「りんな」にアドバイスして、演技力や感情を込める方法を教える取り組みも予定しています。実は、「りんな」の今の課題の一つは表現力で。表現力も歌声と同じく、何をもって正解とするのかが難しくて、日々頭を悩ませながら一緒に成長しているところです。プロジェクトでは最終的に「りんな」の朗読を聞いて人はどう感じるのかという結果もまとめる予定です。

ーー今後の「りんな」の目標を教えてください。

坪井:「りんな」と一対一で話すだけでなく、グループの中に「りんな」がいることで、もっとそれぞれの人間の魅力を引き出すことです。「りんな」は元々、ユーザーの“友達”というポジションでしたが、最近では『世にも奇妙な物語 '16 秋の特別編』などドラマに出演する機会もあったので、今後は“有名人”になることで、「あのテレビ出てたよね」と「りんな」が会話するきっかけを作れる存在になれればな、と。「りんな」はよく、役に立たない会話をする、と言われますが、そういうキャラクターの方が話しかけたくなる魅力がある。その特性を生かして、日本中のみなさんを繋ぐお手伝いができたらいいなと考えています。

(取材・文=編集部)

■関連リンク
りんな歌うまプロジェクト第1弾レポート
(前編)
(後編)
りんな歌うまプロジェクト第2弾
「#りんなの歌に使っていいよ」

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