FF7の音楽はなぜ愛され続ける? 植松伸夫の作家性とゲーム音楽から考察

 音楽番組『題名のない音楽会』(テレビ朝日系)の5月12日放送回にて、「植松伸夫が厳選!ファイナルファンタジー吹奏楽の音楽会」と題した特集が行われた。

『FINAL FANTASY VII ORIGINAL SOUNDTRACK』

 同番組でファイナルファンタジーの音楽が特集されるのは今回で2度目。2016年に「吹奏楽によるファイナルファンタジーの音楽」としてオンエアされた際は、ファンにはおなじみの楽曲「ザナルカンドにて」(FF10)や「ビッグブリッヂの死闘」(FF5)などが演奏され、SNSなどで大きな話題を呼んだ。

 今回は1992年に発売された『ファイナルファンタジー7』(以下、FF7)より、同シリーズの音楽を手掛ける植松伸夫氏が選んだ5曲が、吹奏楽団「シエナ・ウインド・オーケストラ」によって演奏された。ファイナルファンタジーシリーズの中でも、今もなお根強い人気を持つFF7。その音楽がなぜファンから高い支持を受けるのか、ゲーム評論家のさやわか氏は次のように解説する。

「FF7はハードウェアがスーパーファミコンからプレイステーションに移行して第1作目の作品になります。ゲーム史の観点から言えば、それまで内蔵音源を使っていたゲーム音楽が、プレイステーションからCD-DA音源が使えるようになったことがファンに衝撃を与えました。FF7は内蔵音源を採用していますが、それでもCD並みの音質と、スーパーファミコンの3倍にもなる同時発生音数のおかげで、オーケストレーションなどが本物の楽器のようなクオリティになった。もともとFFシリーズは映画的なゲームを志向している作品です。FF7ではカメラの使い方や演出といった映像表現が立体的になり、本来やりたかったことが実現しました。植松さんは当時、FF7では映像より音楽が目立たないようにしたと言っていましたが、つまりは本当に映画のサウンドトラックのようなものが求められたというわけで、結果的によりエピックなもの、過去作以上に壮大なサウンドを求められていたはずです。音質の変化も非常に大きいですが、なによりFFならではドラマチックな物語が、映像と音楽の両方で高いクオリティで表現されていたため、当時プレイしていた人の印象にも強く残っているのではないでしょうか」

 また、植松氏の音楽家の特性として「ロックやポップスと接点を持っていること」を挙げた。

「植松さんはもともとクラシック畑ではなく、ロックミュージックやポップミュージックと強い結びつきのある方です。FF6以前の音楽もハードロックやプログレッシブロック、フュージョン系の要素を含んでいたのが特徴的でした。一般的にオーケストラというと堅いイメージがありますが、そのロックやポップス的な要素が加わることで、いわゆる植松さんらしい壮大でありながら親しみやすい楽曲が生まれました。もちろん、『ドラゴンクエスト』のすぎやまこういちさんなど、オーケストラを使っていた人は他にもいましたが、ゲーム音楽をよりポピュラー音楽に近しいもの、親しみやすいものにしたのは植松さんの功績と言えます。また、植松さんは音楽を通じて人と人が繋がることを初期の頃から意識していました。実際、アマチュアの演奏家と一緒にプレイするリスナー参加型ライブも2015年から続けていますし、その企画を活かしたCDが作られたりもしています。また音ゲーやスマホゲームへの追加楽曲提供も積極的に行っていて、大御所でありながら、ファンと積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢や親しみやすい人柄もファンから愛される一因です」

関連記事