質問箱、NYAGO、bosyu…Twitterで広がるC向けサービスを追う
リアルなコミュニケーションが希薄化してきたと言われる一方で、インターネットを介したコミュニケーションによって情報が伝わる速度は格段に早くなった。特にSNSの台頭以降、これまで埋もれてしまっていた価値が新たに見出され評価されていくという光景を、Twitterのタイムラインを通じて幾度となく感じている人もいるはずだ。
このところ、そんなSNS(主にTwitter)での流通を主としているサービスが増えている。それらサービスを結び付けるのは「匿名」というキーワードだ。
承認欲求をくすぐる設計
まず、ここ最近のSNSを主戦場に据えたサービスの中でも、一躍脚光を浴びたのが「質問箱」だ。ユーザーが匿名の質問を集めることができるこのサービスは、Twitter連携によるシンプルなUIと刹那的で簡易的なコミュニケーションを求めるTwitterユーザーの層に見事にフィット。一時期はタイムライン上に質問箱のURLを見ない日がないほどに流行した。
実は、この質問箱が流行する少し前に、女子高生の間で流行していた元ネタとなる「Sarahah(サラハ)」というサービスがあった。このSarahahも匿名で自分についてのメッセージを受けることができるというもので、元々、中東・サウジアラビアの企業が従業員からの匿名のフィードバックによる業務改善などを目的としたサービスだったが、日本の女子高生がSNSでの匿名コミュニケーションとして活用し始めてからは、手軽に「承認欲求」を満たすことができるサービスへと形を変えていった。
Sarahahや質問箱など、これらサービスの最大の魅力はやはり「匿名」であるということ、匿名性は質問をする側のハードルを大幅に下げ、結果としてユーザーへの声が集まりやすくなる。それはつまり、それだけユーザーが承認欲求を満たしやすくなるということ。誰かに自分の何かを認められたいという根源的な願望は『SNS×匿名性』というこれ以上ない組み合わせで手軽に満たすことができるようになった。そして、一度受けた承認欲求は肥大化しやすい。ユーザーはより多くの声を集めようと、常習的に匿名サービスを利用するヘビーユーザーとなるという図式が出来上がる。
「匿名」から「とくめい」へ
インターネット黎明期の匿名掲示板から始まり、一般的なサイトのようにアクセスできないダークウェブへの接続に必要な匿名通信「Tor」など、インターネットと匿名性の親和性は非常に高い。だがその一方で、匿名性という言葉の裏にある種の危険性や違法性、きな臭さを感じるのも間違いない。
しかし匿名で行うコミュニケーション自体が悪いわけではない。先月末にリリースされた「NYAGO」は送る側だけが「とくめい」のチャットアプリだ。平均年齢20歳という若いメンバーが集まったUNDEFIND社からリリースされたNYAGOは、TwitterやInstagramなどでチャット開始用のURLをシェアすることで誰かからチャットが届くというサービスだ。「とくめい」がひらがなであることからもわかるように、NYAGOはこれまで「匿名」にまとわりついていたマイナスを払拭し、新しいコミュニケーションの形を見出そうとしている。現在はユーザーの取りこぼし対策や更なる価値提供のため、サービスを一時停止している。「とくめい」サービスの今後に期待したい。