Bose、世界初の“音を拡張する”サングラス型ARデバイスを開発 「Bose AR」の新規性を紹介

 大手オーディオメーカーのBoseが米国で開催中のクリエイティブの祭典「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」にて、世界初のオーディオ拡張現実プラットフォーム「Bose AR」を発表し、サングラス型ARデバイスのプロトタイプを公開した。(参考:THE VERGE「Bose’s augmented reality glasses use sound instead of sight」

Bose公式サイト(海外サイト)

 VR(仮想現実)やMR(複合現実)と並び、耳にすることが増えたAR(拡張現実)。拡張現実という和訳される通り、人が知覚する情報にコンピューターの情報を付け加えることで、目の前の世界を拡張するというもの。一般的なARデバイスといえば、視覚情報を拡張するものを指すことが多いだろう。例えば、先月発表されたIntelのスマートグラス「Vaunt」。メガネのレンズ部分がディスプレイとなっており、そこに誕生日やリマインダー、料理のレシピなどの情報を表示するといった用途を想定しているという。より身近なところで言えば『ポケモンGO』もARの技術を利用したアプリゲームだ。

 しかし、「Bose AR」が打ち出すのは「聴覚情報の拡張」。Boseの発表では具体的な例として、レストランなどのレビューサイト「Yelp」と連動した事例を紹介している。「Bose AR」をかけたユーザーが「Yelp」に掲載されているレストランを視界に入れると、そのレストランの情報を音声でユーザーに伝える。従来のARデバイスのようにレンズを通して見える現実世界にオブジェクトや情報を表示するのではなく、代わりに音声が情報を伝達するイメージなのだろう。そのほかにも、旅行レビューサイト「TripAdvisor」やアスリート用のソーシャルネットワーク「Strava」といった11種類のサービスとも連携をとっているようで、今後は空港へ到着した際に搭乗ゲートへ導く音声案内、歴史的なイベントが行われた場所やランドマークを訪れた際の再現なども視野にいれて開発を進めているという。

 見た目が普通のサングラスと変わらないのも特徴のひとつ。Boseによると、プロトタイプはつるの部分に小型のスピーカーが内蔵されており、耳を覆うことなくクリアな音を伝えることが可能だという。今後は同様の技術をヘルメットなどにも応用する予定と発表されており、様々なスタイルの「Bose AR」が開発されるそうだ。また、スピーカーとあわせて各種センサーも備わっており、Bluetoothでスマートフォンと連動することで位置情報を取得し、ユーザーの現在地はもちろん、シチュエーションにあった情報を伝えてくれるという。

 Google、Microsoft、Facebookなど、大手企業がこぞってヘッドマウントディスプレイやスマートグラスの開発を進める中、従来とは異なる「音の拡張」にスポットを当てた「Bose AR」。Boseは開発にあたり、すでに5,000万ドルの資金を調達しており、量産の目処や価格帯はまだ未定だが今後もその動向に注目が集まりそうだ。

(文=泉夏音)

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