『ブラッサム』“珠”石橋静河の再生に潜むもう一つの意味 “繕う”が持つ二面性を分析

『ブラッサム』“繕う”が持つ二面性

 珠(石橋静河)と保(金子大地)は新天地に旅立った。朝ドラこと連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK総合)の第6週「ふたり、北へ」(演出:中泉慧)で2人は雪の北海道に行く。

 予期せぬ珠の妊娠による経済的な問題を解決するため、保は大学をやめ北海道の銀行で働くことにする。その矢先の早産。北海道に行く意味がなくなったが、悲しみを忘れるためにも、2人は北海道に向かう。未知なる地域に向かうことに珠も保も前向きだ。

 何かと面倒を見てくれる正吾(三宅弘城)と浪江(杉田かおる)夫妻の気遣いで、珠と保は新たな土地に慣れて、1年が経った。時々、亡くなった子供のことを思い出すこともあるが、頼母子講で千円を当てるなど、風向きも変わり、北海道にも春が訪れる。

 第6週にして、岩国、東京、北海道と場面が変わり、珠は、妊娠、結婚(名前が木村珠に)、早産と目まぐるしい。小説家の芽もあったのに、それは一旦保留にして「お母になる」ことを喜んだり、北海道に行くことを楽しみにしたりする珠に、いま、この瞬間を楽しむ才能を感じる。

 珠は浪江の履いている足袋に目を止める。倹約のため繕い続けて13年も履いているという。それがとても素敵(小道具スタッフが作ったものはあまりに素敵で、実際はこんなふうにおしゃれにはならないとは思う)で、珠は保に「しぶとい格好のええ足袋じゃった」「うちらもここであんなふうに生きられたらええなあと思って」と、仕立て屋をはじめることにする。

 もともと縫い物が得意だった珠は、近所の人の役に立ち、珠の家は女性たちのたまり場になる。だが、あるとき、妊婦が訪ねてきて、大人ものの襦袢をこれから生まれる子のための肌着に仕立て直してほしいと頼むと、珠の心は揺れる。そんなに容易には早産のことを忘れられない。それでも珠は丁寧な仕事をする。

「(足袋や着物や襦袢のように)しっかり繕うたらしぶとく強くなるんです」

 正吾は保に、この地で生活していたら乗り越えられると語りかけ、「朝起きて働いて食べて寝て、また起きて、家族で支え合って生きるんだよ」と励ます。やがて作家となる珠の書く軸は、庶民の生活に根ざしていくのだろうということを、予感させる。

 作者の用意した布石の大きなものといえば、足袋を繕うという行為だ。かなり先の話になるが、珠のモデルの宇野千代は晩年、枯れかけた桜の木を修復するという大事業を行う。傷んだものを補修し、再び生かしていく。そういう意味では、数々の男女関係のもつれや別れも、宇野千代という人の人生を形づくるものだったのかもしれない。

 岩国のリョウ(国仲涼子)も珠の子供時代の着物を旅行鞄に仕立て直している。このように、足袋や着物や襦袢をしっかり繕うことを繰り返し描くことには意図があるだろう。衣服を繕い、住居をリノベーションし、物を大切に使い続ける。いまの世界が目指す“持続可能な生き方”にも通じる。宇野千代が朝ドラのモデルに選ばれたことは、彼女の奔放な生き方を受け入れるということと同時に、物事を修復し、再生させながら長く生きていく象徴としてもふさわしいからではないか。

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