『VIVANT』最終回直前で示された最大の“謎” “とてつもない冒険”が意味するものとは
11月1日に放送された『VIVANT』(TBS系)第23話では、番組冒頭で今作が実在の人物、団体、事件と無関係であると明言し、劇中の描写は「創作上の設定」で、「暴力や国家間の対立を助長する意図」を否定した。その上で、次なる冒険への展開が示唆された。
シンシーに自宅を襲撃された乃木(堺雅人)は、薫(二階堂ふみ)とジャミーン(本間さえ)を救うべく現場へ急行する。別人格“F”の助言で最悪の事態を察知した乃木は、敵味方の度肝を抜く“自爆”覚悟の作戦を決行する。
最終話直前の第23話は、「国益と私情の間で引き裂かれる個人」という今作のテーマに対する回答でもあった。Fに挑発されたことで、ハン(宮下今日子)は乃木に報復する。司令である櫻井(キムラ緑子)は乃木が薫を救出することを認めたが、それはジャミーンを守るためでもあり、国益につながる核融合技術を保全する目的があったと考えられる。乃木は薫たちの前で発砲し、自身が別班であることを明かした。
バルカに滞在していた薫について、特殊機関に所属していたり、国家的な使命を帯びているなどの考察もあったが、一般人という結論で落ち着いた形だ。目の前で人が殺される場面を目にしたら、それが自分たちを守るためだと理解しても、簡単には受け入れられないだろう。乃木との関係を考え直したいという言葉は薫なりの誠実さといえる。
別班は非公式の組織であり、その任務は極秘である。回想シーンで、野崎(阿部寛)の「別班であることを漏らせば命の保証はありません」という台詞もあったが、知ってしまった薫は消されてしまうのかという心配がよぎる。あるいは、乃木は別班から外されてしまうかもしれない。ノコル(二宮和也)の「つらいな。別班は」という一言に実感がこもっていた。
別班の任務であれば、「規律の遵守」を内面化する乃木にとって服従するのが当たり前で、乃木自身はどうするかを決める立場にない。なので、薫との関係は薫の一存にゆだねられている。結果的に縁結びの効能があったわけだが、一歩間違えれば薫自身もどうなるかわからないという意味で、ややホラーな展開でもあった。
第23話では、生存が確認されたベキ(役所広司)と乃木の対面があった。あらためて時系列で確認すると、乃木がベキたちを撃ったタイミングで、黒須(松坂桃李)たち別班員が拉致されていた。そこにはシンシー潜入をもくろむ野崎の画策があったわけだが、同時に野崎は乃木と示し合わせて、寛道(井上順)に会ってベキをかくまう段取りをつけており、ギリギリまで日本に滞在。その後、エルサレム経由でゴルバドへ渡っている。画面に映らないところで事態がめまぐるしく進展するのは『VIVANT』の作品としての特徴である。
乃木はベキたちの急所を外しており、黒須たちを撃ったときと同じトリックを堂々と繰り出すのは視聴者の盲点を突いたシナリオといえる。乃木がベキたちを生かしたのはノコルの補佐やバルカのためだったが、そこに肉親の情がはたらいていると考えることは可能である。
チンギス(バルサラハガバ・バトボルド)がベキに感謝し、ベキがそれに応える感動的な場面を挟んで、乃木がベキに確認したかったのはエリシャ(マナフ・ダダショフ)の核融合技術とジャミーンのことである。宮藤官九郎と組んだNetflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』も好評な役所広司による回想シーンは、滋味あふれる語り口によって引き込まれる映像になっていた。
詳細は本編に譲るが、ベキたちは核融合技術のことを知らず、アディエル(Tsaschikher Khatanzorig)がエリシャからことづかったメッセージを探るため、乃木たちは、エリシャの身柄を監禁する情報ブローカーのタイラン(Mirza Aghabayli)と接触する。“ブルーウォーカー”太田梨歩(花岡すみれ)とAIハヤト(声・高山みなみ)の共闘がありつつ、エリシャは乃木にアディエルとの会話の内容を伝えた。
前話の放送後に「ベキがジャミーンを家族から引き離したのは、一緒にいることで起きる事態を防ぐためではなかったか」と考察した(※参考:『VIVANT』“野崎”阿部寛はこのまま退場するのか “ベキ”役所広司の生存から今後の展開を考察)。ジャミーンを引き離したのはエリシャ自身の意志だったが、「この子と私がふたたび会ったとき、世界に混乱が巻き起こる」というエリシャの言葉には、ジャミーンが保有する核融合のデータと、その意味を理解するエリシャ自身を引き合わせないことで、技術の流出・悪用を防ぐ意図があったと考えられる。人類の命運を左右する情報がジャミーンの体内に埋め込まれていたことは予想外だったが、その情報もアディエルに隠された。
情報漏洩をガードする黒須の努力もむなしく、エリシャとの会話はハンとリュウ(堺雅人)に聞かれており、タイランは情報を日本側に売った後で、別班員である乃木と黒須をシンシーに売り渡す腹黒さを見せつける。声を担当する若本規夫らしい悪役のキャラ作りが光っていた。ただし、本当に重要な部分は聞かれておらず、ここはエリシャの周到さが上回った。
乃木がエリシャから伝えられたのは、ある種の啓示あるいは預言といえるだろう。「とてつもない冒険」では、動物的直観力、人類の持つ知力や精神力など全ての力が試され、苦境を共にする仲間が必要な「時間との戦い」でもある。真実の扉を開くカギを持っているのはジャミーンで、ヘブライ語、英語、トルコ語を組み合わせた暗号のようなメッセージを乃木は脳の神経回路に刻んだはずだ。
時間との勝負ということで、残り1話で人類の英知を総動員したスペクタクルが繰り広げられる可能性はある。人間の善悪を見抜くジャミーンが、真実を明かす相手を見極めるのだろうか。子どもに地球の運命を託していいのかという戸惑いはあるものの、そんなことを言ったら、AIに人格をモーフィングされ、一人三役を強いられ、本編終了後の告知映像に駆り出される堺雅人はどうなんだと思うし、野崎はここで退場なのかという疑問も含めて、全般的に『VIVANT』は無茶な要求をしがちではある。
アディエルが隠した核融合技術のデータはどこにあるのか? バルカから5日で往復できる距離といえば、飛行機を使えばほぼ世界中が対象になるので、設定上はどこにあってもおかしくない。架空の国であるバルカとゴルバド以外に、撮影が行われたアゼルバイジャン、モンゴル、タイが有力で、シンシーの関係で中国や「ノアの方舟」関連でアララト山のあるトルコとアルメニアも候補に挙がる。もちろん日本も入るだろう。第1話のアディエルの「日本人には世話になっているからな」の台詞から、ベキや薫を通じてゆかりのある日本に隠した可能性も考えられる。第1話で死んだキャラクターが最終話の謎を生み出すのは、一つの謎の解決が別の謎につながる『VIVANT』らしい展開である。
■放送情報
日曜劇場『VIVANT』第2シーズン
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、山中崇、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、内野謙太、花岡すみれ、本間さえ、二宮和也、井上順、林遣都、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、宮下今日子、Tanapak Jongjaiphar、濱田岳、坂東彌十郎、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
プロデューサー:飯田和孝
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/
公式X(旧Twitter):@TBS_VIVANT
公式Instagram:tbs_vivant
公式TikTok:vivant_tbs























