パトリック・スチュワートの訃報にイアン・マッケランら追悼 その生涯と功績を振り返る

【追悼】パトリック・スチュワートの生涯

 またしてもこの世から名優が旅立ってしまった。『X-MEN』シリーズのプロフェッサーX役や、『スタートレック』シリーズのピカード役で知られるイギリスの俳優サー・パトリック・スチュワートが2026年10月28日(現地時間)に亡くなった。86歳だった。

 長年の広報担当ケリー・ブッシュ・ノヴァクを通じて、本人の公式SNSで発表された家族の声明によると、アルツハイマー病とレビー小体肩認知症との短くも痛切な闘病の末、最愛の妻に看取られながら米カリフォルニア州ロサンゼルスにある自宅で息を引き取ったとのこと。最期の日々は家族や友人に囲まれ、生演奏の音楽や祈り、涙と笑いに包まれていたとも綴られている。

パトリック・スチュワート公式X

 また、家族は献花の代わりに、アルツハイマー病研究と介護者支援への寄付を呼びかけている。スチュワートの病との闘いはこれまで公表されてなく、この声明で初めて明らかになった。妻は2013年に結婚した歌手のサニー・オゼル。そして最初の結婚でもうけた息子ダニエル、娘ソフィアが遺された。

 そして、『スタートレック』や『X-MEN』という二つの巨大フランチャイズの共演者たちから、次々と追悼の言葉が寄せられている。本稿ではその言葉を紹介しながら、とりわけ彼の親友として知られていたイアン・マッケランから寄せられた美しい追悼を軸に、スチュワートの60年に及ぶキャリアを少し振り返りたい。

イアン・マッケラン公式X

ヨークシャーから王立シェイクスピア劇団へ

 スチュワートは1940年7月13日、イングランド北部ウエスト・ヨークシャーの町ミルフィールドに生まれた。母は織物工場で働く織工、父は軍人という労働者階級の家庭で育ち、地元の中等学校在学中に芸居への出演をきっかけに演技に目覚めた。

 その後、ウェイクフィールド市からの奨学金を得て演技を学び、1959年にブリストルのシアター・ロイヤルで上演された『シラノ・ド・ベルジュラック』でプロの舞台を踏む。初めての本格的な仕事はシェフィールドの劇場だったと、本人は生前に振り返っている。

 1960年代半ばには王立シェイクスピア劇団(RSC)に加わり、長くその中心的な劇団員として古典劇の舞台に立ち続けた。テレビデビューは1967年、英国の長寿ソープオペラ『コロネーション・ストリート』だった。1984年にはデヴィッド・リンチ監督の『デューン/砂の惑星』や『レディ・ジェーン/愛と運命のひと』にも出演しているが、当時はまだ「英国の舞台俳優」の一人にすぎなかった。

 このRSC時代に出会ったのが、のちに生涯の親友となるイアン・マッケランだ。彼は、追悼文の冒頭でスチュワートの人間性の根底にあった故郷ヨークシャーについてこう書いている。

「何よりもまず、パトリックという人間を形づくっていたのは、イングランド北部の誇り高き州、ヨークシャーに生まれ育ったことでした。彼は最期までその故郷を愛していました。それは彼の訛りのある声にも、思ったこと、感じたことを率直に告げる厳しいまでの誠実さにも表れていました。ヨークシャーの男は、半端な真実や、大事な問題から目をそらすことを良しとしません。彼は感情を隠さない人でした。だからこそ頼りになり、尊敬すべき人であり、そして私にとっては愛する人だったのです」

 転機が訪れたのは1987年だ。伝説的SFドラマの続編『新スタートレック』で、エンタープライズDの艦長ジャン=リュック・ピカード役に押擢されたのである。配役発表時、地元紙『ロサンゼルス・タイムズ』は彼を「無名の英国人シェイクスピア俳優」と紹介した。データ役のブレント・スパイナーがこの言葉を掲げた警告看板を作り、楽屋の上に飾ったという逸話は、いまもファンの間で語り継がれている。

 この役を受けるか迷っていた頃のことを、マッケランは追悼文でこう振り返っている。

「最初の鮮烈な記憶は、その数年後のことです。ロンドンの中心街でばったり会った彼から、『スタートレック』の主役を引き継がないかという話が来ていると打ち明けられたのです。『でもパトリック、イギリスでの舞台のキャリアを考えてごらんよ。本当にハリウッドで何年も埋もれてしまう危険を冒したいのかい?』と私は言いましたが、それでも彼はその危険を冒しました。そして本当にありがたいことに、彼がそうしてくれたおかげで、熱心なトレッキーたちだけでなく、映画と演劇の観客までもが恩恵を受けたのです」

 理知的で外交を重んじ、シェイクスピアを引用しながら乗組員を導くピカードは、拳で解決する従来のヒーロー像を塗り替えた。番組は1994年まで7シーズン続き、スチュワートは自らエピソードの監督も務めた。その後も『ジェネレーションズ/未来への過去』(1994年)から『ネメシス/S.T.X』(2002年)まで劇場版4作で艦長を演じ、2020〜2023年には配信ドラマ『スタートレック:ピカード』で約20年ぶりにこの役へ戻った。最終シーズンでは『新スタートレック』のレギュラー陣が再集結し、ファンを泣かせた。

「彼は家族だった」スタートレックの仲間たちの言葉

 初代カーク船長を演じたウィリアム・シャトナーは、「なんとつらい1週間だったことか」と書き出した。同じ週には初代チェコフ役のウォルター・ケーニッグも亡くなっている。シャトナーはスチュワートを友人であり同僚であり、素晴らしい俳優だったとし、舞台からエンタープライズ号のブリッジまで、あらゆる仕事に知性と気品と深い人間性をもたらしたと称えた。そして「ピカード艦長は私たちの最良の部分を体現していた。それを演じた男もまた同じだった」と言葉を贈っている。

 ライカー副長役で、シリーズの監督も多く手がけたジョナサン・フレイクスは、この地球上で最も多く共演し、最も多く演出した相手がスチュワートだったと語り、「彼は永遠に私と共にいる」と結んだ。ジョーディ役のレヴァー・バートンは「彼は家族だった」と言い切り、知り合ったナイトやデイムの中で彼は根っこのところで一番お茶目な人だったと、ユーモアを交えて振り返っている。ウェスリー役のウィル・ウィートンは、二人の写真に「ご無事で、艦長」(Godspeed, Captain.)とだけ添えた。

 初代スールー役のジョージ・タケイは、ピカードがエンタープライズ号をかつてない場所へ導き、人類の明るい未来を夢見る次世代の星空ファンを鼓舞したと称え、「天で安らかに、艦長」と記した。『ピカード』でセブン・オブ・ナインを演じたジェリ・ライアンは、思い出の写真とともに「ああ、これは胸に応える。安らかに、パトリック」と投稿している。

 制作陣からは、『ピカード』共同クリエイターのアキヴァ・ゴールズマンが、書かれた言葉を血肉に変える「最も稀有な錬金術師」だったと称えた。最終シーズンのショーランナー、テリー・マタラスは笑顔の写真に「おお艦長、我が艦長」(Oh Captain, my Captain.)とホイットマンの詩を重ね、そこにいるだけで部屋を支配できる人だったと語っている。

 『新スタートレック』と『X-MEN』の両方で共演したファムケ・ヤンセンは、二つの世界をつなぐ心のこもった声明を寄せている。

「パトリックは伝説でした。偉大な人の一人でした。私は数十年にわたって彼と共に仕事をするという喜びと栄誉に恵まれました。最初は『新スタートレック』で、ピカード艦長を演じる彼の相手役カマラとして。のちには『X-MEN』シリーズで、プロフェッサーXを体現するパトリックのもと、ジーン・グレイとして。パトリック、あなたがいなくなるのは寂しいけれど、決して忘れません」

「あなたを生涯恋しく思う」X-MENの仲間たちの言葉

 2000年、スチュワートは『X-MEN』で、ミュータントと人類の共存を説くテレパス、プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアを演じる。宿敵マグニート役はマッケラン。RSC時代からの旧友がスクリーン上で対峙するこの配役は、アメコミ映画史上屈指の名コンビとなった。

 『X-MEN2』(2003年)、『X-MEN:ファイナル ディシジョン』(2006年)、『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年)とシリーズの柱を担い、2017年の『LOGAN/ローガン』では、老いて力を制御できなくなったエグゼビアを演じ、ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンとともに役を終えた。ベルリンのプレミア上映で、ジャックマンがラストシーンでスチュワートの手を握り、二人で涙を流したという逸話は、17年に及ぶ絆を物語っている。その後もMCUで同役に復帰し、おそらく12月公開予定の『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』が、エグゼビアとしての最後の出演となる。

『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』に出演しているイアン・マッケラン(写真:ALBUM/アフロ)

 ウルヴァリン役として長く共演したジャックマンは、二人の写真とともにInstagramに短い言葉を投稿した。この投稿は短時間で100万件以上の「いいね」を集めている。

「今日、私たちは舞台と映画の偉大な一人を失った。そして私にとっては、かけがえのない友であり、素晴らしい人だった。彼からは本当に多くのことを学んだ。パトリック・スチュワート、この先ずっと、あなたを恋しく思うだろう」

 初代ミスティーク役で、『ドゥームズデイ』でも共演するレベッカ・ローミンは、Instagramに動画を投稿した。『スタートレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』にも出演する彼女らしく、「ミュータント仲間」と「宇宙艦隊の仲間」、二つの顔で彼を偶んでいる。

「親愛なる友、パトリック・スチュワートが亡くなったという、とても悲しい知らせを聞いたところです。この25年間、彼を知ることができ、そしてミュータント仲間として、また宇宙艦隊の仲間として、この25年間ずっと彼のそばにいられたことに心から感謝しています。彼は本当に愛すべき人で、最高に面白くて、いたずら好きで、信じられないほどのユーモアのセンスがありました。そして、いつも劇場の一番後ろの席まで届いたあの朗々とした声。古典の訓練を積んだシェイクスピア俳優の大家なら誰もが身につけなければならないものですが、それは私にとってずっと憧れでした。ご家族にお悔やみを申し上げます。大切な友人がいなくなって、とても寂しくなります。安らかに、パトリック」

 ビースト役のケルシー・グラマーは、スチュワートがゲスト出演した『フレイジャー』での演技を番組史上屈指の名演と称え、「素晴らしい人だった。本当に好きだった」と追悼した。初代『X-MEN』の脚本家デヴィッド・ヘイターも、「思い出をありがとう、プロフェッサー」と言葉を寄せている。

 また、マーベル・スタジオも公式Xで声明を発表した。

「マーベル・スタジオ一同、サー・パトリック・スチュワートの訃報に深い悲しみを覚えています。サー・パトリックは並外れた気品と知性、そして人間味をもってプロフェッサー・チャールズ・エグゼビアに命を吹き込み、『X-MEN』から『LOGAN/ローガン』、そして『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』に至るまで、何世代にもわたるファンにとってのこのキャラクター像を決定づけました。彼は類まれな才能の持ち主であり、寛大な協力者であり、真の紳士でした。妻のサニー、お子さんたち、ご友人、そして彼の芸術によって人生に触れられた世界中の数え切れないファンの皆さまに、心よりお悔やみ申し上げます」

 マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギは、米Varietyに声明を寄せ、初代『X-MEN』の現場での出会いを振り返った。

「初代『X-MEN』の撮影現場で、初めてサー・パトリック・スチュワートを目にしたときのことは決して忘れません。唯一無二のピカード艦長として長年親しんできた人を前に、私は畏敬の念に打たれました。そして実際の彼は、スクリーンで見てきたすべてを備え、さらにそれ以上の人でした。聡明で、魅力的で、温かく、寛大で、静かな強さと威厳を備えていたのです。カメラの外では、彼はいっそう素晴らしい人で、実に鋭いユーモアのセンスを持っていました。彼を知り、共に仕事ができたことは本当に光栄でした。彼の遺産は、数十年にわたる比類なき仕事の中だけでなく、彼が導いた本当に多くの人々の中に生き続けています。深く惜しまれることでしょう」

舞台への愛、マッケランとの友情、そして最後の役

 ハリウッドのスターとなっても、スチュワートは舞台を離れなかった。2007〜2008年にはロンドンとニューヨークで『マクベス』を演じ、そのブルックリン公演の時期に、のちの妻サニー・オゼルと出会っている。2009年にはロンドンのウエストエンドでマッケランと『ゴドーを待ちながら』に共演し、2013年にはブロードウェイで同作とピンターの『誰もいない国』を交互に上演して喝采を浴びた。同年にはサニーと結婚、式で司式を務めたのは長年の友マッケランだった。

 2010年には演劇への貢献によりナイトの称号を受けた。声優としても『アメリカン・ダッド』『ファミリー・ガイ』や映画『テッド』などで親しまれ、2023年には回想録『Making It So』を出版している。そして2026年のインタビューでも引退は考えていないと語っており、最後まで俳優であり続けた。

 マッケランは追悼文の後半で、友の舞台と映画にわたる功績、そして生涯忘れなかった故郷への想いをこう綴っている。

「観客は、彼が国際的な名声を生かして、数々のヒット映画(もちろん『X-MEN』も)に主演し、さらにストラトフォード・アポン・エイヴォン、ロンドンのウエストエンド、そしてブロードウェイで、シェイクスピア、イプセン、アーサー・ミラー、ピーター・シェーファー、ピンター、ベケットらによる偉大な古典劇に主演する姿に驚嘆しました。

アメリカは彼が選んだ第二の故郷でした。そこで彼は最愛のサニーと出会い、彼女は病める時も健やかなる時も、良い時も苦しい時も、彼を支え続けました。それでも彼は自らのルーツを決して捨てませんでした。大西洋の両岸で同世代の誰よりも尊敬され、愛された俳優である彼にとって、最も誇りとした功績は、ヨークシャーのハダースフィールド大学の総長に任命されたことだったのです。

彼の最後の演技となる『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』は、まだ公開を待っています」

 スチュワートがチャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX役で出演する『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』は、12月18日に日米同時公開される。

参考
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/patrick-stewart-dead-star-trek-x-men-1236742932/
https://deadline.com/lists/patrick-stewart-dead-reactions-star-trek-x-men-avengers-doomsday/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/patrick-stewart-dead-tributes-x-men-marvel-1236743118/
https://variety.com/2026/tv/news/william-shatner-star-trek-patrick-stewart-picard-tributes-1236934479/
https://www.rollingstone.com/tv-movies/tv-movie-news/patrick-stewart-celebrities-reacts-tributes-1235650051/
https://x.com/WilliamShatner/status/2115902238921228332
https://www.instagram.com/p/DfGAWMJKT0z/
https://x.com/MarvelStudios/status/2115896865803870592
https://www.instagram.com/thehughjackman/

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