地上波不成立からNetflixへ 宮藤官九郎が明かす『俺のこと、なんか言ってた?』誕生秘話

宮藤官九郎が明かす、SNS社会への違和感

 『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)や『木更津キャッツアイ』(TBS系)、『不適切にもほどがある!』(TBS系)など、長年にわたりタッグを組んできた脚本家の宮藤官九郎とプロデューサーの磯山晶。2人が新たに手がけたNetflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』では、「かつて一世を風靡したものの、今や世間から忘れ去られた大物俳優」という主人公の目線を通して、芸能界やドラマ制作の泥臭い舞台裏、そして現代人が抱える“承認欲求”というモチーフが描かれている。実は地上波で企画されながらも不成立となり、『不適切にもほどがある!』を経て結実したという本作。その誕生秘話から、役所広司×濵田雅功という異色キャスティングの裏側、SNS社会への率直な違和感、さらには配信ドラマ特有の執筆スタイルに対する葛藤まで、宮藤が“本音”で語ってくれた。

『ふてほど』と地続きの『俺のこと、なんか言ってた?』

――まず、この企画がスタートした経緯から教えてください。

宮藤官九郎(以下、宮藤):さっきプロデューサーの磯山さんと話していて思い出したんですけど、もともとは2021年か2022年頃に、一度地上波でやろうとして考えた企画だったんです。2人で「やりたいね」って話していたんですけど、当時はいろいろと事情があって「ちょっと今これは地上波ではできないね」ということになってしまって。

――地上波では不成立になってしまったんですね。

宮藤:そうなんです。それで「じゃあ違うのを考えましょうか」と言って生まれたのが、『不適切にもほどがある!』(以下、『ふてほど』)だったんです。で、『ふてほど』が終わった後に、「あの企画、配信だったら成立するかもしれないね」という話になり、動き出したのが始まりでした。

――地上波で成立しなかった理由は、どこにあったとお考えですか?

宮藤:今思えば、地上波で広く届けるには少し企画がマニアックだったのかなと思います(笑)。かつて誰もが知っていた子役出身の大物俳優が世間から忘れ去られて、そこからどん底を味わった上で「2回目の俳優人生」を獲得していくストーリーなので。自分が普段、映像やエンタメの業界にいて感じる理不尽さや「もっとこうなればいいのに」「俳優やスタッフってこうだよな」というモヤモヤや面白さを、忘れ去られた俳優という視点だからこそ毒も含めて言える、という構造なんです。だから時期としても『ふてほど』と考えていたことが地続きだったんだと思います。

――作中では、役所さん演じる主人公・高瀬川玄が業界の慣習やネット社会に対して切り込んでいくシーンが印象的です。宮藤さんご自身の思いも重なっているのでしょうか。

宮藤:僕自身の主張というよりは、「多くの人が思っていることなのに、なんであれを言ったら炎上するんだろう?」という違和感でしょうか。正論を言っているはずなのに「偉そうに」と叩かれてしまったり、例えばバラエティ番組で「ロケ弁がどうこう」って冗談めかして言っただけで「用意してもらえるだけありがたいと思え」って非難されたり……。特権意識で言っているわけじゃなく、自分の身の回りの話をしただけなのに、どうしてこんなに排除される方向に行くんだろうって。

――宮藤さんご自身は、普段SNSなどはご覧になるんですか?

宮藤:正直、見方がよく分からないアナログ人間で……。いざ見ようと思って頑張ってみても、「ログインしてください」とか出てきちゃう(笑)。それでもなんとかたどり着いて覗いてみたら、腹が立つ書き込みばかりが目について、「もういいや!」って履歴を消す……というのを繰り返しています。

ーーそうなんですね(笑)。

宮藤:新しい作品が放送された直後は不安になって検索しちゃう時期もありました。でも好意的な意見ばかり見ていると「身内しか観てないんじゃないか」と不安になるし、否定的な意見を見て凹む自分も嫌なので、なるべく見ないようにしていますね。

――今作のタイトル『俺のこと、なんか言ってた?』は、まさに現代的な“承認欲求”を象徴するような言葉ですね。

宮藤:企画の最初の段階では『誰も知らない大物俳優』という仮題だったんです。でも、もっと踏み込んだタイトルにしたいなと思ったときに、舞台の楽屋とかで「俺のこと、なんか言ってた?」って周囲の評価を気にしている役者ってすごく多いなと思い出して。「昨日誰々が観に来てたよ」「俺のことどう言ってた?」みたいな。みんな自分がどう思われているか知りたいんですよね。以前だったら「自分の評価を気にする=自意識過剰で恥ずかしいこと」とされていたのが、「承認欲求」という言葉が定着したことで、みんなが堂々と持つ感情になった気がしていて。一般の方もフォロワー数や「いいね!」の数で満たされる時代ですし、これは役者だけの話ではなく、誰もが抱えている感情だなと思ってテーマに据えました。

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