『ブラッサム』金子大地が新たな飛躍 『おっさんずラブ』などで演じてきた感情の生々しさ

金子大地、『ブラッサム』で新たな飛躍へ

 『鎌倉殿の13人』で演じた源頼家にも、人の上に立つ者としての誇りと、若者の傷つきやすさが同居していた。偉大な父・頼朝(大泉洋)の跡を継いだものの、大人たちは思うように動かず、何をしても父と比べられる頼家。金子は、その強気な態度に、周囲に認められたいという焦りをにじませた。やがて妻や子を奪われ、母・政子(小池栄子)に怒りをぶつける場面では、信じようとした人々に裏切られた絶望があふれる。その激しい感情の奥に、頼れる相手を失った青年の孤独まで感じさせる演技が、胸に迫った。

 その繊細さは、感情が激しく噴き出す場面だけに表れるものでもない。『晩餐ブルース』で演じた佐藤耕助は、料理人の仕事を辞め、自身も挫折を抱える青年だ。仕事に疲れた旧友・優太(井之脇海)と食卓を囲むなかで、相手の小さな変化に気づき、気遣う様子を、金子は視線や表情で伝えている。『ブラッサム』の祝言の席で珠を気にかける保にも、そうした演技の細やかさを感じた。

 現時点での保は、珠を気遣い、その選択を肯定する、優しく誠実な青年。ただ、珠のモデル・宇野千代の歩みをたどると、その先には複雑な関係も待っている。千代は、最初の嫁ぎ先の夫の弟にあたる藤村忠と後に結婚。しかし、忠との結婚生活のさなかに作家・尾崎士郎と恋に落ち、彼との同棲を始め、やがて忠とは離婚しているのだ。

 史実を下敷きにした物語が、同じ道筋をたどるとは限らない。それでも、珠を見送った保が、今度は彼女と人生を共にする立場になったとき、どんな願いを抱くのだろう。優しくありたい気持ちだけでは追いつかない瞬間もあるかもしれない。第8回でこちらの心を捉えた青年の内側から、まだ見えていない感情がこぼれるとき。その揺れを金子大地がどう演じるのか、珠と保のこれからを見つめていきたい。

■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる