『踊る大捜査線 N.E.W.』のエンジンはどこにある? 14年ぶりの復活が映し出す“祝祭”の正体

『踊る大捜査線 N.E.W.』のエンジンを問う

映画ではなく、巨大イベント

 では、物語の代わりにこの映画を動かしているものは何か。それは、巨大なイベントとしての熱量だ。

 スクリーンには、懐かしい顔が次々に現れる。スリーアミーゴス(北村総一朗、斉藤暁、小野武彦)は健在で、元刑事課長の魚住(佐戸井けん太)は、なんと動画配信者に転身。木島丈一郎(寺島進)、緒方薫(甲本雅裕)、篠原夏美(内田有紀)、爆発物処理班の眉田(松重豊)といったおなじみの面々も顔をそろえる。さながら『踊るだョ!全員集合』である。

 『踊る』がスタートした1997年のフジテレビといえば、台場の新社屋に移転し、東証一部に上場した年。そう考えると、『N.E.W.』の正体は映画というより、『27時間テレビ』のような巨大イベントと捉えるべきだろう。語るべき物語があるから集まるのではない。集まること自体が目的なのだ。90年代フジテレビの祝祭の文法が、いまもそのまま息づいている。

 ただし、祝祭を取り巻く状況は、あの頃とはまったく違う。2025年、いわゆるフジテレビ騒動によって企業姿勢が問われ、経営にも少なからぬ支障をきたした。社長・会長は辞任に追い込まれ、同じ年の6月には、BSフジ社長を務めていた亀山も退任している。90年代の祝祭の記憶は、いまやフジテレビにとって単なる郷愁以上の意味を持っているのかもしれない。

 象徴的なのが、クライマックスの舞台だ。青島が犯人を追い詰めるのは、2026年2月に営業を終えたイマーシブ・フォート東京。90年代末から00年代にかけてお台場の賑わいを象徴した商業施設・ヴィーナスフォートの跡地を暫定利用していた施設だ。かつての祝祭空間の跡地で、過去の記憶を再生する。これ以上、本作の本質を言い当てた舞台はないだろう。

 青島は、“未来の記憶”が見えるという「記憶の部屋」に入り、そこで走馬灯のように過去の名場面を目にする。だが、そこに映る人々の多くは、もうシリーズに戻ってこない。室井は『生き続ける者』で亡くなり、和久さんを演じたいかりや長介は故人となり、青島が何度電話をかけてもすみれ(深津絵里)にはつながらない。この映画の祝祭は、その不在をめぐって組織されている。

 懐かしい顔ぶれ、おなじみのテーマ曲、名場面の再現。劇場の笑いも涙も、そのほとんどが過去の記憶に負っている。だが、思い出の推進力は、使うほどに目減りしていく。シリーズが続くほど、スクリーンに戻ってこられない人は増えていく。新しい物語というエンジンを積まないかぎり、このシリーズはいずれ失速してしまう。

 スクリーンには最後、「THE ODORU LEGEND STILL CONTINUES」の文字が浮かんだ。果たして『踊る』はこの先、どこに向かうのか。それは、「お前のエンジンはどこにある?」という問いに、作り手がどう答えるかにかかっている。

■公開情報
『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』
全国公開中
出演:織田裕二、趣里、白洲迅、佐々木蔵之介、増田貴久、野呂佳代、玉井詩織(ももいろクローバーZ)、藤吉夏鈴(櫻坂46)、齊藤なぎさ、佐藤二朗、ユースケ・サンタマリア、真矢ミキ、水野美紀、甲本雅裕、寺島進、伊藤淳史、滝藤賢一、松重豊、松下洸平、斉藤暁、小野武彦、北村総一朗
監督:本広克行
脚本:君塚良一
プロデュース:亀山千広
音楽:松本晃彦
主題歌:織田裕二「Love Somebody(CINEMA Version)」(ユニバーサル ミュージック)
配給:東宝
©2026フジテレビジョン BSフジ ビー・エー・シー
公式サイト:https://odoru.com/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/odoru_movief
公式Instagram:https://www.instagram.com/odoru_project
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@odoru_project

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