『風、薫る』看護の“線引き”の難しさが問われる “シマケン”佐野晶哉の病状のゆくえは

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第123話は、最終回も目前というのに、まだまだ気になることが山積みだ。

 りん(見上愛)と直美(上坂樹里)の働きかけもあり、適切な看護ができる者に“免状”が授与される「東京府看護婦規則」が制定されることになった。“免状”を得る方法は2つ。1つは看護婦試験に合格すること。看護法全般、解剖生理学、伝染病予防消毒法の学説試験および実地試験の双方に合格することが定められている。まだ看護を学びたてのセツ(村上穂乃佳)が「随分ややこしそうだね」とこぼしてしまうほど、しっかりとした試験だ。もう1つの方法は、2年以上看護を職業にしているという医者の証明を得ること。これがあれば試験は免除され“免状”をもらえる。看護の経験が長いりんや直美は後者の方法で、名実ともにトレインドナースとして認められることになるだろう。

 問題はナースになろうと再び奮起しているツヤ(東野絢香)である。ツヤは帝都医大病院で働く看病婦だったが、ナースとしての勉強と仕事の両立ができずに、患者に解熱剤を投与し忘れたことが理由で解雇された過去がある。直美が帝都医大病院にツヤの実務証明書を発行してもらおうと問い合わせてみるが、やはり断られてしまった。

 その一方で、金儲けが目当ての「親和派出看護婦会」を作った寛太(藤原季節)は、看護資格のない女性たちの“免状”をもらうことに成功していた。「医者の中にも話の分かるやつがいるもんでね」とニヤリと笑う寛太は、医者にお金を払うことで証明書を書いてもらったらしい。規則によって寛太が作ったような組織は解散に追い込まれるはずだったが、ずる賢い奴ほど制度の“穴”を見抜き、利用してくるのである。

 現状を知ったりんと直美は、黙ってはいられず再び柳生(中村倫也)の元へ。“免状”を持っていても実力を伴わないナースが数多く生まれてしまうのをなんとか防ごうとするが柳生は「最初の混乱は想定内だ」と素っ気ない。規則を作るということは線引きをするということである。線引きの“前”と“後”はしっかりと区別ができても、その線の“上”は曖昧になりがちだ。ツヤは線の上に乗ってしまった者で、寛太はその線の上ギリギリを狙った者なのである。「ツヤのように努力している人が報われるように」と考えるりんや直美の気持ちは理解できるが、柳生から「では君たちならどこで線を引く?」と問われると困るのも事実。「万能の策はない」という柳生が重くのしかかってくる。

 柳生のところでは懐かしい再会も。りんと直美が帰ろうとすると帝都医大病院でツヤと切磋琢磨していたヒデ(池田朱那)が姿を表したのだ。見習いのときに「どこまでが看護なのか」と悩み、辞めた彼女はその後、なんと医者になったらしい。11年かけて勉強し、看護の世界へ戻ったツヤと、勉強を重ねて3回も試験を受けて医者になったヒデ。りんと直美が懸命に植えた“タネ”が、時間はかかったが着実に芽吹いていることが感じられる。

 そして「恵風看護婦会」では、必死に勉強をするツヤをセツがじっと見つめていた。今度は、ツヤがその姿をもってセツに“タネ”を植えているのかもしれない。バーンズ(エマ・ハワード)、いやもっと遡ってナイチンゲールから始まったこの“継承”は現代の看護にも通じるものがあるだろう。

 そんな中、りんたちのもとへ新たな派出看護の依頼が舞い込んでくる。何やら言いにくそうな顔のしのぶ(木越明)が告げた患者の名はシマケン(佐野晶哉)だった。どうやら最近胃がんの手術を受けたらしい。身近な人の看護は看護する側の負担も大きいが、りんは覚悟を決め、彼の家へ。そこにはすっかり弱りきっていたシマケンの姿があった。シマケンが病魔に負けないよう、祈るばかりである。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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