『君の好きは無敵』は“好き”を諦めない物語だった さまざまな愛を肯定した最終回に
それを象徴するのが、テキトリアン共和国での出来事だ。世界遺産の城砦が崩れ、カーニバルの中止が決まったテキトリアン共和国。意気消沈する現地の人々にチュエラのぬいぐるみを無料で贈ろうとする瀬尾に、いま必要なのは城砦を修復するためのお金や人手ではないかと大三島は疑問を呈する。もちろん、現実的な支援は欠かせない。それでも杏奈は、くじけそうなときに人を支えてくれるのは、お金だけではないと瀬尾に賛同。MERRYをはじめとする同業他社に協力を仰ぎ、たくさんのキャラクターを現地の人々に贈る。
大きな震災が起きたときやコロナ禍でも、娯楽は「不要不急」「不謹慎」という言葉とともに真っ先に遠ざけられた。命や暮らしを守ることを優先すべきという主張はもっともだ。けれど、つらいときだからこそ、人は好きなものを求める。スポーツや音楽、演劇、そしてキャラクター。それらが現実の問題を直接解決することはないかもしれない。でも、くじけそうな心に寄り添い、前を向くきっかけにはなれる。さまざまな会社から贈られたキャラクターを手にした人々の笑顔が、そのことを何より物語っていた。
何かを守るために、自分の「好き」を手放す必要はない。杏奈のコンサルによって、町の小さな洋食店から世界へ進出したキッチン迫田。事業を拡大するなかで、店と料理の味にこだわる迫田(高嶋政伸)と、経営を重視する久美(九条元子)はすれ違っていった。久美はお金に取り憑かれて、変わってしまった。そう思った迫田は、自分だけでも店を守ろうと、久美と別れることを選んだのだろう。
けれど、久美と改めて向き合った結果、それは誤解だったことがわかる。久美もまたあの店とあの味が好きだったからこそ、自分なりに必死に守ろうとしていたのだ。「本当の思いっていうのは、そう簡単には分からないんだな」と語る迫田。もっと早く向き合っていれば、久美への「好き」も、店への「好き」も手放さずに済んだのかもしれない。
迫田の話を受け、杏奈は瀬尾に正直な気持ちを打ち明ける。瀬尾への「好き」があまりにも大きいから、抱え続けていると何かがこぼれ落ちそうで怖いのだと。でも、もう自分の思いをごまかすことはできなかった。杏奈はついに、「自分勝手だけど、言います。好きです、瀬尾さんのことが」と告白する。
だが、思いを伝えても、杏奈の不安が消えたわけではない。その不安を吹き飛ばしたのが、「“好き”って言葉は、言われた相手を無敵にする」という瀬尾の言葉だ。杏奈から「好き」と言われた瞬間、もう怖いものはないと思えた。杏奈への「好き」も、チュエラへの「好き」も手放さない。どちらも抱えたまま、未来に進んでいけるという万能感で瀬尾は満たされていた。そんな瀬尾の「好き」が、今度は杏奈を無敵にする。
これまで抑えてきた分を取り戻すかのように、互いの好きなところを伝え合う杏奈と瀬尾。そんな2人を佐々岡や廣瀬(藤井隆)が見守り、“鬼の目にも涙”を見せる大三島の姿が微笑ましい。
その後、チュエラと新たに生まれた仲間たちは多くの人に愛され、シニカルモルコとまんぷくモルコは双子の姉妹として映画に出演。アーノルドシルベスターの新メンバーとなった麦は鞠子の“推し”になり、迫田は久美のために料理を作る。恋愛だけではなく、さまざまな「好き」の形を肯定してきた本作らしいラストだ。
誰かの「好き」を否定せず、比べず、奪わずに、互いに認め合うことができたなら、この世界は今より少しだけ優しく、平和な場所になるのかもしれない。いつか世界が、誰かや何かを大切に思う「好き」で満たされることを願いたくなる。そして本作もまた、多くの視聴者の心に、新たな「好き」を生み出したのではないだろうか。
■配信情報
火曜ドラマ『君の好きは無敵』
TVer、U-NEXTにて配信中
出演:松本若菜、佐野勇斗、小野花梨、金田哲(はんにゃ.)、中村隼人、白本彩奈、島崎和歌子、藤井隆
脚本:宮本武史
演出:竹村謙太郎、府川亮介、渡部篤史、尾本克宏ほか
主題歌:星野源
プロデューサー:岩崎愛奈
協力プロデューサー:小髙夏実
編成:吉藤芽衣
取材協力:株式会社サンリオ
製作:TBSスパークル、TBS
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kiminosukihamuteki_tbs/
公式X(旧Twitter):@kiminosuki_tbs