『メーデー』が示した“交流”の可能性 『トップガン マーヴェリック』より一歩進んだテーマ
Apple TVからリリースされた『メーデー』は、ライアン・レイノルズとケネス・ブラナーが出演する、軍の航空機によるスカイミッションや、スパイ風の逃亡劇が描かれたアクション大作である。ソ連領内に墜落してしまったアメリカ軍のパイロットが、敵地から祖国へ脱出しようとする過程を描いていく。
劇中で『トップガン』(1986年)への言及があることからも分かるように、本作『メーデー』は冷戦下の1980年代を舞台に、その時代のアメリカ映画が描いてきた航空アクション映画を意識している。だからこそ問題となるのは、われわれがいま、『トップガン』や『トップガン マーヴェリック』(2022年)のようなアメリカ軍の英雄の活躍を、果たして素直に楽しめるのかということである。
現在の世界情勢を鑑みれば、ロシアがウクライナへの侵攻を続ける一方、アメリカもイスラエルとともにイランへの軍事攻撃を行うなど、現実の戦争が各地で繰り広げられている。市民や子どもたちの死傷を含めた、生々しい戦争の現実を報道などで目にしているわれわれは、軍のパイロットを主人公とする物語を、いまハラハラドキドキしながら、純粋なエンターテインメントとして楽しむことができるのだろうか。そこには、現在のエンターテインメント業界が抱えるアメリカ的なヒーロー像の問題があり、同時に、それを受け取るわれわれ自身の問題もある。
だが、本作『メーデー』は、そうした作品とは趣を異にする部分を含む映画でもある。ここでは、そんな本作の内容を検証しながら、この映画が何を描いているのか、そして、そこにどのような新しさがあるのかについて考えてみたい。
1987年、冷戦下のソ連。アメリカ海軍の戦闘機パイロット、“アサシン”ことトロイ(ライアン・レイノルズ)は、極秘任務の最中に敵地であるソ連の大地へ墜落してしまう。そこで彼を救ったのは、アメリカ文化をこよなく愛する元KGBエージェント、ニコライ(ケネス・ブラナー)だった。立場も性格も異なる二人は、ソ連当局の追跡をかわしながら、アメリカへの逃亡劇を繰り広げることになる。
大きな見どころとなっているのが、前半に展開されるスカイアクションである。ここでは、「SR-71 ブラックバード」という高性能の偵察機を使い、主人公がソ連へ向かう極秘作戦が描かれる。SR-71は、高高度を凄まじい速度で飛行することができ、レーダーにも捕捉されにくい。仮に敵機に追跡されたとしても、その圧倒的な速度によって危険な空域から迅速に離脱することを可能にした航空機である。
ところが劇中では、レイノルズ演じる主人公がソ連側の攻撃を受け、射出座席による脱出を余儀なくされる。機体は大破し、主人公はソ連の雪原へと投げ出されてしまう。そこに至るまでの過程が、非常にスリリングかつ迫力をもって描かれている。ブラックバードの黒い機体が放つ不気味な存在感や、それが次第に機能を失い、空中で破壊される様子は、単なるアクションのスペクタクルにとどまらず、ある種の官能的な興奮を呼び覚ます。そんな感覚に身を浸しながら、多かれ少なかれ、ある種の後ろめたさをおぼえるのは、他の戦争アクション映画と共通のものだ。