『まどマギ ワルプルギスの廻天』なぜネタバレ禁止だった? シリーズの衝撃展開を振り返る

 『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズの最新作として、前作から13年ぶりに公開された『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』。同作の公式X(旧Twitter)アカウントでは、“初見の状態”での鑑賞を楽しんでもらうという理由により、9月12日0時までの期限付きで「ネタバレ防止」の呼びかけが行われていた。

 新作映画でネタバレ配慮が求められること自体はそこまで珍しくないが、同作の場合はとくに納得感があるように思われる。つねに“初見の衝撃”を重視してきたシリーズだったからだ。

 まずは原点となった2011年放送のTVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』。今となっては考えられないが、同作は元々“王道の魔法少女もの”として宣伝されていたことがよく知られている。キャラクター原案に『ひだまりスケッチ』で知られる漫画家・蒼樹うめを招き、ファンタジックな魔法少女たちのビジュアルを作り上げたうえ、かわいらしい“マスコット動物”も登場させるという手の込みようだ。

 脚本にニトロプラスの虚淵玄がクレジットされていたため、「普通の魔法少女ものではないはず」という見方もあったが、当時はまだ一般視聴者層にその作風が広く知られていたとは言い難い。

 実際に放送が始まったあとも、序盤ではあまり意外性のない物語が描かれることに。平凡な中学生だった鹿目まどかの前に、謎めいた生き物のキュゥべえや魔法少女の巴マミなどが現れ、魔法少女になるよう勧誘される……というオーソドックスな展開から幕が上がった。

 大きな転換点となったのは、言うまでもなく第3話「もう何も恐くない」だ。同エピソードでは、魔女が誕生しかけている異空間にまどかやマミが入り、戦いを繰り広げるところが描かれた。

 魔法少女の“見習い”としてマミを間近に見ていたまどかは、彼女に憧れる気持ちを口にする。孤独に生きてきたマミは、生まれて初めての仲間ができたことで有頂天になるが、その真っ只中で誕生したばかりの魔女に食われてしまうのだった。

 頼れる魔法少女の先輩だったマミが、あっけなく魔女に命を奪われるという衝撃の展開。しかもその散りざまは間接的な描写ではあるが、異様な生々しさが漂っており、それまでのファンシーな世界観をまるごとひっくり返すようなインパクトがあった。

 こうして同作は、死と隣り合わせの過酷な運命を生きる少女たちの物語へと変貌を遂げ、口コミで大きな話題を巻き起こすことになった。

 さらに第8話「あたしって、ほんとバカ」も、多くの視聴者を驚愕させたエピソードだった。魔法少女になった美樹さやかが、絶望の果てに魔女になってしまうという展開が描かれたからだ。ここまでの描写で薄々真相に勘づいていた人もいたものの、「魔法少女が魔女を生む」という絶望的な設定がはっきりと明かされた意味は大きかった。

 そして極めつけは、第10話「もう誰にも頼らない」だ。ここで描かれたのは、正体不明の魔法少女・暁美ほむらの過去編。彼女がまどかを救うために何度もループを繰り返してきたという事実とともに、魔法少女に課せられた絶望の運命が決定的なかたちで示された。

 「王道の魔法少女もの」という序盤のイメージから「死と隣り合わせのダークな魔法少女もの」へと切り替わったかと思えば、「絶望の運命を乗り越えるループもの」という新たな局面へと突入。そのまま壮大なスケールの結末へとなだれ込んでいく……。放送当時、社会現象クラスの話題性を生んだことも納得のシナリオ構成だ。

 さらにTVアニメの放送終了から2年後、続編となる『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』が公開。ここではさらなる“初見の衝撃”が待ち受けていた。

 TV版のラストでは“円環の理”となったまどかによって、世界の構造は書き換わり、すべての魔法少女は魔女になる前に消滅するようになった。一種の大団円とも言える結末だったが、『叛逆の物語』ではこれがふたたびひっくり返されるのだった。

 物語は「まどかが生きている世界」というあり得ない描写から幕を開け、観客は困惑したまま新たな物語を見守ることに。その後の展開はある種のミステリーとして構成されており、終盤では驚きの真相が明かされる。

 さらに同作がすさまじいのは、受け手への“裏切り”を二段重ねにして仕込んでいたことだ。ハッピーエンドを迎えるかと思われた瞬間、まったく予想できない結末へと雪崩れ込んでいく。

 こうしてTV版や『叛逆の物語』を振り返ると、『まどマギ』シリーズが何を一貫して重視してきたか分かるだろう。すなわち同作を視聴するということは、“物語の見え方が途中でひっくり返される”という体験を味わうことを意味していた。だからこそ最新作の『ワルプルギスの廻天』で“ネタバレ防止”が呼びかけられたのも、至極当然だと感じられるのではないだろうか。

■公開情報
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』
全国公開中
キャスト:悠木碧、斎藤千和、喜多村英梨、野中藍、水橋かおり、阿澄佳奈、若山詩音、黒沢ともよ、加藤英美里
原作:Magica Quartet
総監督:新房昭之
脚本:虚淵玄(ニトロプラス)
キャラクター原案:蒼樹うめ
監督:宮本幸裕
キャラクターデザイン/総作画監督:谷口淳一郎
総作画監督:山村洋貴
異空間設計:劇団イヌカレー(泥犬)
絵コンテ/ビジュアル・コンセプトデザイン:古川知宏
ビジュアル・コンセプトデザイン:川田和樹
色彩設計:日比野仁
美術:内藤健/草森秀一
美術設定:大原盛仁
撮影監督:会津孝幸
編集:松原理恵
音楽:梶浦由記
音響監督:鶴岡陽太
アニメーション制作:シャフト
配給:ANIMEC
主題歌:FictionJunction「彼方」
©Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project
公式サイト:https://www.madoka-magica.com/wr/
公式X(旧Twitter):https://x.com/madoka_magica

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