『風、薫る』“環”瀧七海ד亀吉”三浦貴大が問う家族の形 進路をめぐる当時の価値観とは

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第118話では、環(瀧七海)が実の父親である亀吉(三浦貴大)と再会したことで家族について考えを巡らせていた。

 亀吉から受け取ったのは1通の手紙。口下手な亀吉本人からのものかと思いきや、亀吉の母で環にとっては祖母である貞(根岸季衣)がしたためたものであると言う。

 早速、環が読んでみると文章はたどたどしく、文字もひらがなの「す」が逆向きになっているなど、とても読みづらい。りん(見上愛)が新潟にいた頃、環が送ってきた手紙のほうがまだしっかりと書けていたくらいだ。りんより16歳年上の亀吉を産んだ貞は江戸時代生まれ。1枚の手紙から女子教育における“時代の変化”が感じられる。だが、貞はそんな慣れない字を書いてまで、環の幸せを願っていることを伝えたかったようだ。

 亀吉から聞くと、貞はすでに亡くなってしまったらしい。那須からはるばる来て環やりんに会いたがる亀吉や手紙を遺した貞から優しさを感じる環。すると、「こんな2人をりんはどうして捨てることにしたのだろう?」と母に対して今まで感じなかった疑念が沸いてきた。貞の嫁いびり、亀吉の捻くれた態度や酒癖の悪さを知っているわたしたち視聴者からすれば、りんが亀吉の家から抜け出し、離縁したことは正しい決断だと言い切れるのだが、思えばりんが環に父親のことを語っているところを見たことはなかった。環自身も父のことをあまり考えたことがなかったようで、母への疑いとともに「自分のことも何も知らないのではないか」と考え始める。

 そんな環の姿を近くで見ていた直美(上坂樹里)は恵風看護婦会の詰所で勉強をしているセツ(村上穂乃佳)に相談。2人とも環は賢いから言いたいことも言わずに我慢して育ってきたのだと察し、静かにため息をついていた。環に対していろいろアドバイスをしたいことはあるのだろうが、2人は環の行動を見守ることに決めたらしい。

 これまで言いたいことを我慢していたのであれば、思い切ってそれを言ってしまえばいい。だが、環はその“言いたいこと”さえもうまく出てこないように見受けられる。もしかしたら本当に、自分の実の両親やこれからのことを考えたことがなかったのかもしれない。家には優しくてしっかりした美津(水野美紀)がおり、母と同年代で同じ仕事をし、母がいなくても同じように気にかけてくれる直美がおり、彼女たちとは違った視点で自分のことを認めてくれるシマケン(佐野晶哉)がいた。環にとって、それが“家族”であり、誰の子であるかはさして問題ではなかったのだ。そして、絵という好きなことに熱中していれば幸せが感じられた。今、環は女学校の最終学年になって初めて、「自分の幸せとはなにか」、「どう生活していくのか」という難しい“人生の問題”を考え始めている。

 亀吉は環の将来について、嫁ぎ先を見つけるか、りんのようにナースになるかの2つの選択肢を提示した。しかし、これはりんの子ども時代の双六のように、奥様になって“あがり”になるか、りんが始めた家業を継ぐかと問うているのと同じこと。一見、前向きな提案にも見えるが、本質的には「家」を基準とした“古い価値観”と言うこともできてしまう。一方で最近再会したシマケンは幼い頃からずっと絵を描いている環に「環ちゃんは画家を目指してるの?」と尋ねた。そう、環がどう生きていたいか、本当はもっとたくさんの選択肢がある。

 りんに置き手紙を残し、シマケンに会いに行った環。誰かに頼りながらも、自分が後悔しないようにしようともがく姿は、とてもりんに似ているような気がした。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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