『豊臣兄弟!』松下洸平の“家康”はなぜ愛される? 歴代大河との比較で際立つ“生存本能”

 NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』の第34回「最強のライバル」の予告に松下洸平演じる徳川家康の姿が映った瞬間、SNSで大きな反響があった。前回登場したのは7月26日放送の第29回「天下への道」だったので、久しぶりにどんな腹黒タヌキおやじっぷりを見せてくれるのか期待に心躍らせる視聴者も多いはずだ。

 本作の家康はみんなが知っている家康像のさらにその斜め上をいく、予想を超えて生きることに貪欲で、したたかで、飄々と構えてはいるが憎めない男。本能寺の変の後に明智方を欺くために、あえて伊賀越えを宣言し、「生きて伊賀越えなどできるわけなかろう。見せかけじゃ」と、ちゃっかり船を調達していた。その危機回避能力の高さ、意表をつく化かしっぷりに「伊賀越えキャンセル界隈」とネットでも衝撃が走った。

 「化かし合いなら殿の方が一枚上ですな」と愉快そうに笑顔を見せる石川数正(迫田孝也)に「わしをたぬき呼ばわりするでない」と、うっすら腹黒タヌキの自覚はありそうな家康は、そそくさと危険を回避し、帰路を急いだ。

 まさか、家康の生涯において三大危機の1つといわれる伊賀越えをしれっとキャンセルするとは。さすが意表をつく家康。伊賀越えのルートの他にも諸説あり、実際に堺の港は織田の軍船で封鎖されていて危険なため、伊賀越えで山中を駆け抜けた後に伊勢から船を使ったという説が説得力ありそうだ。家康という人は生存本能が人一倍、とびきり強い人だったように思う。

 この伊賀越えはこれまでも大河ドラマで幾度となく描かれてきた。例えば、今でもSNSではその名場面が話題になる『真田丸』(2016年)。第5回「窮地」で描かれたのが、内野聖陽演じる慎重派で臆病な家康の必死の伊賀越えだ。服部半蔵(浜谷健司)が刀を抜いて「押し通ります!」と力任せに正面突破をはかるタイプで忍者らしさのかけらもなく、家康も全力で駆け抜けるほかないという、コミカルで強く印象に残る伊賀越えとなった。

『どうする家康』松山ケンイチが相変わらずの“イカサマ師”ぶり 家康の著しい成長も

『どうする家康』(NHK総合)第29回「伊賀を越えろ!」。信長(岡田准一)を急襲した明智光秀(酒向芳)の命令で、家康(松本潤)は…

 松本潤が家康を演じた『どうする家康』(2023年)の服部半蔵役は山田孝之で、家康一行は道案内を半蔵に頼むが伊賀の道も情勢もよくわからず、敵対する集団にあっさり家康も捕まってしまった。その大ピンチを救ったのが、かつて三河一向一揆で家康を裏切って追放されていた本多正信(松山ケンイチ)だった。彼は伊賀流忍者の軍師となっており、家康を助け再会を果たすという予想外の展開が待ち受けていた。

 また『おんな城主 直虎』(2017年)はそれまでどこかおっとりとして、優しい雰囲気の家康(阿部サダヲ)が、生き延びて天下をとり覚醒する姿が描かれた。伊賀越えシーンにコミカルさはなく、顔を泥で汚しながらのリアルで緊迫したシーンもまた印象的だった。服部半蔵(浜野謙太)も常に冷静沈着で先を読み、伊賀の国人衆の動きを的確に把握してルートを選定していた。

 そして、同行していた万千代、のちの井伊直政(菅田将暉)が家康の着物を身にまとって敵陣へ突撃するなど、命をかけた活躍で家康への忠義を示した。この功績が、のちの徳川四天王となる出世の足がかりとなるほど、万千代の熱さが伝わる名場面となっている。

 こうして伊賀越えのシーンを振り返ると、家康という人の生きることへの執念というか、生き残ることへの強いこだわりのようなものを強く感じることができる。本作の松下洸平が演じる家康はとくに生存本能が人一倍強く、生き残るためならプライドも捨て、土下座もするし、周囲を欺くこともサラリとやってのける。小一郎(仲野太賀)と秀吉(池松壮亮)との今後の関係がどうなっていくのか。化かしあいなら、家康の方が何枚も上手ではないだろうか。今までの関係性を見ても、秀吉がいくら人たらしの天才だとしても、穏やかに本心を見せない家康は従順なフリをして牙を研いでいるタイプだ。

 演じる松下洸平のイメージが爽やかで、好感度が高いだけにそのギャップ、腹黒さのコントラストが効いて家康像に深みが増すのも面白い。

 久しぶりの登場となる家康だが、その間、正室の築山殿と嫡男・松平信康が武田氏との内通を織田信長に疑われ、家康の命により2人は殺害された。これは家康にとってダメージも大きく、予告の場面だけでもこれまで見せたことのない表情、哀愁を帯びた大人の顔を見せている。乱世でその都度状況や立場が変わる中、家康は豊臣兄弟とどんな化かしあいを見せてくれるのだろうか。

■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
公式X(旧Twitter):@nhk_toyotomi
公式Instagram:@nhk_toyotomi

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