山口馬木也が体現した“時代劇俳優”としての凄み 『豊臣兄弟!』で宿った“鬼柴田”の顔

 NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』第32回で描かれるのは「賤ヶ岳の戦い」。信長(小栗旬)の後継者争いから秀吉(池松壮亮)と勝家(山口馬木也)が対立し、近江国の賤ヶ岳付近で両軍が激突した戦いを指す。羽柴軍に敗北を喫した勝家は、妻の市(宮﨑あおい)とともに絶命する、というのが歴史の1ページとして広く知られている。

 織田家重臣の一人として、信長への忠誠心の厚い勝家。その忠義が示されたのは、信勝(中沢元紀)が兄の信長に謀反を起こし、寝所を襲う場面で、勝家が背後から斬りつけた第6回「兄弟の絆」だ。特筆すべきはこの回で小一郎(仲野太賀)と藤吉郎(池松壮亮)の兄弟の絆が描かれており、「この勝家、決して殿を裏切りませぬ」と信長に宣言する。忠誠を誓う言葉であるのと同時に、今もう一度映像を振り返ると、隣にいる市に一瞬目線を移す素振りがある種の市へのアピールとも取れる。

 第10回「信長上洛」では、近江・小谷城で開かれた市と長政(中島歩)の婚礼の宴に出席した勝家。その冗談が通じない、相変わらずの無骨さに、市は「長政殿よりもわたくしにおうてるやもしれぬ。いっそお前と一緒になる方がましであったな」と戯言。思いもしなかった市からの言葉に、動揺しまくる姿がSNSでも話題になっていた。これが後に、羽柴兄弟から織田家を守るため、市を娶る道へと繋がっていくわけだが、真っ直ぐすぎるが故にクスッと笑ってしまうようなユーモアが生まれるのは、山口馬木也が主演を務めた映画『侍タイムスリッパー』での高坂新左衛門(山口馬木也)と山本優子(沙倉ゆうの)の関係性に通ずるものがある。

 初期から秀吉への嫉妬心を燃やしていた勝家が、本格的に秀吉と対立し始めたのが第19回「過去からの刺客」。意見の相容れぬ秀吉の顔を殴りつけ、額を激しく突き合わせるシーンは画面越しに見ていても緊張感の伝わる場面だった。それが、本能寺の変の後の清須会議、今回の賤ヶ岳の戦いへの布石として重要なシーンとなっている。先述したように『侍タイムスリッパー』とのコメディ的なリンクもありながら、大きく違うのは“鬼柴田”と呼ばれるほどの血気盛んな怒りの感情表現。その根源にあるのは亡き信長への忠義と愛情であり、織田家を守るという目的で合致した市への接し方、目線も少しづつ自然で、柔らかなものとなっている印象だ。

 山口馬木也の大河ドラマへの出演は、『八重の桜』(2013年)、『鎌倉殿の13人』(2022年)など、今作で5作目となる。俳優として大抜擢となった『剣客商売』シリーズ(フジテレビ系)をはじめ、日刊スポーツ映画大賞・ブルーリボン賞の主演男優賞を受賞し、ブレイクのきっかけとなった主演作の『侍タイムスリッパー』、さらには今年1月に放送された『鬼平犯科帳 兇剣』(時代劇専門チャンネル)など、今や“遅咲き”のバイプレイヤーを越え、時代劇には欠かせない俳優の一人と言える。現代劇ではまだ記憶に新しい『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)、10月公開の映画『時給三〇〇円の死神』、冬からは劇団☆新感線『髑髏城の七人 LAST STAND』への参加も決定しており、さらなる表情を見せてくれそうだ。

 信長や光秀(要潤)を例にして、これまでの大河とは異なる最期が描かれてきている『豊臣兄弟!』。勝家と市においてもそのラストが注目されており、秀吉との対立と同じ重臣としての絆、市への思いと織田家への忠義がどこに向かうのか、そこで見せる山口の勝家としての芝居に大いに期待している。

■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
公式X(旧Twitter):@nhk_toyotomi
公式Instagram:@nhk_toyotomi

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