『ブラックトリック』GACKTの演技は“異質”すぎるのか “型破り”を成立させる存在感
春、夏、秋、冬と、毎クール、ドラマが出揃った時期にチェックしていることがある。いきなりだが、ここにいくつか放送中のドラマを並べてみよう。『告白-25年目の秘密-』(日本テレビ系)、『GTO』(カンテレ・フジテレビ系)、『VIVANT』(TBS系)──これらの作品において、端的な共通点は何か。それはいずれも主人公が“型破り”な存在であること。一般的な社会の常識や規範に囚われず、その枠組みからはみ出す彼らの存在は、ときに私たち視聴者にも、現実に立ち向かう勇気を与えてくれるだろう。劇場ではなく、いつものお茶の間でこそ、そういった存在に出会いたいのだ。
本稿で触れるのは、雪村爽太でも、鬼塚英吉でも、乃木憂助でもない。では、誰か。今季のドラマの中でもとくに型破りっぷりが際立っている、『ブラックトリック〜裁きを操る弁護人〜』(フジテレビ系)の主人公・浦真鷲直人についてだ。演じているのはそう、GACKTである。
本作は、“嘘”をでっち上げて“真実”を暴く者たちに光を当てた、かなり変わったリーガルドラマだ。嘘やフェイクニュースが溢れる現代は、間違った情報で罪なき人物が簡単に悪人に仕立て上げられてしまう時代。そこでは本当の声がかき消され、真実は完全に歪められてしまう。こうした社会で巨大な権力が生み出す大嘘に、さらなる大嘘で対抗する人々の活躍を描く作品なのだ。“嘘を持って嘘を制す”のである。
とはいえ、ドラマの設定だけならば、そこまで真新しさがあるわけではないだろう。こういったダークヒーロー的な存在を描く作品は、決して少なくない。しかし、主人公にフォーカスしてみるとどうだろうか。GACKTが演じる浦真鷲直人は、まだ出会ったことがない。
彼は天才的な敏腕弁護士でありながら、一級建築士としても働く人物だ。法の知識と建築の経験を駆使し、自らの建築事務所チームの面々とともに証拠捏造や証言誘導を行い、ストーリーをでっち上げ、敵を追い込んでみせる。弁護士としても、建築士としても、弱い立場にある者たちを救う存在としても、まさに型破り。ユニークで斬新なキャラクター設定だ。しかもこれをあのGACKTが演じるというのだから、浦真鷲とは当然、より只者ではない人物として立ち上がっている。彼はつねに、私たちの想像を超えてくる存在なのだ。
いや、より正確に言うならば、GACKTが演じるからこそ、この浦真鷲直人というキャラクターは成立している。彼が型破りな人物だからといって、GACKTは力の入ったパフォーマンスやアクロバティックな演技を繰り広げているわけではない。
そもそも主役にしては用意されているセリフが少なく、自在な演技でドラマの展開を盛り上げているのは周囲の者たちのほう。建築事務所のアシスタント・土生洸太(神尾楓珠)や、建築士の鯖山周平(戸塚純貴)、所長の呉田利静(竹財輝之助)、それから、エリート弁護士である麻生縁(志田未来)らのほうが、頻繁に前に出る。これに対して浦真鷲は、どこか引いたポジションにある。GACKT自身のセリフ回しもこれに即したものであるため、ドラマのオーディエンスこそが前のめりにならなければならず、その一挙一動から目が離せない。この構造は、本作の大きな特異性だろう。
GACKTはやはり、こうした役どころによくハマる。ミュージシャンとして不動の地位を築き上げてきた彼自身が持つカリスマ性は、演じるキャラクターのカリスマ性と固く手を取り合い、唯一無二の存在を生み出すこととなる。職業俳優は作品ごとに何者かを演じるのが仕事だが、GACKTはGACKTとしてあり続けるのが仕事。俳優業での代表作である大河ドラマ『風林火山』(2007年/NHK総合)の上杉謙信にしろ、映画『翔んで埼玉』(2019年)の麻実麗にしろ、そこにはそれぞれの人物が存在しながら、やはりGACKTがいた。
彼は本作『ブラックトリック』の共演者の多くとも、あるいは『告白-25年目の秘密-』の松村北斗とも(彼はアイドルでもあるが、いまや日本が誇る演技者である)、『GTO』の反町隆史とも、『VIVANT』の堺雅人とも異なる立ち位置にある。浦真鷲直人のような人物は、このドラマの中にしかいない。
■放送情報
『ブラックトリック~裁きを操る弁護人~』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:GACKT、志田未来、神尾楓珠、戸塚純貴、竹財輝之助、三浦真椰、春本ヒロ、月城かなと、セヨン(MYNAME)、林泰文、映美くらら、生瀬勝久、北村一輝ほか
脚本:吉髙寿男、市東さやか、阿部沙耶佳、萩森淳、北浦勝大、鈴木洋介、金沢達也(担当話順)
演出:三橋利行、下畠優太、林徹
主題歌:GACKT「STAND ALONE」(VENUS)
プロデュース:牧野正
プロデューサー:大野公紀、古郡真也(FILM)
制作協力:FILM
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/blacktrick/
公式X(旧Twitter):@blacktrick_fuji