『風、薫る』シマケンからりんへの“いとおしい”気持ち 水平線をバックに優しいひととき

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第18週「岐路にて」第90話では、りん(見上愛)の住む新潟・上越に直美(上坂樹里)、環(英茉)、島田(佐野晶哉)たちが訪ねてくる。5月に実際に上越の海岸で撮影された『風、薫る』では久々のロケでの映像。水平線に近づく夕陽をバックに直美、そして環と水際ではしゃぐ島田の姿が眩しい。

 直美と島田たちがなぜ、この時代に新潟にまでわざわざりんに会いに来たのか。まず、直美は手紙では伝えきれない近況を話すため。東京と新潟で離れ離れになったことで、特に直美はりんを大切な存在として再認識し始めている。依頼がなかなか来ず、行き詰まりを感じている派出看護。りんであれば心に触れる看護ができると、どうすればいいかを考える“援軍”になると信じ、直美はりんに相談するはずだったが、「もう毎日忙しくって」と本当のことを言い出せない。それは人の命に触れるのが怖いというりんの本心を聞いてしまったから。女学校の舎監として軌道に乗りつつ、黒川(平埜生成)からの看護婦取締としての誘いに揺れるりんに、直美は派出看護についてつよがりを見せるしかなかった。りんを思ってのうそだ。

 島田は、りんに思いを寄せプロポーズをした“監獄署帰りの新聞記者”こと横沢(井上祐貴)のことを直美から聞き、危機を覚えてりんに会いに来た。グイグイ来る横沢に一方的に絡まれる島田が気の毒でしかないが、直美のアシストもあり、島田はりんと2人きりになることができた。りんと美しい海を見て、環と遊び、風に吹かれて。この幸せな気持ちを表現する言葉を、島田は探していた。文筆家で人以上に言葉を知っているからこそ、島田はありきたりな表現でりんへの思いを伝えたくはなかった。

 そんな島田に、りんは「いとしげ」という言葉を送った。島田との手紙のやり取りにも出てきた新潟の方言で、「かわいらしい、きれい、愛おしい」という意味を持つ。島田は横に座るりんを見つめ「僕はいとおしい」とつぶやき、立ち上がると「いとおしいです! いつか……こんな瞬間を書いてみたい」と絞り出すようにして、りんへと思いを伝え環のほうへと走っていく。折り紙とんびを一つ飛ばしては、もやもやした気持ちを晴らしていた島田が、新潟の空の下で解き放ったりんへの思い。今にも泣き出しそうな“いとおしい”佐野晶哉の表情に、見上愛が笑って涙を拭う。

 思い出すのは看護のいろはを舎監室に並べ、眺めるりんの姿。そこにあったのは、「病人の上に眼を注ぎ 其の思う處を悟る事」というカードだ。意味するのは、「患者を注意深く観察し、言葉にできない苦しみや願いを察する」。恋愛に鈍感だったりんも、島田が言葉にできなかった思い、もしかしたら自身の思いを察することができた最後の「いとおしい」だったのかもしれない。

■放送情報
2026年度前期 連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から土曜8:00~8:15放送
※土曜は1週間を振り返り ※NHK ONEで同時・見逃し配信あり
NHK BS・BSプレミアム4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送
出演:見上愛、上坂樹里ほか
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
音楽:野見祐二
主題歌:Mrs. GREEN APPLE「風と町」
語り:研ナオコ
制作統括:松園武大、宮本えり子
プロデューサー:葛西勇也、松田恭典
演出:佐々木善春、橋本万葉、新田真三、松本仁志ほか
写真提供=NHK

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