『風、薫る』“直美”上坂樹里が派出看護で迎えた試練 鍵を握るのは“りん”見上愛か

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第89話では、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)が離れた場所でそれぞれの壁にぶつかる。

 前回、監獄署にいる横沢(井上祐貴)から「結婚してください」と告げられたりん。きっかけを作ったのは、ほかでもないシマケン(佐野晶哉)の言葉である。結果的に、りんのことが気になっているシマケンにとっては、自ら恋敵を送り出してしまったようなものだ。りんは横沢の求婚を断ったものの、このまま何もしなければ、いつか本当にどこかの誰かに取られてしまうかもしれない。人の恋には妙に勘が働くシマケンが、自分の恋になると途端に動けなくなるのがもどかしい。

 そんな恋模様の一方で、りんの前には看護婦としての不安が改めて立ちはだかる。ある日、授業中に常(河村ここあ)が熱を出して倒れてしまう。りんはすぐに状態を確認しようとするが、脈を測ろうと手を伸ばした瞬間、山本のことがフラッシュバックする。手は震えたが、それでもりんは常の容体を見て、できる限りの看護をする。新潟に来て半年。少しずつ前に進んでいるようで、山本の一件はまだ完全には過去になっていない。

 常は黒川病院の黒川(平埜生成)に診てもらい、流行り風邪だとわかる。大事に至らなかったことには胸をなで下ろすが、りんにとっては自分の手が止まってしまった事実のほうが重い。患者を前にしたとき、また同じように動けなくなるのではないか。看護が好きだったりんにとって、その恐怖は簡単には振り払えない。

 そんなりんに、黒川は看護の基本になるようなことを紙にまとめてほしいと頼む。東京と比べて、まだ看護への目が厳しい新潟だからこそ、まずは看護がどういうものなのかを知ってもらいたいというのだ。患者に触れることに怖さが残るりんにとって、それは別の形で看護に関わる仕事でもある。病室で手を差し出すだけが看護ではない。看護の考え方を伝え、広げていくこともまた、りんにできることなのだろう。

 一方、東京では直美としのぶが(木越明)派出看護の難しさに直面していた。依頼はなかなか来ず、仕事として回り始める気配が見えない。直美はしのぶに給料を渡そうとするが、しのぶは一日で依頼を断られた身としては受け取れないと断る。看護の必要性を信じていても、それを世の中に受け入れてもらえなければ続けていけない。理想と現実の差は、思った以上に大きい。

 そこでしのぶが口にしたのが、りんの存在である。患者の心に触れるりんがいてくれたら、もう少しうまくいくのではないか。たしかに、りんには相手の痛みや不安を見つけようとする力がある。直美の判断力や行動力、しのぶの経験に、りんの看護が加われば、派出看護はまた違う形で伝わっていくのかもしれない。

 直美はいつものように、派出看護を知ってもらうためにチラシを配っていた。そこで偶然会ったのが小川(甲斐翔真)である。最初は距離のあった2人だが、今では直美が「肩の力が抜けます」とこぼすほどの関係になっている。人に頼ることが得意ではなかった直美が、自然に弱音をこぼせる相手がいる。それだけでも、彼女にとっては大きな変化だ。

 行き詰まる直美に、小川は「自分なら援軍を呼ぶ」と助言する。その言葉を聞いて、直美の頭に浮かんだのは、やはりりんのことだったのではないだろうか。新潟で看護を伝える道を探しながら、まだ傷を抱えているりん。東京で派出看護を形にしようともがく直美。離れた場所で立ち止まっている2人が、再び力を合わせるときが近づいているようにも見える。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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