『エクストリーム・ジョブ』の高い壁を超えて 『チーム・ハズバンド』が選択した脱力的王道

 本来であれば、一人の女性をめぐる新旧の夫として、犬猿の仲であるはずの二人。事件解決に向かう捜査や交渉、戦いのなかで、彼らは犯罪組織の陰謀によって閉鎖的な空間へと閉じ込められてしまう。そこで生き残りをかけて、互いの体温を保つために並んで肩を寄せ合ったり、お互いの足をもう一方の口の中に入れるといった、エキセントリックな行動を余儀なくされるのである。

 こうしたサバイバルを経て、いつしかコンミョン演じるミンソクは、年上のチュンシクのことを、親しみを込め「ヒョンニム(兄貴、お兄さん)」と呼び始め、絆を深めている。そう、なんと本作は、男性同士が連帯を深めていく「ブロマンス」ジャンルの要素こそが中心となる作品だったのだ。

 とはいえ、近年の「BL(ボーイズラブ)」ジャンルのように、多様な性的指向や内省的なロマンスを直接的に描いているというわけではない。だからこそ、妻と娘を救い出すという大義名分のもとで展開される、男たちの空回りと絆を見せていくという趣向が、物語の状況を利用したユーモアとして前面に出ることになる。これは、『エクストリーム・ジョブ』のプロット上の仕掛けに符号する部分だといえる。

 今回監督と脚本を手がけたパク・ギュテのキャリアを振り返れば、このアプローチには必然性を帯びていることが分かる。かつて『達磨よ、遊ぼう!』(2001年)でのヤクザと僧侶の関係や、前作『6/45』における韓国兵と北朝鮮兵の動きなど、本来なら相容れないはずの二つの属性を混ぜ合わせるという題材を得意としているのだ。つまり本作『チーム・ハズバンド』は、監督自身が最も得意とする分野を利用しながら、『エクストリーム・ジョブ』の構造を変奏してみせた作品だというのが、最も妥当な理解だと考えられる。

 近年の韓国映画が世界的な隆盛を誇っていくなかで、独自の進化を遂げてきたアクションコメディというジャンル。そのなかでも『エクストリーム・ジョブ』は、韓国の映画史における一つの到達点として、語り継がれる代表的な作品として定着していった。その完成度を思えば、これを基準に後に続く韓国の同ジャンルの成否をジャッジするというのは、いささか酷なことなのかもしれない。何より『エクストリーム・ジョブ』は、そう簡単には思いつくことのできない、主客の逆転という秀逸なプロットそのものを奇跡的に発明していたのも確かなのだ。

 本作『チーム・ハズバンド』が、そうした先行作が築き上げた定型や配役を含めてベースにしていることは、オリジナリティという観点から見ればやや物足りなさを覚える。とはいえ、娯楽映画というフィールドにおいては、決して致命的な失点だと考えることもないはずだ。

 親しみやすい韓国エンタメの王道展開に身を委ねながら、かつての同志を“元夫と現夫”という気まずい関係へと変化させ、本来交わらないはずの男たちの境界を崩していく。その本末転倒なユーモアで、映画全体の脱力的なトーンを決定する。そしてパク・ギュテ監督の作家性と、そうした試みを融合する。このエンタメ映画についての、きわめて周到なプロデュースが、配信プラットフォームで、いま求められているラインの一つでもある。

■配信情報
『チーム・ハズバンド』
Netflixにて配信中
出演:チン・ソンギュ、コンミョン、キム・ジソク
制作:パク・ギュテ

関連記事