『風、薫る』りんと直美の恋愛観は正反対? ダブルヒロインだからこそ面白い2人の魅力
守るべき家族のいない直美とは違い、りんには守るべき家族の存在は大きい。娘の環(英茉)、母の美津(水野美紀)、妹の安(早坂美海)に支えられて生きてきた。仕事も手を抜くことができない。幼なじみの虎太郎(小林虎之介)が会いに来れば昔のように、おしゃべりして、気軽に家族の話もするけれど、昔からの知り合い枠を出る様子は全く見られない。
また、りんに自分の書いた小説を読んでもらいたくて団子屋で待ち伏せを続けたシマケン(佐野晶哉)の健気さも、りんにとっては束の間の癒しとなる。思わず「シマケンさんは私のトンビですね」と言ったのも、他愛ないおしゃべりで気持ちが軽くなったという仕事の合間の気分転換の相手であることの表明である。
虎太郎もシマケンも話しやすいし、悪い男ではない。りんへの好意は周囲が気づくほどわかりやすく、親切だ。でも、仕事に全力で打ち込み、家族との時間も大切にしたいりんに恋愛に向ける力があるようには見えないし、この2人のどちらかと今の段階で深い関係に進みたいと思っているようには思えないのだ。
りんが今後、恋愛にのめり込むことがあるというなら、仕事のやり方や生活が一変するときではないだろうか。そして、りんと正反対のヒロイン・直美には出会いがあった。「自分はみなしごだ」という直美の告白にも「なおさらすごい。みなしごで、看護婦で、ピリッとしてる」と大切な存在を見つめるような笑顔を見せる小川。
りんには守るべきものがあり、誰かと恋愛に走るよりも今ある生活を守っていくことを優先させることを重視している。だから、シマケンや虎太郎との関係も心地よいけれど、これ以上は深入りしない、させないという安全な距離を上手に保っているのだ。
りんとは真逆の直美は、孤独で家族を知らず、人生に余白があり、その余白を埋めたいという気持ちが常にどこかにあるように見える。人に傷つけられることが多かった直美だからこそ、誠実で安定感のある小川のような男性と恋愛をして、未来に希望を持ってもいいのではないかと応援したくなる。
正反対のタイプのダブルヒロインだからこその恋愛観の違い、シマケンと虎太郎のライバル関係の行方だけでなく、直美と軍人・小川の今後の展開も含め動きがありそうで楽しみだ。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK