興収で読む北米映画トレンド

20代監督のホラー映画、なぜ『SW』を圧倒? 『Backrooms』『オブセッション』が北米席巻

 第2位の『オブセッション 災愛』も、YouTube出身の新鋭監督によるホラーというだけでなく、若者の興味をひいたことが勝利の一因だ。先週も言及したとおり、観客の40%が18~24歳で、18~34歳では75%(4人中3人)。Rotten Tomatoesでは批評家96%・観客94%、CinemaScoreでは「A-」という圧倒的評価を得ており、興行が伸び続けていることからも口コミ効果は明らかだ。

 『Backrooms』と『オブセッション 災愛』の背後には、現代ホラーのプロデューサーとして名を馳せるジェイソン・ブラムの存在がある。『オブセッション 災愛』はブラムハウス・プロダクションズが、『Backrooms』ではブラムハウスと合併したアトミック・モンスターが製作を務めた。

『オブセッション 災愛』©2026 Focus Features LLC.

 ブラムはこれら2作品を「新しい種類の映画」と呼び、「オンラインでクリエイターとしてのスキルを磨いてきた、伝統的ではない監督たち」の作品だと形容した。

「『Backrooms』と『オブセッション 災愛』は、エッジが効いていて、奇妙で、とんでもなくぶっ飛んだ作品です。若い世代が尖った映画を作り、思いもよらない形で映画館の観客とつながっていた――そんな70年代の感覚を思い出させます。映画館に行けない時代(編注:コロナ禍)に育った若者には、自分たちのために作られた、iPadから劇場へと連れ出してくれる作品がこれまでなかった。そこへ突然、2本の映画が現れたのです」

 この点で言えば、『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』は、まさに既存のファン層以外を獲得することが課題だった。2週目の急落は、本作がこの課題のクリアに苦戦していること、およびシリーズのファンを中心とした興行の限界を示しているとされており、いよいよフランチャイズの正念場だと言える。

 その一方、巨額を投じたわけでも、人気IPやキャラクター作品でもない、低予算のホラー映画がランキングのトップを占めたことは、以前より「ヒットのカギ」といわれていた若年層の観客が、既存の物語ではなく、まったく新しい“自分たちの世代の物語”をとうとう見つけた証拠なのかもしれない。

 YouTubeやオンラインがそのきっかけとなったのは、映像文化や映像制作の変遷を示しており、またコロナ禍以降、既存の映画スタジオが若手監督主導の中規模・小規模企画を実現してこなかったことを表しているだろう。単に「YouTube出身の型破りな若手監督たちが現れた」のではなく、ここ10年ほどの業界全体、文化全体の流れがこの異例の事態を生んだのだ。

 実際に、『Backrooms』を手がけたパーソンズはYouTubeを映画界進出の手段とは考えておらず、「YouTubeなどでしか実現できないプロジェクトがある」として「今後も離れるつもりはない」と述べている。続編映画やテレビシリーズなども視野に入れつつ、物語世界をさらに拡大する構想のようだ。現在進行中の企画もあるそうだが、詳細はわかっていない。

 まずは『Backrooms』の日本公開決定を期待しつつ、『オブセッション 災愛』も楽しみにしておこう。ホラー映画の、いやハリウッド映画の新世代はすぐそこまでやってきている。

北米映画興行ランキング(5月29日~5月31日)

1.『Backrooms(原題)』(初登場)
8145万ドル/3442館/累計8145万ドル/1週/A24

2.『オブセッション 災愛』(→前週2位)
2640万ドル(+10.2%)/2781館(+126館)/累計1億475万ドル/3週/Focus Features

3.『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(↓前週1位)
2500万ドル(-69.4%)/4300館/累計1億3736万ドル/2週/ディズニー

4.『Michael/マイケル』(↓前週3位)
1170万ドル(-43.3%)/3118館(-188館)/累計3億3990万ドル/6週/ライオンズゲート

5.『The Breadwinner(原題)』(初登場)
750万ドル/3252館/累計750万ドル/1週/ソニー

6.『プラダを着た悪魔2』(↓前週4位)
590万ドル(-53.6%)/2650館(-650館)/累計2億935万ドル/5週/ディズニー

7.『Pressure(原題)』(初登場)
575万ドル/1829館/累計575万ドル/1週/Focus Features

8.『ひつじ探偵団』(↓前週5位)
463万ドル(-49.7%)/2810館(-397館)/累計5453万ドル/4週/Amazon・MGM

9.『パッセンジャー』(↓前週6位)
260万ドル(-70.3%)/2534館/累計1526万ドル/2週/パラマウント

10.『モータルコンバット/ネクストラウンド』(↓前週7位)
200万ドル(-67.1%)/1603館(-1123館)/累計7776万ドル/4週/ワーナー

(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2026年6月1日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)

参照
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2026W22/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/backrooms-sets-a24-record-90-million-opening-1236609070/
https://variety.com/2026/film/box-office/backrooms-box-office-record-opening-weekend-obsession-jumps-star-wars-crumbles-1236763355/
https://deadline.com/2026/05/box-office-backrooms-1236929953/
https://deadline.com/2026/05/box-office-global-backrooms-obsession-star-wars-michael-1236931328/
https://deadline.com/2026/05/indie-film-box-office-pressure-tuner-unusual-weekend-1236931352/
https://deadline.com/2026/05/backrooms-kane-parsons-box-office-record-behind-the-scenes-1236931315/
https://www.nytimes.com/2026/05/29/business/media/backrooms-film-youtube.html
https://www.nytimes.com/2026/05/29/movies/kane-parsons-24-youngest-director-backrooms.html
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/jason-blum-james-wan-obsession-backrooms-success-horror-1236609599/

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