『風、薫る』シマケンに感じる“愛され変人キャラ”の限界 佐野晶哉に期待したい逆転劇

 さて、看護とは何かについてりんたちが学んでいる本筋に関してはこれくらいにして、第9週で問いたいのは、シマケン(佐野晶哉)である。彼は、朝ドラで人気が出る属性のひとつ・少し風変わりで、何かにこだわりが強く、他者とのコミュニケーションが得意ではないキャラを担っている。

 これまでそれで人気が出たキャラには、『おかえりモネ』(2021年度後期)の菅波(坂口健太郎)が代表格だろう。ほかに、『まんぷく』(2018年度後期)の萬平(長谷川博己)や『ごちそうさん』(2013年度後期)の西門(東出昌大)などがいる。いずれも自分のテーマに夢中で、頑固な面があり、コミュニケーションが一方向になりがち。でも、それだけ純粋で、彼の抱えるテーマが社会貢献するため、主人公はリスペクトや愛情を感じる。2010年代以降のこれらの天才系変わり者キャラの原型は、『梅ちゃん先生』(2012年度前期)の松岡(高橋光臣)だろう。主人公・梅子と何かとぶつかりあいながらもいい関係になっていった。梅子の相手は幼なじみ馴染の信郎(松坂桃李)なのだが、あまりに松岡のキャラが立っていて、松岡先生と結ばれてほしいという視聴者も少なくなかった。筆者もそのひとり。

 松岡はヒロインと結ばれることはなかったが、彼が主役のスピンオフドラマが制作された。この成功体験が、その後の朝ドラには生かされて、何かと天才系変わり者キャラが用意されるようになったと考える。シマケンはその流れにいる。「シマケン」というあだ名まで作られ、親しみやすく、SNSで発信しやすい準備も入念だ。ところがだ。シマケンは何かちょっとこれまでの流れと違う。はっきり言って、現段階では、ヘン過ぎて応援しにくい。

 演じている俳優の魅力はあるのに、俳優がどんなによくても役自身がヘン過ぎる。前からシマケンは従来の愛されるヘンキャラとは何かが違う気はしていたが、第44回はその最たるものだった。りんの妹・安(早坂美海)のお見合い(?)に立ち会ったシマケンは、りんのことをべらべらと話しはじめる。彼がりんを好きなのは、りんも、友人の槇村(林裕太)もバレバレであるという微笑ましさを意図しているのだろうけれど、恋愛ボケのような人物だと応援しづらくないだろうか。

 これまで愛されたキャラは皆、何かに懸命に打ち込んでいたのだ。シマケンも活字工をしながら作家を目指している設定で、難しい言葉に詳しく、そのうんちく語りはいつもの天才系だと思ったのだが、最近、りんのことばかり。なんだって、あえてこういうキャラにしたのだろう。せっかく、金田一耕助のように髪の毛をかきむしるクセを作って印象づけているのだが、金田一だって、推理が抜群だから髪がボサボサなのが許されるわけで。いまのところ、人気キャラの表層だけをなぞっているような印象だ。それを一気にひっくり返して問答無用な魅力に変えるときがくることを、あえてシマケンを恋愛ボケのようなキャラにした理由がやがて明かされ、納得できることを期待している。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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