『風、薫る』シマケンに感じる“愛され変人キャラ”の限界 佐野晶哉に期待したい逆転劇

 仲間由紀恵演じる千佳子が退院し、今週の患者役はシソンヌのじろう。NHK連続テレビ小説『風、薫る』第9週「看病婦とアメ」(演出:橋本万葉)はりん(見上愛)と直美(上坂樹里)が患者の自宅に看病に行く。だがこれは時間外労働。業務とは関係ないイレギュラーな行為であった。

 患者・康介(じろう)はフユ(猫背椿)の夫だ。千佳子の手術のときのフユの介助が見事だったため、りんは教えを乞う。フユは教えてもいいけどお金をちょうだいと言う。りんたち見習い看護婦は、お嬢様育ちが多いため、善意とお金を天秤にかけることにドン引きするが、貧乏育ちの直美だけは、フユの考えに理解を示す。

 そもそも、看病婦は下賤なものと世間に認識され、お金を得るために仕方なくやる仕事であった。だから、その仕事を選ばざるを得なかった看病婦には訳ありに違いないと直美は思う。彼女自身がそうであるからだ。

 実際、フユは、夫が怪我して働けなくなったため、看病婦として働いて10年。病院の仕事が忙しすぎて夫の介護に十分時間をとれずにいた。りんと直美は、介助の仕方を習うお金を払う代わりに、フユの夫の世話を引き受ける。フユも夫も看病婦の仕事を「なんか」と卑下していたが、りんと直美は「なんか」という考え方を改めてもらおうと尽力する。

 「なんか」「なんか」を連発する康介は、かなり自尊感情が低下している。そりゃあ、10年寝たきりだったら、そうなっても仕方ないだろう。でも「なんか」という考え方を変えるだけで、人生が少しだけ変わる可能性がある。フユはこれまで、自分の運命を諦めていたから、見るからに不機嫌そうだった。でも、りんと直美が夫に、フユの仕事は「なんか」と蔑まれるものでは決してないと言っていたと聞いて、考えを改める。

 りんたちに介助の仕事を教えれば、自分の仕事が楽になり、家庭に時間を割くことができると悟ったのだ。というのは方便で、りんや直美に少し心を開いたのだろう。そもそも、看病婦と看護婦の仲がぎすぎすしていたのは、医者たちが看護婦をひいきしているからだ。

 病院側が、りんが千佳子に気に入られたことで、育ちのいい看護婦がいることを売りにすることにして、看護婦たちから所作を学ぶようにお触れを出した。それが長年働いてきた看病婦たちには気に入らない。現場を知らない人たちのせいで、労働者が無駄にギスギスすることになるのはほんとうに残念な話である。そんな上の人たちの愚かな判断を、りんたちは清らかな心で蹴散らしていく。

 週の終わり、第45回、フユがりんたちに介助を教えると言ったり、これまで看護婦たちに意地悪に接していたセツ(明星真由美)やつや(東野絢香)たちがデレたりするとき、澄んだ女性の高音のボーカル入りの劇伴が流れ、浄化されたような気持ちにさせられる。とはいえ、看護の仕事は容易ではない。誰もが、園部(野添義弘)、千佳子、康介のように回復するわけではないのだ。東雲ゆき(中井友望)が担当している患者・小野田(宮地雅子)はかなり衰弱していて、ゆきは平常心ではいられなくなっていた。患者の前では泣くなとトメがゆきをたしなめている場面には看護することの厳しさが滲む。

 第42回で退院する千佳子が「もう会えないほうがいいのよね」と言い、りんは「はい。寂しくて、嬉しいです」と返してふたりが別れるのも、なかなかハードボイルドだ。でも予想するに、今後何かりんたちが困難に遭ったとき、警察の偉い人である園部や侯爵夫人の千佳子が手を差し伸べてくれて、「NISAを30年ほったらかしにしていたらすごいリターン来た」みたいな展開になることに10ペリカ。

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