『サバ缶、宇宙へ行く』“朝野”北村匠海の真意 “瑠夏”伊藤蒼は10年間の集大成となるか

 閉校の危機に直面した若狭水産高校は、地元の進学校である若狭小浜高校と統合し、同校の“海洋科学科”となることで無事存続の道をたどることとなった。そこへ朝野(北村匠海)のかつての教え子である菅原(出口夏希)が教師として赴任し、さらには寺尾(黒崎煌代)の妹・瑠夏(伊藤蒼)――第1期で登場した車椅子の少女(吉本実由)である――が入学してくる。5月25日に放送された『サバ缶、宇宙へ行く』(フジテレビ系)第7話は、“第4期”の幕開けであると同時に、これまで以上に時間の流れというものを強く実感させるエピソードであった。

 なにしろ今回からの時代設定は2015年。菅原や寺尾たち“1期生”が宇宙サバ缶のプロジェクトに着手してからもう10年も経っている。モデルとなった実話通りの時間経過が選ばれるのであれば、“残り”はあと3年ということだ。これまで劇中では10年という年月の経過を生徒たちの淡々とした代替わりや、田所(八嶋智人)が経営する店の商品の変化や浜中食堂の夫婦仲の悪化で表してきたわけだが、今回はそこに生徒たちの“空気感”がまざまざと加わってくる。

 青春時代というある種のモラトリアムを謳歌しきれていない雰囲気というべきか、意味が明確に見えなければ着手できないような経済的な姿勢とでもいうべきか。もちろんそれは、これまでの水産高校から進学校というエッセンスが介入してきたことも理由の一つとして挙げられるのかもしれないのだが。それでも2005年のように「やってみなきゃわからない」の言葉に心が動き、“夢”が見えた途端に表情が変わる高校生は明らかに少なくなっている。それは2015年からさらに10年以上経った現代では尚更かもしれない。そんな“夢のない世界”の空気感を、このドラマは的確に捉えようとしているようだ。

 しかしそのなかで“2005年の高校生”の魂をしっかりと継承しているのが瑠夏である。まっさきに宇宙サバ缶プロジェクトを再開させた彼女は、海洋科学科から普通科への編入をぼんやりと考えている竹田(木村舷碁)から「宇宙に飛ばしたからって何の意味があるん?」と問いかけられると、「役に立つか立たんかで見るもんじゃないやろ、夢は」と答える。ここで出てくる“役に立つ”というフレーズからは、第1話で描かれた菅原たちのクラゲのプロジェクトを思い出さずにはいられない。

 役に立たない邪魔者の大型クラゲに誰からも期待されない自分たちを重ね合わせ、そのクラゲを活用する研究発表に勤しんだ菅原。それが後々、宇宙サバ缶のプロジェクトへと繋がったのである。その時に菅原を動かしたのは、他でもない朝野の「やってみなきゃわからない」の言葉だった。今回、教師として戻ってきた菅原が、朝野の微妙な態度に苛立ちを覚え、黒瀬(荒川良々)を通してその真意を知るという一連があった。

 研究発表の際に生徒たちの伝えたかった思いを書き換えたことの後悔から、生徒の自主性を重視するようになった朝野。案の定、彼は生徒たちの輪に入って率先して動く菅原の様子に当時の自分を思い出していたわけで、当の菅原も朝野の考えを知って、自分がもう教師の立場にいるのだと痛感する。この10年前と大きく違っているのは、周りを鼓舞する力を持つのが教師である朝野ではなく、生徒である瑠夏ということだろう。そう考えると、瑠夏は単なる継承の先にいるキャラクターではなく、この10年間の集大成ともいえる非常に大きな存在といえるのかもしれない。

■放送情報
『サバ缶、宇宙へ行く』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:北村匠海、出口夏希、黒崎煌代、八嶋智人、三宅弘城、村川絵梨、佐戸井けん太、熊切あさ美、吉本実由、ソニン、迫田孝也、鈴木浩介、荒川良々、神木隆之介、井上芳雄(語り)ほか
原案:『さばの缶づめ、宇宙へいく』(小坂康之、林公代/イースト・プレス)
脚本:徳永友一
音楽:眞鍋昭大
主題歌:Vaundy「イデアが溢れて眠れない」(SDR/Sony Music Entertainment)
演出:鈴木雅之、西岡和宏、髙橋洋人
プロデュース:石井浩二
プロデューサー:野田悠介、中沢晋
制作協力:オフィスクレッシェンド
制作著作:フジテレビジョン
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