興収で読む北米映画トレンド

『マンダロリアン・アンド・グローグー』北米1位 『スター・ウォーズ』7年ぶり新作の光と影

 ハリウッドの“夏”が、いよいよ本格的に始まった。5月最終週の祝日、メモリアルデーはサマーシーズンの本番開幕を告げる重要ポイント。なんと、夏の4カ月は北米年間興行収入の約4割を占めるというのだ。

 5月22日~24日の週末ランキングを制したのは、『スター・ウォーズ』7年ぶりの新作映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』。週末3日間の興行収入は8196万ドル、メモリアルデー(5月25日)を含む4日間では1億200万ドル(推定)を記録した。

 海外市場では6300万ドルを稼ぎ出し、4日間の全世界オープニング興行収入は1億6500万ドル。同時公開を迎えた日本でも、週末3日間で興行収入7億円超えのNo.1スタートとなっているから、コロナ禍以降のハリウッド映画としては上々の滑り出しだ。

『マンダロリアン・アンド・グローグー』©2026 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.

 本作のヒットを受けて、北米市場全体の4日間の興行収入は2億2100万ドルに到達。『リロ&スティッチ』実写版と『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が重なった前年には及ばないが、2019年と同じ水準となっている。

 ただし『スター・ウォーズ』全体で鑑みると、数字の評価はやや難しくなる。8年前の同じくメモリアルデーに公開された『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年)は、北米にて週末3日間で8420万ドル、4日間で1億301万ドルだったから、本作はそれに及ばず、『スター・ウォーズ』史上最低水準となったのだ。

 それでも『マンダロリアン・アンド・グローグー』を単純にシリーズの過去作品と比較できないのは、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)から始まった続3部作+スピンオフ計画まっただなかの2018年当時と、長編映画が7年ぶりとなる今回では、シリーズを取りまく状況がまったく異なるからだ。『スター・ウォーズ』の名前が持つインパクトも、話題性も、映画館に足を運ぶ世代も大きく変わった。

 もうひとつの違いは映画の規模で、『ハン・ソロ』は製作費3億ドル規模の――撮影の後半に監督が急遽交代するトラブルがあったためだが――超大作だったのに対し、ドラマシリーズ『マンダロリアン』を基盤とする本作は製作費1億6500万ドル。コスト回収の観点でも目指すべき数字は大きく異なる。

 そもそも本作は、『スター・ウォーズ』の“本線”であるスカイウォーカー・サーガでも、新たなスピンオフでもなく、『マンダロリアン』を出発点に『スター・ウォーズ』映画を刷新するような軽やかな冒険活劇。ここからシリーズの歴史を紡ぎ直そうという意欲作でもある。

 Rotten Tomatoesでは批評家スコアこそ62%と渋めだが、観客スコアは89%と高評価。映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A-」を獲得し、別の調査によるとファミリー&キッズ層からの反応が大きいという。

 一方で初週末の観客は男性63%、25歳以上が75%、また観客の68%がディズニープラスの加入者だったというから、既存のファン層が初動を支えたことは事実。IMAXを含むプレミアムラージフォーマット上映の需要も大きく、映画ファンが足を運んだ印象もある。今後、どこまでファミリー映画として広げられるかが興行全体の焦点となりそうだ。

『マンダロリアン・アンド・グローグー』©2026 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.

 なお“ベビー・ヨーダ”ことグローグーは、『マンダロリアン』以降、すでに関連玩具を1300万個販売したといわれる大人気キャラクター。本作は各地のディズニーテーマパークとも連携しており、日本では東京ディズニーランドにて「スター・ツアーズ:ザ・アドベンチャーズ・コンティニュー」の特別バージョンが実施されている。映画以外のビジネスにおける効果も大きく、劇場興行だけでは測りきれない作品だ。

 『スター・ウォーズ』の次回作は、来年(2027年)の同じくメモリアルデーに公開される、ライアン・ゴズリング主演の新作映画『Star Wars: Starfighter(原題)』。完全に新しいキャラクターで展開するという同作を前に、ディズニーは『マンダロリアン・アンド・グローグー』でフランチャイズの実験を試みているともいえそうだ。

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