上杉柊平の存在感は“朝ドラ”でどう映る? 『風、薫る』槇村宗一役でさらなる注目へ

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』では、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)ら看護婦見習いたちが、帝都医科大学附属病院での実習に臨んでいる。教室で知識を学ぶ段階から、目の前の患者に向き合う段階へ。りんたちは、看護婦という仕事が知識や技術だけでは成り立たないことを、日々の実習の中で実感していく。一方で、シマケン(佐野晶哉)と、その親友・槇村太一(林裕太)の存在感も増してきた。槇村は、小説の執筆に悩むシマケンをそばで支え、りんたちとも関わりを深めていく人物だ。そんな槇村の兄として新たに登場するのが、上杉柊平演じる槇村宗一である。

 宗一は、東京府に勤める役人として登場する。弟の槇村が自由で、人との距離をすっと縮めていく人物だとすれば、宗一は規律や立場を大切にする“お堅い”兄として描かれそうだ。性格の違う兄弟が並ぶことで、槇村の新たな一面も見えてくるだろう。第8週のあらすじでは、瑞穂屋に槇村、宗一、シマケン、そして安(早坂美海)が現れることも明かされている。これまでりんたちの看護の物語を中心に進んできた『風、薫る』に、槇村家や一ノ瀬家の人間関係がどう絡んでいくのか。宗一の登場は、物語のつながりを広げるきっかけになりそうだ。

 上杉は2015年のドラマ『ホテルコンシェルジュ』(TBS系)で俳優デビューし、翌2016年にはNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』にも出演した。その後も『HiGH&LOW〜THE STORY OF S.W.O.R.D.〜 Season2』(日本テレビ系)、『砂の塔〜知りすぎた隣人』(TBS系)、『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日系)など、話題作への出演を重ねてきた。映画でも『一週間フレンズ。』や『リバーズ・エッジ』などで印象を残し、青春ものから癖のある人物まで、作品ごとに異なる顔を見せている。早い段階から、ただ端正なだけではない、どこか陰影をまとった存在感を放っていた俳優でもある。

 近年の上杉の魅力を強く示した作品のひとつが、『ワンルームエンジェル』(MBSほか)だ。人生に投げやりになっている幸紀を演じた上杉は、荒っぽさやぶっきらぼうな態度の奥にある寂しさを、説明的なセリフに頼らず表現していた。人を遠ざけているようで、どこかでつながりを求めている。自分の感情をうまく扱えない男の不器用さが、視線の動きや沈黙の中から伝わってきた。一方、Netflixシリーズ『幽☆遊☆白書』で演じた桑原和真は、熱血で、直情的で、仲間思いのキャラクター。原作でも人気の高い人物を、勢いだけでなく人間味を伴って演じていた。

 2024年には『となりのナースエイド』(日本テレビ系)、『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)、2025年には『プライベートバンカー』(テレビ朝日系)などにも出演。作品の規模やジャンルを問わず、物語の中に確かな温度を加えてきた。さらに、2025年公開の映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』では梅宮一役を務め、懐の深さと強さを併せ持つ人物を演じている。頼れる大人、孤独を抱えた男、熱を秘めた青年。上杉はそのどれもを、力みすぎない芝居で成立させてきた。だからこそ、登場シーンが多くなくても印象に残るのではないかと筆者は感じている。役の感情が押しつけがましくならず、観終わったあとにじわりと残るのが、上杉の芝居の魅力だ。

 だからこそ、『風、薫る』の宗一にも期待が高まる。東京府の役人という肩書きからは、明治という時代の制度や秩序を背負った人物像が浮かぶ。りんや直美たちが、新しい時代の中で自分の足で立とうとしている一方で、宗一は社会の決まりや家の在り方を大切にする人物として描かれるのかもしれない。もしそうであれば、彼の言葉や態度は、ときに周囲とぶつかるものにもなるだろう。

 そして、安との出会いが、宗一にどんな変化をもたらすのか。自由で人懐っこい槇村と、“お堅い”兄である宗一の関係が描かれることで、これまで見えていた槇村の印象にも新たな奥行きが加わっていくだろう。家族の前で見せる顔、役人としての立場から見せる顔、そして安と向き合う中でふとこぼれる素の表情。宗一という人物は、登場とともに『風、薫る』の人間関係をさらに広げていく存在になりそうだ。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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