『月夜行路』ついにカズト登場? 麻生久美子の「見えているものが全てじゃない」が刺さる
日本テレビ水曜ドラマ『月夜行路 -答えは名作の中に-』第3話は、涼子(麻生久美子)の初恋探しが思うように進まないもどかしさと、通天閣の麓で起きた殺人事件の後味の悪さが重なり合う回だった。ここまでの『月夜行路』は、文学を手がかりに謎をほどきながら、涼子が置き去りにしてきた感情にも少しずつ触れていくドラマとして進んできた。だが今回は、その流れの先で“見えているものが全てではない”という、この作品の核心に近い感触がいっそう強く浮かび上がっていたような気がする。
涼子が探している学生時代の恋人・カズト(作間龍斗)に関する手掛かりは、「大阪在住」「親の事業を継承」「名字は佐藤」というあまりにも少ない情報だけ。ルナ(波瑠)の助言を受け、過去の電話帳を頼りに大阪中の“佐藤さん”を訪ねていくという作戦に出るものの、そう簡単に見つかるはずもない。むしろ印象に残るのは、その無謀さそのものだ。会える保証もない相手を探し続けるという行為は、いまの涼子にとって、過去の恋を追うこと以上に、自分が諦めきれなかった時間を確かめる作業になっているのだろう。
そんな2人が訪れたのが、通天閣の近くにある「ジュエリーサトウ」だった。店を切り盛りしているのは、彫金師の辰雄(山口馬木也)と、跡継ぎの信一(岩瀬洋志)。息の合った2人のやり取りからは、長く一緒に店を支えてきたことが伝わってくる。ルナが、通天閣が舞台の江戸川乱歩作品を踏まえて、“黒トカゲ”をモチーフにしたブローチを注文する流れも印象的だった。文学の引用がただの小ネタではなく、その場の雰囲気を自然につくっているところに、このドラマの醍醐味だ。
カズトについて聞いても、辰雄も信一も知らず、月に一度店に来るという社長にも手掛かりはなかった。しかも店の経営は厳しく、社長は廃業まで考えている状況だ。だからこそ、その夜、店に戻ったルナたちが血を流して倒れている社長を見つける場面は衝撃的だった。金庫からは現金とグリーンダイヤのネックレスがなくなり、さらに辰雄のバッグからは盗まれたはずの300万円が見つかる。しかも辰雄には強盗の前科があるというのだ。これだけ条件がそろえば、真っ先に疑いが向くのも無理はない。
今回もルナの推理は鮮やかだった。関係者それぞれのアリバイを整理していくことで、見えにくかったつながりが少しずつ明らかになっていく。その結果、主犯は佐藤社長の妻・眞規子(東風万智子)、実行犯は集金に来ていた竹野(長谷川純)だと判明。借金を抱えた眞規子は、夫にかけていた生命保険をあてにして犯行に及んでいた。文学を題材にしたドラマではあるが、今回描かれていた動機はきわめて生々しい。追い詰められた事情や欲望が、人を簡単に引き返せない場所まで連れていってしまう。その現実味も、この回の重さにつながっていた。
ただ、今回が印象的だったのは、事件が解決して終わりではなかったことだ。万年筆が見つかったという連絡を受けて再び店を訪れたことで、辰雄もまた眞規子の計画を知っていたことが明らかになる。すべてがうまくいけば店の廃業は避けられ、店も土地も法定相続人である信一のもとに残る。辰雄はその結末を見越して、あえて口をつぐんでいたのだ。信一を思う気持ちは本物だったのだろう。けれど、そのために犯行を止めなかった以上、辰雄もまた完全に無関係ではいられない。善意だけでは片づけられない苦さが、この第3話の後味をより重いものにしていた。
涼子の「見えているものが全てじゃない。誰にだって人には見せない別の顔がある」という言葉も印象的だった。今回の事件を通して感じたことをそのまま言葉にしたものだが、同時に、それはこれから会おうとしているカズトにも重なって聞こえる。終盤には、カズトと思しき人物がルナを見つめる場面もあった。ようやく再会が近づいている気配はある。けれど、その相手が涼子の記憶の中にいるカズトと同じとは限らない。そんな含みを残す終わり方だった。次に涼子がたどり着く“答え”もまた、思っていたよりずっと複雑なものになりそうだ。
■放送情報
『月夜行路 ―答えは名作の中に―』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:波瑠、麻生久美子、作間龍斗、久本雅美、栁俊太郎、渋川清彦ほか
原作:秋吉理香子『月夜行路』(講談社文庫)
脚本:清水友佳子
音楽:Face2fAKE
演出:丸谷俊平、明石広人
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:水嶋陽、小田玲奈、松山雅則
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
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