韓ドラ『愛の光』は珠玉のラブストーリーに 小津安二郎『東京物語』と重なる“間”の演出

 『愛の光』は、内省的で説明をなるべく排した「間」と「空間」を大事にした作品である。特に序盤の静謐な田舎の自然と奥行きのある広大な空間を生かした映像の数々が印象深く、月夜に自転車を走らせる2人の姿が湖の水面に反射する計算され尽くした芸術的なロングショットには、ため息が漏れる。詩的で美しいショットの数々はソウルや江陵でも見られるが、上質でロマンティックなラヴストーリーには、こういう映像の積み重ねが必須だということを改めて教えてくれる。やや前方を歩くテソの背中を見ているウナのPOV(主観)映像も、2人の距離感、切実な思いをリアルに伝えてくれる。一つのショットが雄弁に語りかける、というシーンが多いのがこの作品の特徴であり魅力の一つだ。そういえば、夏休みにウナが高校で窓の外を見ながら「今日も暑くなりそう」とつぶやくシーンがあるが、これは小津安二郎監督作『東京物語』(1953年)へのオマージュだろう。言うまでもなく『東京物語』も「間」の映画である。

 作品を通してテソとウナは何度も繰り返し、すれ違う。物理的に近い距離にいながらも、障壁が2人をさえぎる。それは電車だったり、第三者の存在だったり、お互いの躊躇や戸惑いといった心情だったりする。だが、空港に向かうラストで2人はすぐそばにいながらも、あえて少し距離を保つ。もう話すことがないからではない。相手を引き止めたいから、引き止められたいからではない。大事なことはもう話し合い、結論は下されたからだ。テソはウナの決断を尊重し、ウナも自分の決断に揺るぎはない。同時に、2人は言葉を交わさずともお互いのことを考えながら、会話をしているのだ。ロマンティックでありつつ、ここに30歳の大人になった2人の成長が見られる。

 仁川(インチョン)国際空港に到着し、いよいよ別れの瞬間が訪れる。テソはウナに「愛してる、モ・ウナ」と告げ、2人は強く抱き合う。しかしその姿は、破局した2人のそれには見えない。1年後、テソのスマートフォンにハワイのウナから写真が届く。2人で過ごした思い出の場所とハワイで元気そうに笑うウナの写真が。テソは誰も住んでいないウナの実家を訪れ、室内の電球を交換し、部屋は光で満ち溢れる。そして、テソのお手製と思われる「モ・ウナ」の表札を玄関に掲げる。これは、近い将来、彼女が帰ってくることを示唆しているのだろう。ヨヌ里村に。ヨン・テソのもとに。2人はずっと探していた愛の光を、ついに手に入れたのだ。ダイレクトな描写ではないが、2人の男女の心の揺らぎと切ない想いを繊細に描いたこの作品に相応しい、ハッピーエンドである。

■配信情報
『愛の光』
Netflixにて配信中
出演:ジニョン、キム・ミンジェ
写真はJTBC公式サイトより

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